第3話
「……はっ。ここどこだろう?」
目を覚ますとベッドで寝ていた。体中が痛い、不良の人たちに殴られ続けたから当然か。
でもなんでベッドに寝てるんだろ? 先生か誰かが僕を保健室にでも運んでくれたのかな?
白いカーテンに囲まれたベッドを見て、ここが保健室なんだと分かった。
カーテンの隙間からさしてくる光の色を見て、今が夕方なんだと気付く。
そんなに長い間寝てたんだ。入学式が終わった後すぐに不良の人たちに絡まれたから、クラスメイトの顔もわかんないや。せめて自分の荷物だけでも取りに行かないと。
そう思って体を動かすけど、体中が痛くてうまく動かせないな。
でもいつまでもこうするわけにはいかないから、なんとか我慢してカーテンを開けた。
「あら? もう大丈夫なの高島君?」
カーテンを開けると保健室の先生だと思われる女性の人が僕の名前を呼んでいた。
「ええっと、そのもう大丈夫ですから。多分……」
「多分? あんまりやせ我慢はしない方がいいわよ。本当なら君の怪我、病院で診てもらう方が良いんだから。それなのに……」
それなのに? 一体何だろう?
ちょっと気になったけど、いつまでもここにいるわけにはいかないからお礼だけ言って出て行こう。
「心配かけてごめんなさい。もう時間ですし僕はもう帰ります。本当にありがとうございました」
「初日早々君も大変ねぇ。あんまり無茶はしないようにね。まあ君の場合は大丈夫なのかもしれないけど」
「?」
「人は見た目によらないって言うけどこんなケースは初めてね。でも、今の君は見た目通りのような……。まあいいか、体に気をつけて帰りなさい」
「あ、はい。失礼します」
先生の言ってることがいまいちよくわかんなかったけど、長居するわけにも行かないから僕は保健室を出た。
今日は入学式。授業もなくて午前中に学校も終わるから、こんな夕方に残っている一年生の生徒はいない。普通放課後の時間は誰かしら見かけるものだけど、今日ばっかりは本当に人を見ないな。
強いて言うならグランドの方から聞こえてくる声。多分部活に励んでいる二年生以上の先輩達だろうな。
そんな声を聞きながら僕は自分の教室に向かった。朝一度しか行ってないけど、実は迷わないように事前に学校のマップは頭に入れている。
あんまりやることがなかったからなんとなくしていたことだけど、こういうことで役に立つんだったらやってて良かったな。
「ここだここだ。うん、やっぱり誰もいないな」
分かっていたけど、教室にはもう誰もいない。ある意味で貴重な体験かもしれないな。
そんなのんきなこと考えても仕方ないか。ええっと、僕の荷物は……。
「あった」
教室の後ろの個人ロッカーの中に入っていた荷物を確認する。
うんやっぱり僕の荷物だ。当たり前かぁ。
後は帰るだけ、今日は本当にひどい目にあった。今まであんまりいい人生じゃなかったけど死にたいとまで思ったのは今日が初めてだ。でもなんでだろう? 今は何か晴れ晴れした気分だな。
あんな目にあったのにどうしてそんな風に思ったんだろうかは自分でもわからないけれど、荷物を手に取り僕は教室を後にしようとした。
でも……。
「キミ、高島君? 高島耀真くんかい?」
突然、綺麗な声で話しかけられた。
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