『七谷愛美』の場合

俺の名前は七谷愛美ななやらぶみ

友愛中学に通っている。

この春から2年に上がるみたいだ。


正直言って学校生活は好きじゃない。

センコーはうるさいし、金髪は地毛だって何回言っても信じてくれないしな。

校則なんて破るためのものだ。

勉強、部活、友情、恋愛なんて、全部俺には不要。

俺に必要なのは、言う事聞いてくれる玩具…だったのに、最近になって、なんか違うような気がしてきた。

それもこれもあいつに会ってからだ。

十方涼とおかたりょう、お前だよお前。


十方に初めて会ったのは去年の文化祭だ。

文化祭なんて、ガキのままごとと一緒だって思ってたから参加してなかったんだ。

その日もいつものように体育館裏でサボってたんだが、あいつが声をかけてきたんだ。

イラッとしたからメンチきったんだが、あいつ全く動じなかったんだ。

それどころか、文化祭は楽しいもんだから回ろうとか言って、俺の手を引っ張りやがったんだ。


男に手を握られるなんて、喧嘩でもなかなかないのに、あいつは俺に触れやがったんだ。

その時の気持ちはなんて言ったらいいかわからねー。

ゾワッとした感じだったが、悪い気はしなかったんだ。

なんでかな。

いまでもわかんねーんだ。


その後も直々、声をかけられてな。

毎回変な気分なんだ。

学校なんてどうでも良かったのに、今じゃそれなりにいい気分だ。


今年はあいつとクラス一緒みたいだし、今度は俺から声をかけてみるとするかな。




「十方!俺と契りをかわそうぜ!」

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