第九話 『傭兵ブーム到来!?』 その55/大きな声で一騎討ちを挑もう!!


「……陽動かっ!!」


 気づかれちまったが、むしろ好都合。「こっちがどんな作戦なのかを、しっかりと伝えると勝てそうだもの。あの連中は、戦争屋。本職の戦いのプロ」。そういう連中は、不利になったら戦いをしないものだ。


「包囲しろおおおおおおお!!」


 ロッドは素晴らしい戦士職の冒険者だ。ガタイも大きければ、声だって大きい。


 目立つ。


 おかげで、こちらの作戦を相手に伝えるには適していた。「作戦を隠したいときには、あまり向かないけれどね」。そのときは、黙っているからいいのさ。「おしゃべりじゃない男のほうが、魅力的に見えるものよ」。オレは、しゃべり過ぎかもな!


「包囲されてしまっているぞ!?」


「そうだ! どうする!? 膠着状態になれば、お前らが不利だぞ!!」


 周囲を囲まれたあげくに、内部にも敵がいる。


 こんな状況になれば、全滅は必至だった。


 レフト・ウィルソンのボードゲームだったら、『詰み』の状態じゃないだろうか。ゲームと違って、やり直しは気軽にはできないけれどな。


「降参すれば、殺さん!! オレは、寛大な処置を取る赤毛野郎として、有名になろうとしている最中だ!! 甘ったるいほどに、やさしい男だ!!」


「自分で、やさしいなどと言う男を信じるんじゃないぞ!!」


「戦え!! 傭兵ならば、選ぶのは力だ!!」


「仕事を奪われたんだぞ、こんな雑魚どもに!! 騎士も、王国も、オレたちは止められん!!」


 演説というものは、人の心を惑わしてしまうものだ。正しくなくてもいい。鼓舞する力が足りていれば、間違った言葉でも、人はいくらでも動いてしまうものだからね。


「戦え!! 武器を取れ!! 火薬を奪い取れれば、こんな数、克服できるだろうが!!」


 ああ。


 見つけた。


 ターゲットにするべき男を。傭兵のなかで、ひと際、声が大きいヤツだ。リーダーシップを発揮して、この状況でも戦いを継続させようとしている。「ぶっつぶしてやりなさい。どちらが、強いのかを知らしめるの。治安って、そうやって守るのよ」。


 ほんとうに。


 発見の多いクエストになる。


「アオ!!」


『はい、ぜんりょくで、つっこみます!!』


 くじきつつあった敵の士気が、わざわざ回復するまで待ってやる。そんな愚策を選ぶ理由もないからな。


 アオに、強烈な加速をさせたよ。槍衾を展開していようとも、正直、関係なかった。なぜならば、オレの背中には、すぐれた魔法使いがいるのだから。


「『雷』の鉄槌を、喰らうがいい!!」


 槍を構えた傭兵たち。アオによる強烈な突撃を恐れて、力強い構えをしていた彼らに、紫電の雷撃が襲いかかっていた!


「ぐえええ!?」


「なん、だ、これはあああ!?」


 驚くべきだったよ。


 だって、シデン・ボニャスキーは、異常なまでの短時間で。ほとんど瞬間的に、高度な攻撃魔法をメイクした。オレでは、無理。呪文や集中も使うコトなく、たったの一瞬で、これだけの威力なんて。「成長しているのね」。そうみたいだ。


 電流がながれるカラダって、動けなくなる。


 シデンの『雷』を注がれた連中は、指一つ動かせやしないときた……。


「力を込めて、かまえるからだ」


『より、『ぎゅっ』としてしまったわけですね!』


「そういうことさ、悪霊馬」


 ほんと。達人になりつつある。オレは、そこまで強くなれているだろうか。魔法戦士って、よくわからん成長の仕方をする。戦士としても、魔法使いとしても、どっちもあると、一本槍の専門家に及ばないような中途半端な立場の気もしちまったりするんだ。


 いいさ。


 オレが達人になれなくても、勝てればいい。最善の策に、ただ集中するだけ。


 アオは、電流で固まってしまっていた槍衾の上を、軽々と飛び越えていた。


「なんて、高さ……っ」


「は、速くもある……っ」


 突撃していたら、大勢ぶっ潰せていた。死人が大勢出ただろうな。無防備な状態で、アオの重量とパワーを浴びせられたら、命がいくらあっても足りるもんじゃない。


 それに。


 美しかったと思うよ。


 槍衾を飛び越えてしまうほどのジャンプなんて、普通の馬じゃやれないし。


 敵陣の中央に、アオは降り立った。


 そんなアオの背中から、オレも飛び降りる。


 やるべきコトは、決まっていた。


 戦闘継続を望む傭兵野郎に、「わからせるだけね!」。シンプルなもんだぜ。地面を蹴って、走った。傭兵野郎は、こちらの意図を読み取りやがる。


「オレと、サシかよ!!」


「騎士道らしいじゃないか、一騎討ちで、決めちまおうぜ!!」


 加速したまま、周りの敵を無視した。


 不思議なほどに、傭兵たちはオレを素通りさせてしまう。それは、おそらく、「あの傭兵が、レオより強いだろうと信じているのね」。腹立つよな。なめてくれる。


「なめやがって!!」


 あっちも、同意見らしい。気が合うとは思わんが、こいつが強いおかげで、ハナシは楽になりそうだ。『渡り鳥の大剣』をぶち込んだ。全身の筋肉を軋ませるようにしての、大振り。それを受け止めたのは、傭兵野郎の二刀流だ。サーベルを二本。


 武器は、選べない。


 こいつも一本鎗ではなくて、誤魔化すような器用さで強くなった男らしいぜ。二刀流なんて、本当にすごい専門家には及ばない。でも、何かを誤魔化せた。


 ガギイイイイイイイイイイイインンン!!!


 鋼がぶつかり合って、『渡り鳥の大剣』がヤツのサーベルのひとつを、噛み砕いたんだ。重量と頑丈さなら、こちらがずっと上だったから。武器の相性の差で、この瞬間はオレが勝てたわけだ。


 ここから先が、ヤバいんだけどな。



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