転生した信長:ユダヤ人大統領の決断
齋藤景広
絶望からの転生
1582年6月21日、私、織田信長は本能寺にいた。私にお供するものは100人ほどしかいない。そんな中、本能寺の外ではなにやら喧嘩が起きているような騒ぎの音がしていた。私はそのせいで目を覚ました。私の家臣の一人、森蘭丸が慌てて走ってきた。
「謀反です!」
私ははっとして彼を見つめた。
「誰の謀反だ?」
「水色の桔梗からするに、明智殿の謀反かと!」
私は一つため息をつくと、
「是非に及ばず」
向こうからはたくさんの矢が飛んでくる。鉄砲の弾丸もだ。そのうちの一つが私の肩に刺さった。そこからは血が滲んでいる。それでも私は、向かってくる敵を切り倒したり、弓で矢を射たりして戦った。しかし向こうは13000の大軍だ。とても100人で勝てる相手ではない。私は蘭丸に命令した。
「ここに居る女たちを逃がしてくれ。十兵衛は罪なき者を殺すようなやつではない。あとは、お前も逃げることだ。まだ若いからな」
蘭丸は泣く泣く私のもとを去った。
私は建物に火をつけ、切腹の準備をした。足音が聞こえてくる。蘭丸であった。
「上様も一人は寂しいでしょう。私も一緒にあの世に参ります」
これは甘えというのか忠義というのか私にはわからなかった。私は優しく蘭丸を抱きしめた。そして、私たちは無念を抱えながらともに自殺した。
異国の文化を見てみたいという思いが私にはあった。その思いは、実に不思議な形で叶えられることになった。
今の私の名前はノア・ガルシア(Noah Garcia)。ユダヤ系アメリカ人だ。私は、星条旗を探して人々の前で演説している。もちろん、旧約聖書に手を置いている。
「アメリカ初のユダヤ人大統領として、唯一神に誓ってアメリカ合衆国を引っ張っていきます!」
民衆は拍手していた。しかしこの時のアメリカは、戦国武将が流行っていた。むしろ世界中といった方がいいんじゃないか?その流行りの戦国武将の中でもひときわ有名な織田信長の記憶を私が持っている。そんなことがバレたら、全世界が揺るぐに違いない。
その夜、私のスマホには次々に電話がかかってきた。スマホの着信音がうるさくも賑やかに鳴っている。+1の番号だ。国際電話で使われるんだけど、+1はアメリカでもあるしカナダでもある。とりあえず出てみるか。
「もしもし」
「もしもし。こちら、アメリカ新大統領、ノア・ガルシアです」
「こちら、カナダ首相、ドミニク・トランブレ(Dominic Tremblay)です。この度は、米大統領就任おめでとうございます」
「ありがとう。少しばかり相談したいことがあります」
あのことって、言っちゃっていいのかな?ただの電話なのに、緊張してしまう。言ってしまったもんはしょうがない、私が信長の生まれ変わり?かもしれないこと、トランブレ首相に言おう。
「今、世界中で日本の戦国武将が流行ってますね?」
「それは確かに。それがいかがなさったのです?」
「実は、伝えたいことがあって」
「その伝えたいことは何でしょう?」
「私が、もしかしたら戦国武将の生まれ変わりかもしれないということです」
「生まれ変わり?誰かの記憶があるのですか?」
「あなたもその武将を知ってると思います。私のはおそらく、織田信長という武将の記憶です」
「お言葉ですが、私にも似たようなものがあります。前世の私は、京都の六乗ヶ原というところで処刑されました。私が考えるには、私の前世は石田三成という人物でしょう」
「まさか仲間がいたとは。ほかの国の首脳にも聞いてみますね」
「では失礼いたします」
電話はそこで切れた。
その後も次々と電話がかかってきて、その首脳たちの正体は16世紀の日本の戦国武将の生まれ変わりであるということが判明した。
その日の最後に、ドイツの首相から電話がかかってきた。彼の名はエクムント・アーベレイン(Egmund Abelein)。
「もしもし」
彼の声は暗い。私は彼に何かあったのか心配になった。
「もしもし。こちら、アメリカ新大統領、ノア・ガルシアです。元気なさそうですが、大丈夫ですか?」
「元気が無いに決まってるじゃないか」
彼の声は少し怒っているようにも聞こえる。何か良くないことがあったのかな?
「私には前世の記憶なるものがある。その私の前世が、あの武田信玄なんだ」
最後の方の声はもう震えていた。武田信玄は、侵略はするわ旗の色は赤いわ三国同盟は結ぶわで、独裁国家と悪名高いナチスドイツと一緒くたにされているのだ。その武田信玄の生まれ変わりである彼が今のドイツの首相だなんて信じられない。あの国はまた独裁国家と化してしまうのであろうか?また、さっきも言ったとうり私はユダヤ人である。ナチスといえば、ユダヤ人虐殺で有名だ。アーベレイン首相は私を殺しに来るかもしれない。私はその恐怖に駆られてしまった。
「あなたと同様、私にも前世の記憶がある。その記憶は信長という武将のものだ。ここで電話を切らせていただく」
恐怖のあまり、私は急いで電話を切った。
「そうか。そう、だよな」
アーベレイン首相はその場に座り込んで、涙をポロポロと流した。
「武田信玄は民思いの良き君主だったはずなのに。それが何だ、あのナチスとやってることが一緒じゃないかと人々に後ろ指をさされる。その信玄が私だなんて、国民にそんなことが知られたら終わりだ」
次の日、私はどこの首脳がどの武将の記憶を持っているのかを一覧表にまとめた。
「しかしこれはすべて秘密だ。誰にも分からないところにしまっておこう」
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