【12話】人と鬼のこれから
きび団子屋の奥にある広間には、桃太郎と四人の仲間である、シロ、モンタ、ピーコ、
「桃太郎の姐さん、本当に感謝だぜ、言葉にしても足りないくらい感謝してるぜ」
「ふふふ。全然いいのよ、気にしないで。ちゃんと借りは返してもらうから」
桃太郎がニヤリと微笑むと、雫鬼はハッとし、言い過ぎたと後悔の色を浮かべた。
*****
鬼たちは本来、そこまで好戦的な種族ではない。だが、その異形の風貌に恐れを抱く人々は少なくなく、鬼に対する差別的な態度や行動が蔓延し、鬼の住む領域を侵害し追いやる動きが広がっていた。
一方で、鬼たちは非好戦的であるとはいえ、気性が荒い者も多く、人間を遥かに上回る力を持つ者も珍しくない。追い詰められた鬼たちは当然ながら反撃に出ることもあり、その結果、人と鬼との間には深い亀裂と憎悪が刻まれていった。
こうした状況を改善するため、
桃太郎と
さらに、鬼ヶ島所司代は人と鬼の住む領域を明確に定義した。これまでの取り決めでは、常に鬼に不利な条件が一方的に課せられることが常だったが、今回は違った。人と鬼それぞれの立場や民意が慎重に考慮され、公平さを重んじた取り決めが実現したのである。
もちろん、この取り決めの裏には、桃太郎の意向が大きく影響している。さらに、松平元信がこれまで積み重ねてきた数々の功績により、幕府内での反対意見を巧みに説得し得たことも、大きな要因であった。松平元信は説得の際、平等こそが最終的に平和をもたらすと主張していたが、その予想通りの結果が現れると、彼の功績はますます称賛されることとなった。
*****
「まぁ、人と鬼とが一緒に暮らす…、ってのはまだまだ実現できる状況じゃないけど、人と鬼の衝突は大きく抑えられそうね」
桃太郎はわずかに不満げな表情を浮かべながらも、一定の成果が得られたことに安堵し、ふぅと息をついた。
「そうだぜ、鬼も仕事をするのが嫌なわけじゃない。仕事のやり方を知らなかったり、不条理な扱いを受けるから、多くの者が怒っている。だから、桃太郎の姐さんがちゃんとした仕事を与えてくれたのは本当に大きいんだ。真面目に働く鬼もこれから増えると思うぜ」
雫鬼は望んだ結果に満足し、これからの未来に希望を抱きながら、生き生きとした表情で語っていた。
「鬼だけじゃないわよ。人だって、ちゃんと真面目に働かない人間も多いのよ…。本当に困ったものだわ…」
(桃太郎さん、自分のことを言ってる…)
(桃太郎はん、自分の話しとるんか…?)
(桃太郎さん、自分のこと棚に上げちゃってるわよぉ…!)
(桃太郎の姐さん、すげえ…、面の皮が厚いぜ…)
シロ、モンタ、ピーコ、そして雫鬼が、なんとも言えない表情を浮かべながら桃太郎をじっと見つめていた。
「なによ! みんな揃ってなんか言いたいことある目をしているわね…!」
桃太郎はふんと顔をそらしたものの、その表情には怒りの色は見えなかった。
「なにはともあれ、これで一件落着ね」
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