こちら王立冒険者【再就職】支援ギルド!!~無能冒険者さんいらっしゃいませ!中堅冒険者のオレが究極ダメ冒険者といっしょに社会復帰をサポートします!?~
第十話 『治安維持のための冒険者雇用!?』 その8
第十話 『治安維持のための冒険者雇用!?』 その8
「大きく出たでござるな、レオンハルト・ブレイディ。お前は外交のシロウトだろうに」
「じゃあ。質問だ。専門家たちにね」
「いいでござる。オズワルドが、何でも答える。オズワルドが」
「な、なんだかオズワルドさんに頼り過ぎじゃないか?」
「上官なのだから、当然でござるよ」
「ハハハ。ちょっと、微笑ましい」
「何がでござる?」
「ラキアが誰かを頼っている。素直な君を見るのは、嬉しいよ」
甘えられるほどの信頼関係を、ちょっとはラキアも築けていたんだな。研ぎ過ぎてすり減っちまった刃みたいに、壊れやすさも感じさせてしまう子だから、そういう態度を微笑ましく思える。「貌神リコドは人間関係も壊してしまうものね。あの子にとって、この種の絆は貴重なハズよ」。
オレがどれだけ嬉しいのか、ラキアにはきっと伝わっていないと思う。むしろ、「ちょっとバカにされたと思って、怒らせてしまっているかもね」。困ったもんだ。
「で。どういったご質問でしょうかな」
「シロウトだからね。どうすれば、『人が人と戦えるのか』という質問をしたい」
「ふむ。敵だから、という点だけでは納得がいかないのですか?」
「モンスターや魔族と全力で殺し合うのは、べつに抵抗がないんだ。でもさ、人同士でそれをやるのは、あまり楽しく思えない。ケンカや腕試し、決闘ぐらいなら、笑えるぜ。むしろ、オレだって好きだが……殺意を持つのは、難しい」
「平和ボケでござる」
「そうかな? 魔族なら、喜んで首を落としたりしていたから。残酷じゃないとは言えない。お袋あたり、そんなオレを見たらさ、自分の子供でも気持ち悪いとか、怖いと思うだろう。名誉だとも考えてくれるだろうが、率直な感情では……怖がる」
そんな残酷さも持っているハズのオレが……。
「人を殺したくないという本能的なブレーキがあるんだよね。それを、どうやったらオフにして、人殺しをさせられるんだろうか?」
「逆算したいといわけですな」
「そうだ。戦争を許容しちまう心理を知ればさ、その逆がやれそうじゃん。戦争をさせないために、戦争をさせるための方法を知っておきたいのさ」
「面白い質問です」
「貴族たちは、そういう質問をアンタにしなかったのかい?」
「貴族の方々は戦争に対して、どこか競技性を持たれているので」
「ああ。ちょっと、わかるよ。自分の優秀さを、見せつけたい、と」
「戦争の研究の仕方によって、多くの答えが出るでしょうが……あくまで、私の意見を述べましょう」
「頼む。学びたいんだよ」
「戦争の目的は、基本的にふたつ。権力か、金でございます」
「うん。そうだと思う」
「しかし、それらは支配者のものです。戦争を起こしたとしても、豊かになるのは王侯貴族や大商人だけでしょう。民草は、疲弊してしまう。畑を奪われ、焼かれ、兵隊として消費されてしまうので」
「それでも、歴史は戦争でいっぱいだし、民衆も戦争に参加してきた。たくさんの戦争をやったのに、魔王戦争時代ほどは死んじゃいないよな。もしも、そうだったら、人類は滅びていると思う。それは、モンスターを相手にするより、人を相手にするほうが、殺意が弱いからだと思うんだ」
「……正しいでしょうな」
「うん。魔王軍相手の破壊力で、人相手に殺し合いしていたら……きっと、滅びてる。オレとシデンだけでも、王城を落とせそうだったんだから」
「お前らがテロリストや暗殺者としての才能が高かったからでござる」
「それは、そうかもだが。オレやシデンだけが、その種の才能があるわけじゃない」
「認めましょう。人相手に対して、殺意を振るえる者は、かなり稀有だと」
「どれぐらいのもんだ?」
「兵隊を企画したとき、積極的に敵対者を殺せる者は、多くて2%。弓兵の過半数は、人を撃てない。わざと外しておりますな、少なくない数が」
「まあ、そうだと思う。オレだって、たぶん、わざと外すもん」
そりゃそうだろ?
人殺しをしなさいなんて、言い聞かされて育っているわけじゃない。その逆だ。やっちゃいけないコトの最上位じゃないか。「それでも、人は人を殺せるのよね。魔法があるでしょう。私は知っているけれど、教えてあげられないわ。魔神と人の感覚は、根源的には違っているもの」。
「そのために、理論武装が必要となるのです」
「心構えを、あたえるってわけだ。どんなコトを、してきたんだい?」
「国境を明確にした。そうすれば、隣り合った村でさえ……国境という目にも見えない区切りでさえ、お互いをしっかりと攻撃し合えたました。私の故郷が、そうでしたな。王国の騎士がやってきて、となり村は『敵』だと教えられる。それまでは、交流があったのですよ。お互いに作物の収穫時には、物々交換があったのに。名前も顔も、どんな性格なのかも、先祖代々、お互いが知っていたのですが。途切れた。どんどん敵だと思い込めるようになり、戦が起きた際には、容赦なく……戦えました。お互いの畑も、家も、人も、焼き尽くせた」
「辛い記憶だな」
「……学びのためなら、話す価値はある」
「境界線で区切れば、人は攻撃し合える。国境が、戦うための理屈になるのか」
「『自分たちと違う』と教え込めば、現実的なつながりも交流も、忘れてしまえるのです」
「邪悪な行いだ」
「ええ。ですが、国家を守るためには、その残酷さもいるかもしれない。どうせ、敵も同じ行いをするのですから。私たちは、同じ生き物だ」
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