第九話 『傭兵ブーム到来!?』 その41/反乱者の覚悟!?


「て、抵抗するな!!」


「だ、団長が殺されてしまうぞ!!」


 ……本当に、オレってのはどう思われているのだろうか。脅しではあるけれど、本気で殺すつもりなんて一切ないのに。「王城を襲撃したという時点で、一定の評価は受けるでしょうね」。


 そうだとすれば。


 反論の余地がどこにもねえってもんだよ。


「いいカンジですよっ」


「さすがは、レオンハルトご主人様ですっ」


「人質取るのも、テクニックのひとつではあるな」


「魔法も、防がれるとは思わなかったよ。得意技だったのにね」


「そういう不意を突くような駆け引きは、オレたち冒険者の方が得意なんだ」


「……ケンカ慣れしているか」


「殺されたくはないだろ」


 彼にではなく、騎士たちに言った。騎士たちは舌打ちしながらも、剣を捨ててくれる。


「それでいい」


「壁に両手をつけてくださいっ」


「じゃないと、乱暴しちゃいますからっ」


「……従え。その傭兵双子は、両手首を切り落とすぐらいは、やってのけるだろうからな」


「は、はい!」


「わかりました、団長……」


 うむ。『ヘカトンケイル』の双子に対しての認識が、えげつないな。「傭兵なら、そんなものでしょう。残酷さは、武器になるもの」。だとしても、やっぱり戦争は良くない。


「縛りますっ」


「ミケを、援護ですっ」


 めちゃくちゃ手慣れた拘束術を見た。あっという間にロープで両足首を縛りつけたあと。床に転がった騎士の手首も縛ってしまう。


「誘拐、拉致もっ」


「傭兵の得意とする作業なのでっ」


「あまり公言しないほうが可愛いと思うぜ……ああ、動くなよ」


「……隙があったかと思ったが。どうにも、ないかね」


「甘いつもりはない。人同士の戦争には、慣れていないが……」


「モンスターと魔族とは、ずいぶんとしのぎを削ったか。レオンハルト・ブレイディ男爵、見事だよ」


「レオンハルトご主人様、そいつも拘束いたしましょうっ」


「そして、人質として交渉に使うのですっ」


「……ああ。アンタの息子が大暴れしているのなら、その現場に行って収めてもらおう」


「……連れて行くがいい。説得するかどうかは、わからないが。どんな状況にしてしまっているのかは、気になるのでね」


 厄介な男だ。人質にしたからといって、それで勝ちが確定するとはかぎらない。政治ってのは、ムズカシイところがある。


「前後を、私たちが護衛しますのでっ」


「レオンハルトご主人様は、常に男爵を斬れるようにしていてくださいっ」


「……ああ。ナイフを、突きつけておくよ。毒のたっぷり塗りつけられたナイフだ」


 話術を使う。


 嘘だよ。毒なんて塗っちゃいない。それでも、背中から肺をえぐるのには十分な長さと鋭さがある。アドルフ・イェーガーおじいちゃんから伝わった、この古いナイフには。


「歩いてもらおう」


「……いいとも。剣は?」


「もちろん、捨ててもらうぜ。他の武装もだ」


「ナイフのニオイがっ」


「男爵からはしますのでっ」


「傭兵らしく、鼻が利くじゃないか」


 ナイフを捨てる男爵がいた。一本捨てたが、騙されはしない。


「まだまだっ」


「隠し持っていますっ」


「冒険者と傭兵の鼻をなめるなよ」


「……怒らないでくれたまえ」


 二本目を捨てる……だが、ブーツに忍ばせた三本目のナイフは、ミケの手により引き抜かれた。


「良くない態度ですよっ」


「敵国人であれば、突き立てていたトコロですっ」


 ナイフを?


 何だか物騒な発言だが、真顔で言っているんだから、きっと状況次第では迷わずに突き刺してしまったんだろう。


「……完全敗北か」


「行こう。敗北するのは、まだこれからだ」


「息子が、私の言葉を聞くだろうかね」


「聞かなければ、そのときは……また実力行使になる」


「……それもまた、一興ではあるが……」


「勝てないのならば、ただ処分されるだけ」


「そうだね。だが、君は『生贄』という概念を知らないのかな」


「……王さまが決めるコトだ。動け!」


「わかった。部屋を出てから、左に曲がりたまえ。案内はしてあげよう」


 有言実行してくれるのは、貴族らしくはあったかもしれん。「こいつは覚悟をしている。息子の暴走を、拒絶してはいないのよ」。


「……そこまで、王さまに不満があるのか?」


「君にはわからん」


「わからないな。だが、敵対者の言い分のすべてを、聞いてる義理はない」


「だろうね。正義とは、そのようなものだ」


 せまい通路だ。


 人質を取っていると、圧倒的な強みがある。騎士たちは団長を犠牲にしてまで、襲いかかってくるコトはなかった。その意味では、覚悟が足りないのかもしれないし、理性的とも言える。


 おそらく、『本当の反乱者』であれば―――「歴史が教えている。その種の兵は、主君さえも斬って、大儀を成そうとするものよ。彼らは、そこまでの覚悟はないと言える。良かったわね」。


 ふざけんなよ。この状況のドコが―――「わかっているでしょうに。そこまで理論武装してしまった兵士だらけになっていたら、もっと血なまぐさい展開になった。アドルフ・イェーガーが必要になるほど、物騒なコトに」。


 そういう理屈か。


 だが。


 それは、つまり。


「アンタの息子は、覚悟ガンギマリ野郎か」


「領土的野心に燃える、私の後継者だよ。退路を断たせて、騎士たちに『立て』と命じているのさ。自慢の我が子だ」



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