第9話 これが俺の聖戦士のチカラ
変身できた……!
紫水晶の装甲。
湧き上がるパワー。
変身して実感した。
今の俺は、超人になってる……!
確かタケルさんは剣を呼び出して戦っていた。
あれはどうするんだ?
(なぁタケルさん、剣はどうやって出すんだ?)
『それは無理だ』
俺の質問に、いきなりあんまりなその言葉。
は?
何で?
タケルさんは使ってたじゃん。
そう思い、理由を訊ねようとしたら
『キミは聖戦士の鎧の依り代にカメラを選択しただろ?』
それはタケルさんが自分の思い入れが1番大きい道具か、アクセサリーが依り代に出来るって言うからで……
だけどタケルさんは
『聖戦士の特殊能力は、依り代にした品物に影響する。僕の場合は剣のペンダント……兄の形見だったんだが』
えっ。
じゃあ俺はどうなるの?
そういうことは早く言ってくれないと……!
焦りを覚えた俺の脳裏に。
タケルさんの言葉が続く。
『キミはカメラ。カメラに準じた能力が宿っているはず』
カメラの能力……?
写真を撮ることか?
そんなもんでどうやって……!?
「死ネェェェ!」
アスモスが羽ばたき、飛び掛かって来る。
……頭に青い稲光を迸らせながら。
あれ……?
あんなの、タケルさんと戦ったときは出てなかった。
何かの前兆……?
アスモスの青い稲光はすぐに消え、俺の間合いに入って
鉤爪で攻撃して来たとき。
また出たんだ。
その寸前に。
青い稲光が。
俺はその攻撃を反射神経だけでなんとか避けて。
そこで俺は気づく。
……人間は、何かを決断するときに脳から筋肉に電気信号が出るという話をどこかで聞いたことがある。
ひょっとしたら、ナラッカもそこは同じなのかもしれない。
そして……
俺はその、決断の電気信号の余波みたいなものを視認できるんじゃないのか?
これが、カメラの能力……!
「ソウラ! 威勢がイイノハ最初ダケカッ!」
また決断の信号。
青い稲光。
攻撃の前兆が見えた俺は、今度はアスモスの動きを注視し
すると
(えっ)
……今度は、スロウに見えた。
スロウモーション、コマ送り……!
俺はアスモスが繰り出して来た鉤爪を避け、その腕をとって
地面に押し倒し、関節を極め、へし折った。
拳法道場で習い、習熟した柔の技……!
アギャアアアアアア!!
アスモスが絶叫する。
これが……俺の聖戦士の能力……!
『……凄まじいな。キミがカメラを依り代に選択したとき、正直不安だったんだが』
全くの杞憂だった。
キミは聖戦士としてやっていける。
タケルさんの賞賛。
俺の意識が燃え上がる。
アスモスの頭に赤い稲光が見えた。
赤……?
青じゃ無いのか……。
それって何の
「タ、タスケ……死ニタク……」
初めて見る赤い稲光に驚き、俺がアスモスの腕を離してしまうと。
アスモスは起き上がり、羽ばたき
舞い上がる。
俺に対して反撃をせずに。
あっ
(赤は……逃げ腰になってる決断か)
気づいた。
多分、そういうことだ。
腕を折られて、こいつの心が折れたんだ。
じゃあ、逃げられる……?
だけど
『逃がすな。倒せ。……胸の結晶にナラッカ討伐の意志を集中しろ』
タケルさん。
……分かった。
読み通り、必死で羽ばたき、ナラッカ・アスモスは逃亡に舵を切っていた。
俺は意識を集中し、アイツを倒す意志を高める。
アイツがこれまで壊した家庭、狂わされた人々……!
胸の紫水晶の結晶に、エネルギーが高まっていく……
『やるんだ。……浄化の神槍・メギドブラストだ』
……メギドブラスト!
俺は俺に背中を向けて逃げ去ろうとしているアスモスの後姿に意識を向け
……決断した!
「メギドブラスト!」
その瞬間だった。
俺の胸の結晶から、大出力の紫色の光線が発射され
アスモスの胴体を背後から貫いた。
ビクッ、と震えるアスモス。
光線が貫いた箇所には。
とても大きな風穴が空いていた。
そこから
アアアアーッ!
絶叫、悲鳴。
そして爆発。
轟音と共に。
夜空を一瞬、光が染める。
……勝った。
勝てたぞ……!
人類の天敵に……!
その勝利の実感で。
俺の身体が興奮で震えた。
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