第九話 『傭兵ブーム到来!?』 その37/猫をかぶる者たち!


 王国騎士団の騎士たちにも、心配されてしまったな。


 それに、いきなり横やりを入れられた気持ちにさせてしまったかもしれん。


 だが。一触即発の雰囲気も少しは和らいでいた。『国境警備騎士団』の連中は相談を始めている。矢をいきなり放って来るなんて可能性は、なくなったように思えた。


「わかった! いい度胸だ! レオンハルト・ブレイディよ、お前の入城だけは許可してやろう!」


「おう!」


「……気をつけろよ、男爵閣下」


「わかっている。君らも、短気を起こさないでくれ。人質だって、ここにいるかもしれないんだから」


「向こう次第だ」


「おい」


「……すまない。感情的になっているな。プロフェッショナルとして、職務を全うする。国王陛下の思し召しのままに」


「たのむ」


 山城に向かう。


 ひとりで入るつもりだったのだが……。


 傭兵姉妹が、いや、今は……。


「山城の騎士さまたちっ!」


「どうか、メイドである私たちのお供を許可してくださいませっ!」


 つまり。オレを『護衛してくれる』つもりらしいよ。ミケとニケのエンデバー姉妹は、まるで普通のメイドのように見えた。ケットシー族は、猫かぶるのが上手じゃあるからね。猫耳が生えてるのは、だてじゃないかも。


 ……傭兵だとばれたら、それはかなりのリスクではあるんだが。「リスクを取るだけの価値はあるわよね。上等な戦争屋さんが一緒にいてくれるんだから」。荒事で解決するつもりじゃない。「見つめてやらないの。あの双子たちだって、仕事をしたがっている」。


 たしかに。


「……どうするんだ? オレは、どちらでもいいぞ。そちらに従ってやれる!」


「……メイドごときなら、問題はないぞ」


「オレの武装はどうする?」


「していてかまわん。度胸を買ってやるという意味だ」


「評価してくれてありがとうよ。じゃあ、ミケ、ニケ。行こうか」


「はいっ」


「がんばりましょうっ」


「……しっかり、猫をかぶっていてくれ」


「諸々を理解していますっ」


「私たちはメイドである前に、戦争のプロですのでっ」


「信じるぜ」


 うなずくメイドたちを引き連れて、山城に向かう。大きくはないものの『堀』があった。


「水が張られていませんねっ」


「水不足ではなくて、元々、そういうタイプでしょうっ」


 水がない代わりに、木の杭がトゲトゲしく並んでいたよ。もしも、ここに落ちたら串刺しになってしまうかもしれない。


「跳ね橋が降ろすぞ! 王国騎士団が動けば、お前から殺す!」


「オレを狙えよ! メイドたちを狙わないように!」


「わかっている! 卑怯な真似をしたいわけじゃないんだ!」


 降りた跳ね橋がトゲトゲしい堀のうえに道をつくってくれる。城門がむき出しになった。


「……突撃すれば」


「奥にいる弓兵たちに射殺されてしまいますっ」


「試さないようにお願いしますねっ」


「おう……」


 魔法と剣を振り回しながら突撃すれば、どうにかなるかもしれない。「シミュレーションは大切よ。そのうち、本当に必要になるかも」。


 冒険者としての基本的な興味でもある。ちょっとでも、優秀になりたいんだ。


「ようこそ、『国境警備騎士団』の本拠地、シュレード城に!」


 騎士のひとりが、緊張した顔でこっちをにらみつけながらも歓迎してくれた。


「ありがとう」


「お招きっ」


「感謝いたしますっ」


「……国王陛下は、男爵の位だけじゃなくてメイドまでくれたのか?」


「個人的に雇っただけだよ。その、クレアはハートリー家の令嬢だからな」


「彼女と、婚約をしたというウワサは……」


「そんなウワサがあるのか?」


「……いや。どうでもいい。実際、お前は爵位を得たのだ。王都のエリートの一員になったわけだな。冒険者上がりとしては、大出世になる」


「その地位に見合った仕事をやるつもりだ」


「……理想だけで済むほど、世の中ってのは……まあ、いい。跳ね橋を上げるぞ!」


 これで退路は断たれたわけだ。「『国境警備騎士団』に襲われたら、死んじゃうわね。私の力を使えば、まったく問題ないだろうけれど」。


「こっちに来てくれ。話し合いの場を設けてやれる」


「おう」


 たくさんの騎士たちからにらみつけながらも、山城のなかを進む。山城らしく、通路はせまかった。入る側からすれば右折ばかり。「侵入者は、左側から襲われるのね。利き手じゃない方向から攻められる」。


 戦いのためのデザインというのは、あまりにも合理的だ。通路の壁には『隠し窓』があった。そこから矢を射られたり、槍が突き出してくるかもしれない。「あちこち罠だらけかも」。


 ……心配しないでいられるほど、鈍感ではなかった。背後にはミケとニケがいる。巻き込んでしまうわけにはいかない。「もしものときは、力を授けましょう。私のレオ。乙女を守ろうとする態度を、私には気に入るものね」。


「ここが、会議室だ。騎士団長がお会いになる。無礼な真似は、するなよ。こっちは戦闘も覚悟しているんだ」


「それを決めるのは、きっと指揮官だな」


「……その通り。オレでも、お前でもないんだ。そうなったときは、恨むなよ」


「ああ」


 もしものときか。


 戦いが必要なときだってある。だが……。


「ようこそ。レオンハルト・ブレイディくん。私が、シュレード城の主であり、『国境警備騎士団』の団長、マシュー・プルトーだ。くしくも、君と同じ男爵でもある。よろしくな」



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