第十話 『治安維持のための冒険者雇用!?』 その77


 式典が終わり、オレたちはその後片づけに駆り出される。「男爵閣下なのにねえ。メイド傭兵たちに任せておけばいいじゃないの」。嫌だね。汗をかくのが好きなんだ。それに、「ああ。いっしょに行動をしながら、仲良くなっておきたいんだ」。


 そうだ。


 ミケとニケは、警察にも元・冒険者たちが参加するための警備会社や……傭兵会社のアドバイザーでもある。『ヘカトンケイル』との連携を、しっかりと築きたいし、それに。「うん。警官たちとも、働いておきたいのね。つまんない作業でも」。


「ギルド長、オレたちに任せてくれていても、いいんですぜ」


「そうだよ。アンタ、貴族なんだろ?」


「貴族だろうが、何だろうが。オレがお前らと一緒に働いておきたいんだ。手伝わせてくれよ」


「ハハハ! ああ、ほんと。アンタは物好きだなあ」


「面倒見がいいっていうか、間抜けていると思うぜ」


「偉いヤツは、もっとふんぞり返っておけってか?」


「そうだよ」


「そういうのが、偉いヤツの仕事じゃないのか」


「違うね。偉いヤツは、偉大な行いをするための努力を惜しまないヤツのことを言うんだ。オレは、より良い仕事をするためにも、お前たちと一緒に行動して、理解しておきたい。強くなっておきたいんだ。ギルド長としての強さは、おそらく、人ってものに対しての詳しさだろ」


「わかんねえよ」


「ムズカシイのは、法律の勉強だけで、手一杯じゃあるんだ」


「学習塾を開きたくなるぜ」


「ギルド長が教えてくれるのか?」


「バカを言え。お前たちよりアホなオレが、お前たちに何を学ばせられるって言うんだよ!?」


「いやいや、けっこうありそうだがなあ」


「ギルド長からは、何だか学びたくなるものがあるよーな気がする」


「……あれか? 貴族の令嬢と愛し合うための方法とか……」


「それは!!」


「知りたい!!」


「……ふう。まあ、顔だよ」


「いや。態度とか内面だろ」


「そうに違いないぜ」


 カチンときちゃうよ。「キャハハハハハハハハハハハ!!」。こら、指をさして笑うんじゃありません。空中を飛び回るんじゃない。「ウケる!! この不細工メンどもに、か、顔で令嬢を落とせない男だって……キャハハハハハハハハハハハ!!」。笑い過ぎ。「はあ、はあ。私がそこらの人間のオンナだったら、過呼吸で気絶しているトコロよ」。


 そんなに笑うなっての……。


「なんだよ、ふてくされているのか」


「いい意味だよ、いい意味なんだぜ、ギルド長。中身がスゲーってコトだよ」


「うるさい。さっさと椅子を片付けるぞー」


「ほめているんだけどな」


「ガチで感謝しているんだぜ。アンタは、冒険者のために、すげー努力をしているよ」


「仲間のためには戦うもんだ。全力以上が出せる。当然だろ」


 椅子を担いで、倉庫に向かう。地味な仕事じゃあるけれど。「それがレオらしいのかもね。クレアの親御さんも、ニコニコしながらこっちを見ているわ」。ほんとうだ、手を振っておこうかな。いや、大貴族に対して、失礼かもしれない。「そういうの気にしないでしょう。姉の信徒は、汗水たらして働く者を好むのよ」。


 なにそれ、めちゃカンジいい。「偽善者くさいけれどね」。それに引き換え、混沌神のルメは……「混沌神なのよ? 秩序を乱すような力を発揮しないと、世界がダメになっちゃうのよ」。魔神の方々の使命は、とてつもなく大きくてフクザツすぎるせいか、理解しにくいものがある。「そういうものなのよ」。


「ダーリン、私も手伝おう」


「ドレスが汚れるから、オレがやるよ」


「う、うむ。それでいいのだろうか……」


「いいさ。そこで応援しておいてくれるだけで、十分だよ」


「ダーリン……うむ。そうしよう。がんばれ、ダーリン。コーヒーや差し入れの手配は、ちゃんとするからな」


「みんなのぶんも」


「もちろんだ!」


 いい子だ。オレにはもったいないかもしれないけれど、離れられないな。


「はあ。やっぱり内面なんだと思うぜ」


「うんうん。ギルド長は、内面がいい」


「うるさい。内面ばかりほめずに、顔面もほめたまえ」


「お、おー。普通に、そこそこいいとは思うぜ」


「中の上とか、それ以上ってカンジだよ」


「じゃあ、イケメンじゃないか」


「……ああ」


「……そうかも」


 ちくしょうめ。「キャハハハハハハハハハハハ!!」。逆さまになりながら指をさすのはやめたまえ。「自意識が過剰なのよね。大した顔面じゃなくてもいいじゃない。肝心なのは、支配力と戦闘能力よ」。混沌神の契約者としてはそうかもしれないが……。


 オレにも、そこそこ自尊心というものがある。美形とまでは言わん。「レオで美形なら、美形の方々で街があふれてしまうわ」。


 くそ。いいさ。二度とイケメンなどと口走ってなるものか。「かわいいレオ。それでいいのよ。普通にそこそこ愛せる顔だし。心は、混沌神から見たらとっても魅力的だもの。たくさんの人々を巻き込む。渦のような気配を持っているのだから」。


 いい意味でなら、巻き込みたい。巻き込みまくって、平和なルクレート王国を作り上げたいもんだ。ないなら、作る。奪われそうなら、奪い返す。「勝負が必要なら?」。平和のために、勝つよ。力を否定するほど、オレも魔王戦争時代を忘れられないから。「それでいい。実に混沌神の契約者として、模範的です」。



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