第六話 『天涯より来たりて』 その39/クエストの終わりに!


「トドメを刺してあげる? そーれとも、救命処置?」


『迷うトコロだ』


「迷わねえさ」


「やるでござる」


「バカ言え。逮捕するんだよ。全員をな」


 死なせるつもりはない。だから、応急処置するしかないな。ジジ・バスラを縛りながらも、止血していく。傷口を魔法の『炎』で焼いて、無理やりにふさいだ。


 厄介なのは、ブランド・リークの方だったよ。


 あいつの傷の方が、よっぽど深刻だ。


「死ぬかも、しれない」


 ロッドの顔が、多くを悟らせる。このままだと、遠からず死ぬのだと。気まずいな。テロリストだって、殺したくはない。


「……人質は?」


「全員無事だ。夫婦も子供もな。だから、気にするなでござる」


「……気にするぜ。クソ、もっと上手く立ち回れたら……」


「十分だよー。正直、あーしが助けてあげないと、レオちーかロッドのどちらか、死んじゃうかもーって、思っていたし」


「と、とにかく。無事で良かったっすよ。テロリストどもは、その……死んでも、別にいいかもっす」


『まあな。こいつらは、国賊そのものではある』


「……法で、罰するべきだろ」


「レオちーは、殺したくないんだね。でーも、戦いが好き。変わっているねえ」


「うるせえよ。魔族やモンスターと、人ってのは違うんだ」


『生きろと、かつて言ってみたが。その結果が、このざまだ。雑魚のブランド・リークはどうでもいいが、ジジ・バスラだけは殺しておくのもいい』


「……そうでござるな」


「情報を吐かせられるかもしれんぞ。脱獄に協力したヤツは、アリーザ・トーンだけじゃないハズだ」


「……まあ、そうなるか。二度と、出さないようには対処するでござるから、ここでは殺さないでおこう」


「……おう。そうしておけ。一日に、二人も斬り殺すような男にはなりたくないんだ」


 もう、ブランド・リークは助からんかもしれん―――。


「―――はいはい。お待たせ。救世主のご到着ですよ」


「マリ! 早く、こいつを助けてくれ!」


 本当に救世主だったな。


 マリは、死にかけているブランド・リークの首を押さえつつ、回復魔法で傷口を閉じていく。


「助かりそうか?」


「命はね。でも、声は失うかもしれない。声帯が、ずっぱりと切れてるもの。優先して治療しているのは、声より命の方だから……しょうがないわよね」


「しゃべれなくなるっすか」


「死ぬよりマシでしょ。それよりも、こいつも拘束してよ」


「ああ。オレが縛るから、マリカーネ・フラッコ……ちょっと動かしてもいいか?」


「いいわよ、ロッドくん」


「……死ぬなよ。どうやら、助かりそうなんだから」


「他のテロリストどもは?」


「捕まえているっすよ。全員、ズタボロだけど、死んじゃいないっす」


「そうなのね。医者は、不用?」


「死ななそうだから、問題ないっすよ。むしろ、ちょっとは痛い目に遭った方がいいと思うのは、意地悪っすかね」


「私としては、そうは思わないけど。情報源として、生かしておくべきだとは思うわ。混沌神系の寺院や神殿は、これからしばらく評判悪くなっちゃうかもしれないけれど」


「宗教で、ケンカが起きると?」


「ロッドくん、モンスターや貧困だけじゃないのよ。世の中の争いの理由は」


「ルメがそそのかしたわけじゃない。こいつらは、勝手にやっただけ」


「そうなの?」


「……多分な」


 ルメは、またどこかに出かけてしまった。契約者は、そこまで多いのか? いつもは、オレにベタベタとくっついて来るのに。


「でも。これで、安心っすね」


『火薬の方は、どこにある?』


「密偵が回収に向かっているから、問題はないでござる」


『ふむ。そうか。ちょっとぐらい、わけてもらっても良かったのだがな』


「し、シデンさんっ。物騒なコトを言っちゃダメっすよ」


『報酬がてらな。お前らも、どうだ? 欲しくないか、大砲?』


「……ちょっと、欲しいかもしれん。小型のヤツを、アオとハルが引っぱるキャンペーン・カーゴに載せてみたくもある」


 昔、そういうのやっていたパーティがあったんだよな。マジで憧れた。けど、火薬や大砲ってのは、高いし、役人たちがうるさいから断念した過去がある。


 しかし、今ならば……その夢も叶うかもしれない。


「レオさん、あんまり物騒な装備を欲しがっていると、誤解されて、懲役になっちゃうかもっすよ」


「……じゃあ、やめとく」


「平和が、いちばんっすからね!」


『いい言葉だが、レオンハルト。これもまた、冒険者のひとつの現実だ』


「恨みと武力を合わせ持っている連中が、まだまだいると?」


『こいつらほど愚かな者は多くないだろうが、ゼロではない。私への、クエストは続行しつつ、報酬を振り込むべきだ』


「……おう。引き続き、物騒な冒険者の監視と、探りを頼む。だが、危険に踏み込み過ぎないようにしろ」


『もちろん。おい、密偵』


「何でござるか?」


『そういう理由だから、指名手配は解除しなくてもいいぞ』


「解除など、するものかでござる。お前がしたコトは、こいつらがしようとしてた行為と、大差ないでござるから」


『ストラウス三世に聞いてみれば、ちょっと異なる見解が出てきそうだが』


「陛下の意見ではない。密偵の総意でござる。お前は、危険だと」


『そういう認識でいい。報酬は、レオンハルトからもらうから。王国の予算を、レオンハルトに回せよ。王国の金で食うメシは、美味そうだ』


 召喚ねずみは、ドロンと煙になって、召喚もとの世界へと帰っていく。


「ふん」


「なかよーく。ケンカしよーね、密偵ちゃーん」


「……つるむのは、ごめんでござる。だが、冒険者たちよ。今回は、良い働きであった。陛下も、エリアス王子殿下を安心して聖堂で見送られるだろう。むろん、警備の手は緩めないが」


「ああ。クエスト、クリアだ。しばらくあとで、王さまに報酬をせびるかね」



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