第4話「ちゃんと覚えてたべ」
「……あ、み、見えた?」
はっきりと映像が。
「え、どこにあるだべ?」
キクコちゃんが聞いてきた。
「うん、見えた通りなら一つずつ別の場所にあるよ。えっと……」
勾玉は山奥のお寺みたいな建物に。
剣は海辺の灯台。
鏡は……なんか真っ黒だけど日本のお城っぽいところ。
「なんですけどそれがどこにあるのか。俺、こっちの事知りませんから」
ほんとそこしか見えない。
ぐーぐる地図みたいなのが頭に浮かんでもあったらなあ。
「ふむ。キクコ、あれをやってみなさい」
「あれ? あ、あれだべか?」
ボルス様がそう言うとキクコちゃんが何故か顔を真っ赤にした?
「見られるのが嫌なら儂らは席を外すぞ」
「いんや、いいだべさ。隼人さん、ちょっと膝立ちになってけろ」
「ん? こう?」
言われた通りにすると、
「んじゃ」
「!?」
キクコちゃんが自分の額を俺のそれに当てて、
「その場所思い浮かべてじっとしててけろ……」
顔が近い、うわ息が当たってる!
「……ん、分かったべさ」
キクコちゃんが離れて言った。
「え、今のって何?」
「記憶を探る術だべさ。そんで勾玉はあたすの村の近くの山だったべ」
「そうなんだって、待て」
記憶探られたって事は……?
「隼人さん、あたすの裸ちゃんと覚えてたべ」
うわあああ!
「ははは、気にすることはないだろ。だって二人は」
陛下が笑いながら言うが、
「あたす達まだ結ばれてねえべさ」
キクコちゃんがふくれっ面で答えた。
「そうだったな。だが今回の旅でそうなればいいだろ」
「あ、そうだべな」
「……与吾郎おじいさんに撃たれるかも」
「それ以前にキクコの父にやられるかもなあ」
ボルス様がニヤけ顔で言いやがった。
「……」
そうだった、そっちの方が現実的だ。
「まあ、場所が分かったのだし今日はキクコの家に泊まってもらえばどうだ?」
ニヤニヤしながら言うな、爺さん。
「それだと俺、殺されるかもですが」
「ははは、冗談で言ったが彼はそんな事はせんよ。むしろ会えるなら会いたいと言っていたからなあ」
「そうだべ。親戚が勇者様だなんてっておっとうも皆も大喜びしてたべさ」
「……そうなんですね」
まあ、へっぽこですけど。
「隼人殿、改めて頼む。どうか神器を取り戻してくれ」
陛下がそう言って頭を下げた。
「は、はい! あの、どうか顔を上げてください!」
そんな事しなくてもいいのに!
「それとな、兄代わりとして言わせてもらうが……キクコの事を頼んだよ」
陛下が顔を上げて言われた。
「……ですが俺は」
「神器が戻れば可能になるかもしれないよ」
「え?」
「今はここまでしか言えないけど、悪いようにならないよ」
陛下が笑みを浮かべて言うが、どういう事だろ?
「その剣は持って行ってくれ。あとキクコ、持ってきてるかい?」
「はいだべ」
キクコちゃんが取り出したのは黒い軍服に似た感じの上下だった。
「それは隼人殿の為にとキクコが縫ったんだ。皇室秘蔵の魔法布を使ってね」
「え?」
そんな貴重な布をもだけど、キクコちゃんが俺の服を……。
「さ、着てみてくれ。勇者殿を更衣室に案内してあげて」
傍にいた側近の方、聞いたら陛下の親衛隊の人に着いて行った。
着替え終わって戻ると、
「お、まさしく勇者だね」
「ええ。まるで伝説の初代勇者のようですな」
お二人共言い過ぎです。
「隼人さん、似合ってるべさ」
キクコちゃんが嬉しそうに言ってくれたが、こっちも嬉しいよ。
「そうだ。それも持って行ってくれ」
側近の人が俺に小さな巾着袋を差し出した。
「それはたくさんの、大きなものでもしまっておける魔法の袋なんだ。中に食料や薬、旅に必要なものをありったけ入れてあるよ。あと他にも渡すものがあるけど、それは後でね」
「あ、ありがとうございます。こんな凄いものを」
「いやいや。さ、日が暮れる前にキクコの村にね」
「は、はい」
俺達は陛下とボルス様、側近の人に見送られて御殿を後にした。
「んじゃ行くべさ。隼人さん、しっかり掴まっててけろ」
「うん。あ、また目を閉じないと」
「それ、半分嘘だべ」
「は?」
「たすかに使い手が未熟だとそうなるけんど、上級者なら大丈夫だべさ」
「え、でもさっき凄い衝撃来たけど」
「お師匠様、歳のせいか魔法力の加減が上手くいかない時あるべさ」
「ああ、そんな事言いたくないわな」
「んだんだ。さ、行くべ」
「うん」
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