第九話 『傭兵ブーム到来!?』 その51/不穏なる爆発!


 スケルトンなお馬さんたちの脚力は、あいかわらず圧倒的だった。火薬を運ぶ騎兵たちを追い抜いて、前方をさえぎってしまう。十秒ちょっとしかかからない。これが競馬だったら、反則あつかいされちまうだろうな。


「とまれ!! 火薬を抱えたまま戦うのは、さすがに無理だろう!!」


「無理だと思うのかよ!?」


「訓練は、やっているんだ!!」


『ちのけがあらいですよ!!』


『どうしましょう!?』


「『国境警備騎士団』の反乱を、内々に処理するか……それとも、ストラウス三世に訴えるのか。ここにいるレオンハルト・ブレイディ男爵が、預かっている状況だ! お前たちが抵抗すれば、反乱勢力あつかいとされて、団員のすべてが処刑されるかもしれん!!」


「……おい、シデン」


「口裏を合わせろ。脅してやった方が、有効だろう」


「……たしかにな」


 仲間の発言にあまりビビるべきじゃないが……「賢いわね。シデン・ボニャスキーの策に乗っていた方が無難かも。あいつらだって、戦友の命には興味があるはず」。


「元・冒険者だろう! オレは冒険者ギルドの後継組織の、ギルド長でもある! ちょっとは、ハナシをさせてくれてもいいだろ!」


「……くっ」


「卑怯な真似をしてくれる。我々の大儀を、お前たちが理解できるとは思えない!」


「レオンハルトはいいギルド長だぞ! 辺境についても理解がある!」


「……お前は、ロッド・バーンか?」


「そうだ! オレを、知っているのか?」


「兄貴が、パーティーを組んでいた」


「誰だ?」


「ロニキス・クラッド」


「ロニキスか!」


 蛇の道は蛇というか。「世の中はせまいものね」。元・冒険者たちだから、こういうコトだって起きるだろう。兄弟そろって冒険者を目指したのは、ブレイディ家のガキだけじゃないってコトだな。


 武器を見せつけ合うような緊張感が、わずかだが、確実にゆるんでくれる。


「ロニキスは、元気にしているか?」


「……元気だ。片腕は、生えて来なかったけどな」


「そうか。くっつかなかったのは、聞いている」


「モンスターに喰いちぎられたんだ。しょうがない。兄貴は、今は……田舎で、剣術道場をやっている。本当は、オレなんかよりもエリートだったから……騎士になるのは、兄貴だったが……」


「十分な実力があるから、お前がなれたのだろう。ロニキスの、強い戦士の弟と会えて、良かったよ」


「良かったかな。この状況では」


「どんな状況でも、戦友の家族と出会えるのは嬉しいことだ」


「そう言ってもらえると、救われた気持ちになる」


「……長話を楽しみたくはあるが」


「わかっている。わかっているよ。アンタたちは、止めたいんだな」


「そうだ。レオンハルトとシデンが、反乱あつかいにならないよう、どうにか事態の収拾に務めてくれている」


「……本当に、爵位まで得たっていうのかよ。どれだけ、ひいきされているんだ!?」


 ひいき。


 腹が立つ言い方だが、こらえてやろう。


「こいつは十分な活躍をしているんだ。王さまが、カンタンに爵位や騎士の称号をあたえてくれないのは、オレよりも君の方がわかっているんじゃないか?」


「王都出身だからか? 王都の商人の一族だと、ルクレート・トリビューンには書いてあったぞ」


「うちは、ただの粉屋だ! 親族経営の会社だから、大して立派じゃないぞ!」


「……それでも、王都の商人一族だろ!?」


「それが悪いか?」


「悪くはない。だが、立場が同じとは言えん」


「同じつもりだ!」


「違うんだよ! 生まれが、多くを決めてしまっている! 王都には、オレたちの居場所なんてなかった!!」


「それでも、君は選んだハズだぞ。自分で、選んだんじゃないのか、ロニキスの弟よ?」


「選んだ……そうだ。国境を守りたかった。ファーガルは、力をつけつつある。いつ、侵略してくるかわからないから……それなのに。国王陛下は、ヴィルヘルム王子を、ファーガルに差し出した!」


「婿入りしただけだろう」


「利用されるかもしれない!!」


「されるとは、限らないだろ?」


「甘いんだよ! ファーガルがいつ裏切るかなんて、誰にもわからない! 定期的に、あいつらの偵察部隊が現れるんだぞ!?」


「国境を守りたいのは、向こうだって同じなんじゃないか? オレは、専門家ではない。しかし、戦士だ。戦士職の仕事はわかる。ファーガルの連中だって、自分たちの国境を守りたいに決まっている。そのための偵察かもしれない」


「……確かなコトを、知りたいさ。でも、侵略されるまで放置してしまえば……ルクレート王国が落とされるかもしれない。陛下は、王子を差し出した。それは、腑抜けているように思える!」


「家族を差し出したんだ。それは、信頼の証になる。あちらも、姫君を王都に住まわせているんだ。人質のようなものだろ!」


 人質。ロッドの口からは、あまり聞きたくなかった。「政治に絡むと、だいだいシリアスになっていくものよ。慣れるといいわ」。慣れたくないね。


「それは……そうかもしれないが。陛下は、人質を使えるのか?」


 ああ。


 それは、無理かもしれない。王さまは、とてもやさしいから。「まあ。本当にそれが必要になったら、迷わずにやってしまうかもしれないけどね。貴方たちよりも、長く生きて、多くの戦いを知っているのよ」。見たくない光景なのは確かだ。息子のヨメを人質にする王さまなんて。


「使えなければ、フェアではない。『百星神殿』のハーマン・ローは、自分の娘だって生贄に捧げるかもしれない。あいつは、自分の信仰のためなら、喜んで実の娘も魔神に差し出すような男だ! 知っているのか、レオンハルト・ブレイディ!?」


「……たしかに、ろくでもない男なのは知っている!」


「なら、陛下が出し抜かれるかもしれないだろ!?」


「その可能性を、低くするためには。オレたちが協力し合った方がいい」


「そんなのは解決策に、ならない! 協力なんて、出来ないだろ! 考え方が、そもそも違うんだ。お前たちは、敵に期待している。我々は、敵を、ちゃんと……敵だと―――」


 議論というものは、邪魔されるコトも多いものだ。


 爆音が聞こえた。


「か、火薬の……爆発っ」


 ここにいる部隊の荷物じゃない。もっと、先。もっと、国境近くの方だ。


「な、何で……ッ」


「その様子じゃ。予定通りの爆発じゃないらしいな。ここは、お互いに協力し合おう。状況を確認するために、同時に向かう。それでいいか? 邪魔し合って、時間をムダにしている場合じゃないのはたしかだろ」



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