第三話 『盗賊王の生きる道』 その9/唐揚げ弁当と山賊


「ふう。叫ぶと、落ち着いたな」


「プププ。あ、アホな習性してる」


「口が悪い。損するぞ」


「すなおな、だ、だけだもん」


「すなおに生きるだけでも、損をしてしまうときもあるぞ」


「むう」


「だから、礼法などはしっかりと学ぶのだ。お前自身が、より楽しく、より良く生きるために」


 クレアは本当にマジメだな。すごく正論だ。反抗期まっさかりのローズに通じるかはわからないが。オトナのオレの心には突き刺さる。王さまの言葉を、思い出せたよ。『本当の敵とだけ戦えるのがオトナ』。悪い態度や、拒絶は、ムダに敵を作ってしまう。


 冒険者は、すなおに生き過ぎているのかもしれない。「それはそれで、世の中に行動力をあたえるの」。うん。だから、バランスだ。「それ好きね。でも、戦闘では」。迷わないようにする。命のやり取りをするときは、ちゃんとシンプルに反応するさ。「それでいい。レオらしくいなさい」。


「それで、ダーリン。『盗賊王』の子息たちは、どこで悪さをしているのだ?」


「王都の南にある街道だ。かつて、そこは王さまが略奪を『盗賊王』に許した土地だ」


「王さま、い、いかす。略奪させるとか、なかなかの悪だな」


「説明が足りなかった。魔王軍相手にのみ、略奪していいと許可をあたえたんだよ」


「なるほど。でも。もう魔王軍、い、いないよね?」


「そうだ。だから、連中は、困窮した」


「私の患者さんたちにも多いんだけれど、貧乏になった冒険者たちが選ぶ道は……」


「ああ、犯罪だ。南の街道を通過する者たちから、金品を『通行料』と称して略奪しているようだな」


「はあ。追いはぎね」


「山賊っぽくもあるぞ」


「どっちにしろ、く、クズども! いひひ! 骨にしちゃえ」


「殺さなくてもいい。ちゃーんと、『社会復帰』に導くんだ」


「盗賊とか、そ、そういうの向いてなさそう」


「考え方を変えてみるんだよ。多くのスキルを持った連中なんだからさ。何かしらの、就職先を用意できるかもしれん。鍵屋とか、罠猟師とか……あとは、探偵業とか……部門によれば、騎士団だって採用するだろう。最高の偵察要員でもあるんだ」


「どうだろうか。最近は、騎士団の入団基準も厳しくなっている。とがった能力よりも、組織を運用するための知性が重視されるらしい」


「マクシミリアン王子の、『改革』かよ」


「そうだな。王子殿下は、『トラブルを起こさない人材』を採用したがっていた」


「はあ。じゃあ。冒険者で、職業・盗賊の連中は、雇ってもらそうにない」


「王子、ろ、ろくなコトしねーな」


「国際協調のためよ」


「ん。女医は、お、王子推し?」


「マクシミリアン王子は医学界にも顔がきくの。僧侶職は優遇してもらえたけれど……ネクロマンサーの『骨折接ぎ』とか、ダークな治療法は禁止したがっているわね。いろんな国で、嫌われているトコロがあるから」


「ちっ。私たち、相変わらず迫害されてやがる。の、呪い返しても、とーぜんだよなあ」


「呪わないようにね。やり返したら、負けよ」


「今から、お、お前、やり返しにいくんだろーが!」


「そ、それは、そうだけど!! 揚げ足を、取らないの!!」


「へいへい。あー……シェルフィーの、か、唐揚げ弁当でも食べよう。レオお兄ちゃん、口移しで、唐揚げ食べさせてあげるねー」


「こ、子作りをしようとするんじゃないっ!」


「……え?」


「キスなどしたら、赤ちゃんがデキてしまうのだぞ!?」


「……ふーむ。なあ、え、エロ女医。じゃなくて、リマ先生」


「マリです。マリカーネ・フラッコ」


「どっちでもいいけど、女医先生よお。こ、こいつにさ。しっかりと性教育をしてやれよー。エッチな子作り医療は、得意だろーが」


「そんな専門家じゃないので」


「そーかよ。はあ。どいつこいつも……お。や、やば。本格的に、お腹減ってきた。ねえねえ。お兄ちゃん。お膝かしてねー」


「ああ」


「いひひ。ロックお兄ちゃんよりも、ガタイいいからあ。座り心地、さ、最高……っ。胸板もあついね。お、男おっぱい、筋肉質で、カッコいい」


 大胸筋のたくましさを、ほめられた。素直に喜んでおくとしよう。でも。十四才の距離感って、これが正しいのかな?


 お膝に座られると密着感がすごいんだけど。いや、ローズは少し変わった子だし。そもそも、さみしいんだろうな。お兄ちゃんとして、エッチな目ではなく、いたわりの目で愛でよう。ナデナデ。


「ううむ。しあわせタイム。ここで、さ、さらに。唐揚げ、食べる…………もぐもぐ。もぐもぐ。お、おお。鶏皮はぱりぱりで、な、中はジューシー。うまうまだあ。しぇ、シェルフィーは、私のヨメとなるべくして生まれたような料理人だなあ。もぐもぐ」


「……なんか、見ていると腹減ってきた」


「いいにおいだしね」


「オレたちも、食っておこうぜ。どうせ、向こうから仕掛けてくるだろう」


「そうか。通行料代わりに、襲うのか、この馬車を」


「見た目、完璧に魔王軍所属だから、あっちもやる気出してきそうよね」


「久しぶりの『合法』なクエストだと思えば、冒険者としての血が湧き立つのもしょうがねえ」


「戦闘になれば、捕らえるの楽になる。勝てば、いいのだから!」


「おう!」


「……脳筋ね。やり過ぎないように。彼らには協力してもらう必要があるから。真の巨悪を打倒するために!」


 エロ小説のせいで、人死にが出るかもしれない。海賊版は、やっぱりみんなを不幸にするよな。


 ああ。殺伐とした現実のなかで食う、唐揚げのおいしさったらないね。



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