第八話 『呪われた鎧と消えた王子』 その13/THE GAME OF LIFE


「良さそうだ!」


「だろう? だから、ちょっとだけ。大人向けにするんだ」


「大人が相手だから、安っぽく作らなくてもいいと」


「その通り。あんまりちゃちいと、ガキ臭くてさ、さすがにやる気が失せちまうってもんだぜ」


「たしかに! ああ、いいアイデアだ」


「役に立てたらしいなら、良かったよ」


「それで、それで! 何か、もっとアイデアはないのか!? 君のアイデアを、もっと聞かせてほしいんだよ!」


「……おう。オレのハナシでいいなら、いくらでも」


 何だか。


 とても、お話がはずんでいるようっすね。女子チームは、ちょーっと、ついて行けないトコロもあるっすけれど。


 でも。


 ケネスさんのアイデアは、たしかに良さそうかもって印象を受けるものっすね。それに。


 それに……『この雰囲気』には、何とも、大きな既視感というものがあるというか―――。


「―――冒険者用に、キレキレの大人向けのデザインにしちまうってわけか!」


「そうだ。頑丈さも欲しい。屋外で使えそうなアイテム全般を、オレたち冒険者はやたらと高評価しちまうからな」


「携帯できるコンパクトさも……」


「そうだな。それも、評価が高くなる。バッグや『ふくろ』に詰め込める量も有限だ。駒は、金属製」


「散らばらないように、磁石はどうかな?」


「いいと思うぞ。そういう装備品は、好まれる」


「よしよし。アイデアが、固まってきた気がするぜー!」


「冒険者が遊んでいれば、他に娯楽のねえ木こりのおっさんたちも食いつく。そしたら、売れるよ」


「天才かよ、ケネス……っ!」


「木こりのおっさんたちに、ガキへの土産として売り込んでもいい。あのド辺境には、土産屋すらもねえんだ。ガキがいれば、何かオモチャのひとつでも買って帰りたがる」


「親子でボドゲを遊んでくれたら、文化が広がりそうだっ! 次の誕生日とか、魔神祭りの日とかに、売れるかもっ!」


「おうよ。やってみればいい。試せよ。オレとは、違って。お前は、自由に手も足も動くだろう。首から下が、指一本さえ、動かねえオレとは違う。やれるんだ。いくらでも」


「……ああ。本当に、そうだ」


「無限の困難に、まだ立ち向かえる。レフト・ウィルソン。お前は、元・冒険者だろう」


「うん」


「じゃあ、やらなくちゃな」


「君も、冒険者だ」


「おう。そうだ」


「オレに出せないアイデアを、出してくれた。それは、すごい力だ。君は、無力じゃあないよ。ぜんぜん、まったく。手も足も動かなくても、大学出じゃなくても、オレが思いつけないコトを、やれたんだ。頼むぜ。相棒の貯金もかけての勝負をするつもりだ。もっと、アイデアが欲しい。オレを、助けてくれよ」


「ハハハハ! おお、よりにもよって……無力じゃねえってか」


「うん」


「そうか。じゃあ、オレも。冒険者らしく、何か、考えてやらねえとな」


 ……『無限の困難に自分の意志で立ち向かえる』。それが、冒険者っすから。それが、自由ってものっすから。


 ああ。レオさんが、ここにいたら。すごく、このふたりのやり取りを、ニコニコしながら見守っていたような気がするっすね。


 レオさん。レオさん。今ね、きっと、何か、とても冒険者的な意志が、ここにはあるから。レフト・ウィルソンさんにも、ケネスさんにも。


 今ここは、すごく親しみの持てる既視感があるっす。


 今のここは、まるで『木漏れ日亭』だ。


 クエストに出かけるために、とっても熱心に作戦会議を交わしている冒険者さんたちが、ふたりの冒険者が、目の前に……「彼らは、無限の困難にも、自分の意志で立ち向かえる」。


「よしよし。アイデアがたまってきたな。ここで、大前提に立ち戻ると、よりアイデアが洗練しやすいんだ」


「アイデア探しには、あるあるだな」


「なあ、ケネス。アタマを、空っぽに。とにかく、素直に答えてみてくれ」


「……おう」


「どんなボドゲが、いいと思う?」


「……ふたつ、だな」


「教えてくれ!」


「まず、冒険者がさ、モンスターと戦うんだ。ダンジョンで。『冒険者名鑑』とか作って、数字あるじゃねえか。レベルとか、能力の。あれで、モンスターと戦う。疑似戦闘さ」


「シミュレーションだな!」


「名鑑と連動させても、いいかも。まあ、そこらはアンタの仕事だ」


「任せろ! 数学とか得意なんだよ!」


「ダンジョン探索して、宝を回収するような……運要素も入れとけ。サイコロ次第で、下手くそでも勝てるように。世の中には、バカもいるってコト、忘れるなよ。そいつらだって、楽しみたいんだよ」


「取り入れよう! すごろくと、ダイスが勝敗を決める、バトル……っ!」


「……二つ目は」


「そっちも、教えてくれ!!」


「……あれだ。いろんな、人生を送れるようなゲーム」


「いろんな人生……」


「『引退冒険者再就職ゲーム』だな。結婚するヤツもいるし、粉屋に就職したり、騎士団に入るヤツも、マリみたいに医者になったり……アンタみたいに起業するのもいい。銀行から、金借りて会社を興したってのか。アンタ、スゲーよ」


「オレは、そんなにカッコ良くはねえけど……今にも、つぶしちまいそうだし……っ」


「とにかく。オレは、いろんな第二の人生を送ってるヤツらを見てて、うらやましく思った。でも、それは、オレがこんな全身、動けねえからじゃなく。普通のコトだと」


「うん。みんな、何かに、誰かに、憧れているものだから」


「そうさ。木こりだって、木こり以外の人生にも憧れるだろ?」


「きっとね。もっとカッコいい職業とか……そういうのって、誰にでもある。本当は、やってみたかったけど、やれなかった人生って」


「だよな」


「聞いてくれよ。オレは、勇者になりたかった。ぜんぜん、向いてなかったけど。すごく、なりたかったんだ、勇者にね」


「そうさ。みんな、そうなんだ……だから、いろんな人生に、なった気持ちになれるような遊びを作ってやれ。そしたら、きっと、売れる……売れなくても、誰かが遊んでくれるぞ。ていうか、ちょっと、オレも、やってみてえかもな」


「ケネス、君は……どんな人生を選ぶだろうか。そのゲームで」


「もちろん、決まっている。やっぱり、冒険者だよ! アニキと同じ、ガチガチの戦士職だ!」



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