第七話 『雷竜の棲む森』 その37/索敵完了!?
知恵を使い始めたモンスターが環境にあらわれると、それまで機能していた戦術が役に立たなくなるときも多い。
オレたち人類は、少なからず知恵というものを使って、モンスターの行動に対処している場合が多いからだ。
知恵ってものの良くも悪くもあるトコロは、パズルのように読み合いを連鎖させていくという点だよ。「だから、逆算もされちゃうのよね」。そう。戦術合戦で、負けちまうのは読まれてしまうから。
この深い森の奥に隠されていた遺跡に……。
もしも、ジジ・バスラの仲間の宗教テロリストが隠れているとすれば?
「混沌神のカルトの特徴は、欲望に素直ってコトだぜ」
「……じゃあ、そろそろお食事時よね。お昼ごはん食べたくなるわ」
「おう。飯を炊くかもしれん。こんな森の奥に潜伏していたりすれば、食事という楽しみを放棄するとは思えないし……規律を維持するのにも、食事ってのはいいもんだからな」
結束を作るし、教育の方法でもある。
人だって、動物。家畜と同じで、エサをくれる相手には敬意を持つもんだ。食べちゃいけない食料を設定するコトで、行動を縛り……支配しやすく調教するなんてマネも可能だよ。
社会のどこにでもある、ありふれた調教と支配のタイミング。それが、食事である。
……そういうミリタリーな視点もあってね。実際、そのとおりに世の中は出来ているから……読み解ける。
「……煙が、ちょっとだけ……あ、あそこから……っ」
「ああ。完全燃焼を目指しているらしい。ほとんど煙は立たないし、火力もいい調理になるが……痕跡のすべてを、消せるとは限らない」
「ポンキマちゃんの、し、視力ならではだねっ。煙というか、す、水蒸気の動きが見えてるっぽい」
「いい召喚獣だよ」
「炊事の反応があるのなら、間違いなく人が住んでいますね。冒険者でないのなら、こんな凶悪な環境に住む人物なんて、誰かから追われてる犯罪者あたりが関の山」
「つまり、発見したというわけだな!」
「おう。ジジ・バスラの仲間が、ここに逃げ込んでいるかもしれない。さすがに、ここなら……」
「密偵でも、たどり着けそうにないっすね!」
「ああ。しかも、神殿があると知っているとすれば、同じ魔神を信奉するカルトあたりに、コッソリと伝えられたか……魔神に、直接、教えてもらったかだな」
混沌神ルメは、ニッコリと笑っている。「ひ・み・ちゅ」。ウザっ。でも、いいさ。かなり重要な調査すべきポイントを見つけられたからな!
「お手柄だぜ、プラナ! 君のおかげで、メチャクチャにあやしい場所を見つけられた!」
「ウフフ。お役に立てたなら、光栄ですよ!」
「盗賊のスキルって、す、すごいねっ」
「さすがは、『盗賊王』さん家の娘さんっすね」
「ロンドリも、こ、こうなれれば良かったのに!」
ロンドリは、姉たちとは違う方向に進んでしまったから。それは、なんとも。残念ではあるよね。
「じゃあ。調査すべきポイントが、見つかったというわけで……」
「ああ。『ポーン・キマイラ』は撤収させる」
「あんまり長く偵察していると、モンスターの群れも刺激するでしょうし、気づかれるかもしれない。密偵からの追跡を受けると知っているなら、召喚獣による探りだって、警戒しているハズ」
「ルクレート・トリビューンの購読者だったなら! ここが開発予定の土地だとも知っているハズですよね! 冒険者に見つからないように、カルト野郎どもは行動するハズです!」
「あるいは、逃亡の準備をしているかだな。冒険者ほど、『統治者個体』の登場に気づけるような動きはしちゃいないだろう。モンスターを狙って倒しているとは思えん」
「私も、そうだと思う。こいつらにとって、モンスターは自分たちを守る『衛兵』だ」
「共存を実現している関係に、なりつつあるんすね。仲良くはないでしょうけれど」
「刺激し合わなければ、バランスが崩れるその日までは安泰だ」
「じゃあ、『統治者個体』が生まれた今は?」
「ちょっとした刺激で、全滅させられるかもしれん」
「う、うーん。ジジ・バスラの中間なんて、どうなってもかまわないと思うトコロもあるっすけれど……っ」
「情報源として、重要だと思いますよ。それに、悪人に手を貸したかもしれませんが、彼らだってテロリストになるつもりもなかったかも」
「そ、そうっすよね。プラナさんの、おっしゃる通りっす」
「利用されただけの場合だって、ありますから。ジジ・バスラのような、宗教的な攻撃者を、尊敬してしまう連中は……辺境だとか、貧しい者たちの村では、それなりにいます」
「……王さまや、王都が栄えているコトへの不満があると」
「はい。完璧な世界とは、言い難いものですから……」
「どうあれ。『統治者個体』の影響で、ここに隠れている者たちの命は危険にさらされているのだな! 聖騎士としても、冒険者としても、すぐに助け出してやるべきと主張したい!」
「ああ。もちろん、助けに行くぞ。逮捕してやるがな! ついでに、状況次第だが、『統治者個体』の調査も並行して試みよう」
「狩れそうなら、狩っておいた方がいいでしょうか?」
「半々だな。良い面はある。敵の弱体化が起きる。悪い面は、慎重かつ保守的な戦術……つまり、『待ちかまえる作戦』から、より積極的な『攻めにいく作戦』に変わる場合もある。このキャンプにとって、どっちが最適か次第も大きい。おい! キャンプのメンバーを集めて、投票させてくれ! それ次第で、オレたちも行動方針を変化する! 君たちのクエストに影響をあたえるかもしれないから、君らで選んでくれ!」
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