第六話 『天涯より来たりて』 その24/冒険者の伝統!!


 汚すとか言われると、ちょっと罪悪感もわいてくるというか。


 とはいえ。


 お付き合いしている以上、こうなるのは当然のながれだから……教えておかないとね。


「じゃあ、オレの部屋に来いよ……あ。先に、お風呂とか入っておくか?」


「そうだな。レスリンスをするにあたって、ドレスのままでは。ちょっと、着替えてこよう。稽古着でいいのだろうか?」


「い、いや。その、パジャマでいいからねっ」


「わかった。すぐに戻るぞ」


 ……ああ。なんだ、これ。


 ちょっと無知すぎて、みょうな新鮮さがあるんだけれどっ。「笑えるレベルで初々しいわね。でも、これはこれで問題だわ。男に騙されちゃうんだから」。騙してはいない……いない、はずだよね?


「戻ったぞ、ダーリン」


「ああ。うん……普通に可愛いぞっ。清楚な水色が、すごく似合ってる」


「う、うむ。ありがとう……っ。だ、ダーリンも……パジャマに?」


「その……ちょっと、コトに及ぶ前に、ルール説明が必要な気がするから。べ、ベッドのはしに座ってくれ」


「ああ」


 つまり。行為について、説明した方がいいのだろう。じゃないと、何もわかっていないクレアに、無理やりやってしまった感じになるというか。


 性教育の時間を、このピュアな乙女にするとか……ちょっと、独特な羞恥心があるんだけれど。「自分好みのウソを吹き込むチャンスよね!」、オレはそんな悪徳スケベ野郎じゃないよ。


「で、では。説明をするぞ。これはな、ガチの……その、いわゆる子作りの隠語で」


「キスのか?」


「いや、キスでは、子供は出来んのだっ」


「な、なんだと!? たしかに、以前も言われたような。では、どうやって……?」


「裸で抱き合って、その……男女がああしてこうして……」


「は、はだかで、だきあう……っ」


「う、うん。そうだよ。怖いコトじゃない。その、愛を伝え合うカンジの行いだ!」


「それは……っ。ぜひ……つ、伝え合いたいのだがっ」


「怖いなら、いいんだよ。まだ、焦らなくてもいいんじゃないかと」


「……怖くはない。上手く、それをしてやれたらいいとは思うが。やり方が、よくわからないのだ……ダーリンが、ぜんぶ、教えてくれるか?」


「うん。もちろんだ」


「……で、では。ダーリンの、好きなように……教えてくれ。私は、やれるだけ、がんばる」


「じっとしているといいよ。だいたい、オレが動くから……最初は」


 やさしくキスをしたんだ。やさしかったと思う。だんだんと行為がエスカレートしていくのは、悪いくせかもしれない。がんばってくれるクレアを、そのままベッドに押し倒した。ああ、やさしくね。


「愛してるぞ、クレア」


「わ、私も愛してる……っ」


 同意の言葉を、言わせてしまったような気がする。ああ、もう止まらない。「がんばれ!」、うん、うるさいから。「見ておくからね!」、いいよ。別に、慣れてるし。


 ……。


 …………「ほうほう。なんと、紳士な」。紳士ですから。「だが、どんどんスケベな本性が出ているぞ」。ちがいます、紳士です。「いい動きだ!」。邪魔しないでっ。


 二時間後。


「……オトナに、されてしまった」


「うん。そうだな」


「……これを、毎日するのか」


「ま、毎日でなくても」


「がんばるからな」


「……うんっ!」


「す、スケベめ」


「スケベだよ」


「……でも。大好きだ。愛してるぞ」


 ……ああ、不用意だ。


 そういうコトを、そんな笑顔で言われると。スケベ野郎は。


「ま、またするのかっ。わ、わかったから―――」


 何だか、とてもね。幸せだったわけさ。「でしょうね。あの子も、喜ばせてあげられていたもの。いい仕事したわね、さすがは私の契約者」。そういうエッチな理由ではなく、もっと、尊い理由から。「偉い子ね。ちゃんと、愛情で交尾しているものね」。交尾とか言うな……。


「はあ、はあ……さすがに……っ」


「うん。寝ようか……」


 ノックされることもなく、ドアが開いて。エルミーが入ってくる。クレアが恥ずかしそうに毛布に隠れるが、エルミーは鼻歌まじりに、毛布を引っぱってはがそうとした。


「や、やめないか!?」


「まあまあ。めーでたく、オトナになったお祝いに、ワインでもどーぞ」


「ワインは、いらないぞ」


「汗かいたから、水分ほきゅーも、大切だもんねえ」


「そ、それは、そうかもしれいないが……こういうコトをした直後の、『夫婦』の部屋に友人が入ってくるのは、普通なのだろうか……?」


「冒険者が集団生活している宿だと、割りとあるあるかな」


「だーよね。だから、恥ずかしがらずに、ワイン飲もーう。水分補給は、たーいせつ!」


「……まあ、いいが……ごくごく」


「いーい飲みっぷり。ワインの代金はー、レオちー持ちだからーね」


「半分以上、お前が飲んでるだろうが?」


「お祝いなんだよう? レオちー、ケチらないの」


「こういうのは祝われる側は、支払わんのだがな」


「じゃね。おーやすみー。さすがに、あーしも、ねむたいわ」


 マイペースなエルミーに邪魔されたような、お祝いされたような。まあ、何であれ。寝酒も飲んだから……さすがに寝よう。春先の気温は、ちょうどいい。抱きしめ合って眠るにはね。



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