(5)準備徹底
エントリーを無事に済ませてから三日後、ついに関西大会の会場が発表された。神戸港だ。
その連絡を受けた瞬間、俺たちの周りに緊張が走る。海に面したロケーション――水を使った戦術が活かせるのか、それとも全く別のアプローチが必要なのか、まだ全然わからない。でも、一つだけ確かなのは、この発表が俺たちに新たなプレッシャーを与えたってことだ。
その知らせを聞いたユイが、悔しそうに声を上げた。
「なんやって!シラハマ三号が勝っとったら、関西大会も余裕やったに違いないやん!ほんま悔しいわぁ!」
相変わらずの陽気な関西弁だけど、その中に本気で勝ちたかった気持ちが見え隠れしている。俺もアヤカも、思わず微妙な笑みを浮かべるしかなかった。
ユイはさらに続ける。
「それにウチ、ワイルドカードの選出からも漏れたみたいやわ。ほんまに悔しい。」
「ワイルドカード?」
俺が首を傾げると、アヤカが答える。
「審査委員会が、技術的な高さとか、勝敗とは別の観点で選ぶ枠らしいわよ。」
「ああ、それや!選ばれたのは準決勝でウチに負けた浜精機のアイツや!ウチに負けたやつが関西ででかい顔するなんて、めっちゃ気に食わん!ぶちのめしてこいや!」
そう言って大きく拳を突き上げるユイ。俺たちの士気は半分以上、彼女からもらってる気がする。本気で悔しがりながらも、俺たちを奮い立たせてくれるこのパワー、なんなんだよ…。
それからの一ヶ月は、準備漬けの日々だった。新しい武器や防具の動作テストを繰り返し、そのたびにアヤカが細かい調整を重ねてくれる。そしてもう一つの重要なタスク――各都道府県で勝ち進んできた機体と搭乗者たちの戦闘データの徹底研究だ。
「はい、次はこれ!」
アヤカが録画データを次々に切り替えながら、簡潔な解説を加える。俺は通信制高校だから、こうやって動画を見て学ぶのは全然苦じゃない。むしろ得意な方だ。でも、アヤカにとってはどうやら退屈らしい。
「ふあぁぁ…眠い…」
彼女は椅子にもたれかかり、大きな欠伸を隠そうともしない。
「アヤカ、大丈夫か?こんなときに寝たら…」
「だってさ、こんなのただ見てるだけじゃつまんないじゃん!」
不満げに頬を膨らませる彼女。でも、手元のメモにはしっかりと要点が書かれている。どんなに文句を言っても、ちゃんとやるのが彼女らしい。
「だったら、武器の相性とか、そのメモを見ながら一緒に考えようぜ。」
俺がそう提案すると、アヤカの目が少し輝いた。
「それなら話は別!実践的な話になるなら目も覚めるわ!」
そうして、俺たちは研究と立案を繰り返しながら、少しずつ自信を積み重ねていった。
神戸港での関西大会。俺たちは、今までの努力をぶつけるだけじゃなく、ここで何かを掴むために戦うんだ。この準備の日々が、きっと俺たちを強くしてくれると信じている。
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