プロローグ

第1話

「佳乃さん、帰るんですか?まだ残ってますけど」



唐突に飽きた。


と言うよりうんざりした。



「いいよ、太一。後は俺らだけで何とかなるだろ」



夕焼けのせいだ、と思う。


それから消えてしまった小さな生き物のせい。



「じゃあな、佳乃。また明日」



別れ際、大輔はいつも『また明日』という言葉を使う。


それを聞いて俺は明日もここにいていいんだと知る。


ここにいつまでいられるかも分からない。


俺の存在理由はこの拳だけ。


赤く染まるこの拳。


空の赤さが俺に思い知らせる。


お前がこの世に存在していられるのはその拳のお陰。


それ以外にないんだと。

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