取調記録 - 2024/01/19
——逆に聞きますが、田中さんは、この事件についてどう思われますか。
うーん、僕らの業界じゃ、それについて話すのは半ばタブーになりつつあるんだよねえ。
——と、言いますと?
ほら、下手に語って「ソレ」が隠したい真相に触れようものなら、こう、でしょ?(舌を突き出しながら、首をぐるりと回すジェスチャー)
——(沈黙)
だから、僕としてはその写真の件についてこれ以上調べるのはよした方が良いと思うよ。真相は藪の中ならぬ雪の中。いやさ吹雪の中。それでいいんじゃないかな?
——しかし……。
あと、君がインターネットに流出させた三つの動画と一個の音声データ——「ある男性.mp4」と「ある老人.mp4」、「ある少女.mp4」そして「あるコテージにて.mp3」は警察が全力を尽くして、削除して回っている。
完全に消し去ることは難しいかもしれないが、今後、被害はかなり抑えられるはずだ。……そして、君がこの呪詛を撒き散らした張本人であることも、遠からず証明できるだろう。
——その場合、私は死刑ですか。
難しいところだね。なにせこれほどに大規模かつ深刻な電子データによる呪詛の拡散は今までに前例がない。
それに、——
——私の大切な人を奪った奴を、捕まえてはもらえないのですか。
…………。残念ながら。
——そうですか。
ところで、どうして君はさっきのような発言をしても殺されないのだろうね。ソレに言及しようものならその瞬間首をねじ切りに来る。そういう性質を持つ存在のはずだが。
——わかりません。
……そっか。でも、ひょっとしたらその特性は、使えるかもしれない。
ちょっと、上にかけあってみるよ。上手くすれば、討伐ができるかもしれない。
(数分後)
作戦の提案をしてきた。承認されれば、日本全国の霊能者を集結させての総力戦となる。そして、君にはその作戦において重大なポジションを担ってもらう。
——それは……?
「おとり」だよ。
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