第16話
じわじわと、燃えるように痛む体が、少しづつ輪郭を失っていくのを感じていた。
メラの言った通り。
彼女との別れから程なくして、大きな爆発音が聞こえた後、空から黒い雨が降ってきた。
真っ暗なそれに触れると、少しづつ体が崩れていく。
遠くから届く叫び声を耳にしながら、俺は境界から少し離れた場所で、運命を受け入れていた。
こんな時でも落ち着いていられるのは、脳裏に浮かぶ彼女との幸せな日々があるからだ。
目を閉じて、最後に愛しい人の笑顔を思い出した瞬間、俺は…
信じられない声を耳にした。
「ルカ!!!」
「メラ!!何でここに、体が…!!」
境界を越え、闇の粒にも侵された彼女の体は、
痛々しいほどに焦げついていた。
「一緒がいい!ルカの傍にいたいの…私、、」
衝動的に泣きじゃくる彼女の唇を塞いだ俺は、言葉にできないほどの愛があるのだと知った。
「メラっ…」
降り注ぐ闇の粒から少しでも逃れられるように包み込むようにしてその身体を抱きしめる。
「…大好きよ、ルカ」
「俺も…っ、愛してる、メラ。何に代えてもいいから、ずっと一緒にいたい。」
その願いが叶わない事は、左腕が形を失った時には充分分かっていた。
残された右腕で、彼女の黒く染まった頬に流れる涙を掬い取った時に告げられた言葉が、俺が聞いた最期の言葉になった。
決して離れないように力をこめながら、跡形もなく存在を失うその瞬間まで、互いを確かめるようにキスをし続けた。
そして、ほとんど同時に命を終えるその瞬間、
「ずっと一緒よ」という彼女の言葉が、この
世界に存在する何よりも優しい雨粒となって、
二人の体を消し去った。
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