大人の忘れ物

まる

第1話 おもろく考えたら幸せ

痒い、とにかく痒い。

ガリガリガリガリ掻いてしまう。掻きむしると血がでて、それを超えるとアザのようなシミになる。

辛い、とにかく辛い。

皮膚科に行けばいつも通りの治療と薬がだされ、即効性なく、ドラッグストアに行けば口コミで良さげな商品に手を出すも変化なし。


良くならない痒みに、心がうんざりしてきて、脳は現実逃避に走り出した。

もう考えたくもないと思った途端、荒れ切った肌を見るのをやめた。

治らないのに、やるだけ無駄なのだ。

頑張る自分を投げ出し、自由になった。

痒くて結構、どうぞどうぞ。

赤くて結構、どうぞどうぞ。

別にグラビアアイドルじゃあるまい、ただれた皮膚が何だってんだ。

皮膚以外は、みんな元気に活動して生きてるじゃないか。しかも、皮膚だって好きで気持ち悪い姿になったわけじゃない。

そう思うと、治る、治らないの泥試合を止める決心がついた。


「あ〜すっきり、アホくさ」

以来、皮膚の痒みが止まった。

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