第九話 『傭兵ブーム到来!?』 その73
「大観衆が集まってくれたねえ! 我が下僕メディア、ルクレート・トリビューン紙の記者たちもいるよ!! 保守系記事で大人気の、ゾフィー・メイヤーだ!!」
「どーも! 時代は保守! 嘘でなんでも書いちゃう元気溌剌なゾフィー・メイヤーでーす!!」
「うわ。う、ウザ記者だ……っ」
「妹ちゃんに、有能認定されちゃってる! テヘペロしとこう!」
「ウザいっすね。ほんとうに……これから、レオさんとロッドさんは、超獣と命がけのバトルするんすよ? 空気、読んで欲しいっす」
命がけのバトルをする気だったわけじゃないんだけどね。
「空気を読んでるからこその、保守! アタマが悪くて、ノリがいい! そしてガンコで不勉強! そんな脳みそガチガチなのに騙されやすいピュアな保守層のために、私は風見鶏のようにくるくる回る器用さでーす!」
「まことにそうだよ! 彼女は、ときどき。『とんでもない嘘つき女』とまで言われるが、まあ、許容範囲だね! 保守の記者って、バカさが売りなんだから!」
「ですでーす!」
ああ。
本当は、もっとマジメな新聞記者のハズなのに。「もう演技じゃないんじゃないの?」。そうかもしれない。保守の悪口言いまくりだし……保守って、そもそも何だっけ?
「レオンハルト・ブレイディ男爵閣下さま! 反乱分子へのわからせ討伐、おつかれさまです!」
「わからせ討伐とか言うな。なんか気持ち悪い!」
「すでに記事は書いていますよ。そちらの口が軽い小説家くんが、色々とボロボロと教えてくれていますので!」
「ロンドリ、何を言ったんだ!?」
「な、何も。れ、レオンさんの不利になるようなコトは、き、きっと……っ」
つまり、シデンといっしょに行動していたコトは言ってないわけか。一応は、指名手配経験者だからな……「そこらへん、あの子はわかってるでしょう。小説家って、クズだけど知性はあるのよ。クズだけど」。念押ししてやらなくても、わかってるよ。
「シデンちゃーんと、いっしょだったコトとーか?」
「だから、それを言うなよ!? 新聞記者とか、大勢の前でええ!?」
ウザ記者は……。
耳をふさいでいた。自分の両手でね!
「ふう。何も聞こえませんでしたから、記事にするネタはありませんね! これぞ、保守キャンセラー技術です! 不都合な事実なんて、聞かなきゃいいってだけでーす!」
「ジャーナリストとして、サイテーの行為なんじゃないかしら?」
「不正を感じるぞ」
「はいはい。お堅い女子たちだ。しかし、その堅さがいいよね。女医と女騎士、保守ウケバツグンだ!!」
「貴方は保守じゃないわよね」
「まさか? 私はいつでも保守の味方だし、急進勢力とだって友人だよ。つまり、ビジネスマンだ!」
よくわからないのに、なんだかしっくりする発言だったぜ。「あれは魔族とだって商売しているでしょうからね」。それはあるかもしれないけれど、事実だったら人類の裏切り者だぜ。「保守キャンセラーを使って、聞かなかったコトにしとけば平和よ」。
人類の敵への追及を放棄するつもりじゃないが……。
今は、エルミーに集中したかった。「ウザ記者投入でも、あの子、レオとロッドを見つめているものね。殺す気まんまん。若いわよねえ」。
「では、あらためて。インタビュー!」
「お、オレか!?」
「イエース。たまには、ロッド・バーンさんにもスポットライトを当てないと。因縁のある、お相手ですよね」
「……ケネスのケガは、ケネス自身の責任だ」
「あーし、あやまらないでいいんだよねえ」
「うっわ。あおられてますよ!?」
「……試合で、見せつけるだけだ。こっちも、日々、鍛錬はしている」
「熱いっ。保守の鼓動を感じますね!」
「意味がわからん……」
「男爵閣下は、余裕ですか?」
「余裕はない。以上だ。そろそろ、下がってろ」
「はーい。負けてもいいけど。無様なすがたはさらさないでね! 保守のファンが泣いちゃいますからね! 女にわからせ負けしちゃう男子は……個人的にはゾクゾクしちゃうけど。保守ウケ悪いんですから!」
「売り上げに関わるね。負けるな、男子!」
「レオちーを応援するんだー、クロウ・ネーモちゃーん」
「あはは。まあ、どちらもだよ。私は、プロデューサー。盛り上げるだけ盛り上げて、安全な高みから見物するポジションさ!」
「ウザ記者も、似たよーなもんでーす!」
武舞台から降りたルクレート・トリビューンの人々は、仲良く並んでベンチに座りやがる。
「あいかわらず。ウザい子だぜ」
「……だが、気が抜けて良かった」
「まあ、そうかもな」
「エルミー・ブラネットの動きに、呑まれつつあったからな」
戦闘はコミュニケーションだからね。勢いを奪われたまま、戦うよりは、今のほうが楽だ。間抜けさで中和された今のほうが……「格下の発想ね」。
うむ。
認めたくはないが、ちょっと策を使ったほうがいい。戦士職式、合図を送る。指を鳴らした。「あっちにも、ばれちゃうわね」。しょうがない。「来るわよ、超獣が」。
「じゃあ。はーじめーるねー!!」
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