第1夜 インダス文明の粘土板
早速第一回なのですが、非常に個人的で原始的な話をします。皆さんはインダス文明についてご存じでしょうか。
その昔、家に子供向けの地理の図鑑がありました。世界の国はどうなってるとか、昔の地図はこんなだったよ、みたいな奴です。その中に「世界の四大文明」という項目があって、エジプト文明とメソポタミア文明、インダス文明と黄河文明が書いてありました。最近では黄河文明は長江にも文明があったとして総称して「中国文明」と呼ぶそうですね。シーザーがカエサル、鎌倉幕府が1185年みたいな奴ですね。
さて、インダス文明の石版の話です。各文明にはそれぞれ文字の紹介がありました。エジプトは象形文字、メソポタミアは楔形文字、中国は甲骨文字。そしてインダス文明はインダス文字なのですが、牛のような動物をかたどった粘土板に刻まれた文字がいくつか残っていただけだそうです。そしてその粘土板の下に「まだ何が書かれていたかわかっていない」と書いてあって、幼心にそれがとても怖かったのを覚えています。
一見怖い要素は全くありません。ただ動物のモチーフと、そこに文字のようなものが書かれただけで見た目は全く怖くないんですよ本当に。検索窓に「インダス文字」と入れて頂ければそれがどれほど怖いものでないのかはわかると思います。
しかし、「まだ何が書かれていたかわかっていない」のひとことでものすごく不気味なものに仕上がっているんです。ここに書かれている文字はこの地球上で読める人が誰もいません。わざわざ粘土板に残したのに、もう読める人がいないなんて一体なんのために残したのかという思いに駆られます。
もし書いてあることがとても恐ろしいことだったらどうしよう。もうすぐ世界は滅ぶとか書いてあってもおかしくないし、文字が伝播しなかったということは住んでいた人たちが一気に滅んでしまったということなのだろうか。小さな民族ならともかく、教科書に載るような巨大な文明がそんなに簡単に滅ぶのか? そういったことがぐるぐるして、そのページを見るのが怖くて怖くて仕方ありませんでした。
未解決のものは何でも怖いです。特に歴史上のもので「よくわかっていない」というものに私は知識が断絶してしまった悲哀とその背景を想像してしまい、もの悲しくなります。そして誰にも知られずにうち捨てられる恐怖がよぎります。
本当は大切なことを伝えたいのかもしれない。でも誰も読めない。そんな文字と自分を重ねると怖くてたまらないのです。
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