転生したら蜂の魔物って、噓でしょ……?

風遊ひばり

第1章

初手から大群はパニックホラーなんよ

まえがき


 一つの作品が完結するとどうなると思う? 次の連載が始まる!


 と言いつつ、この作品は昔別のサイトで連載していたものです。(一応)完結してるので、連載中の作品や新作を書いてる間、こちらを放出してお茶を濁していきますね……


─────────────────────


 朝起きて朝ごはんを食べ、制服に着替え学校に行く。退屈な授業を受け、部活を終えて帰宅し、家で夕飯やお風呂を済ませる。


 スマホで暇つぶしをして就寝すると、また同じ時間の繰り返し。


 起きて、学校へ行き、授業を終えて帰宅し、再び就寝して次の日を迎える。



 延々、この繰り返し。

 この日々が、ずっと続くと思っていた。

 この繰り返しで良いと思っていた。


 得てして、こういった何でもない時に事は起こるものだ。



 何の変哲もない授業中に起こった地震。地割れ、そして崩壊。

 不運にも、とある学校を横断した地割れは、一つのクラスを丸ごと飲み込んだ。


 避難する暇も、助け出す余裕すらない。

 救助隊が駆け付けた時には、地割れに巻き込まれた一クラス分の生徒の姿形も見当たらない。


 深い深い地面の割れ目が、ゾッとするような深淵を覗かせていた。

 この世のものとは思えない、まるで、別の世界に繋がっているかのような深淵を。



        ♢♢♢♢



 んっ……ふぁ……寝てた?


 目を開けたらそこは雪国……なわけあるか。

 何にも見えないんだもん。


 私は確か……大規模な地震? か何かで教室が崩れて、それに巻き込まれたはず。意識が戻ったってことは生きてるってことなんだろうけど、目は見えない、身体は動かない、音も匂いも分からない。



 えぇ……どうしろと?


 でもなぜか痛みも無いんだよね。

 崩れてきたコンクリの下敷きになったら大怪我だし。

 大怪我で済まないって?

 でも生きてるよ?



 うーん、意識したら触覚はあるかも。こう、なんか身体をがっちり覆われてる感じというか、あ、全身固定されて麻酔中って感じ。全身麻酔したこと無いけど。


 感覚があるってことは頑張れば……おぉ、動く動く。


 こう、寒い日に布団にくるまってる時ぐらいにはもぞもぞできるぞ。

 その程度かよとかいうツッコミは受け付けないよ。結構動けないんだから。

 とにかく、解決の糸口、見つけたり。



 というか、目も見えない、鼻も利かない、音も聞こえないじゃ他にどうすることも出来ないんだよね。必死にもぞもぞするしか。


 ミシッ……

 あっやば……変な音した。

 もしかして、何か壊しました?



 ミシミシッ

 ちっ、違うんです! これは、そのっ、そう! 不可抗力です!

 先に言っておかないのが悪いんですよ!



 バリバリバリッ!

 ぎゃっ! 眩しっ……お? 光?


 あ、ほんとに体が何かで包まれてて、それを壊しちゃった感じですか、なるほど。でも、眩しいってことは少なくとも目が見えるってことだよね。それは良かった。


 ほんで、視界の先には六角形の光。これCTとはMRIとか? 六角形なんて先進的な。


 でも、平衡感覚が戻ってないから微妙なんだけど、頭の上にあるの変じゃないかな。CTとか、お腹の上が普通でしょ。



 ってことで、あの光は多分出口。

 身体を包んでる何かが壊れたとはいえ、この通路は狭い。もぞもぞはまだ続きそうだ。


 よいしょっと、あともうちょい。

 さぁ、ここから顔を出せば全貌が明らかに!



 ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブッ



 ヒェッ……

 ハチ!? ハチの大群っすか!?

 待て待て待て、あんなのに襲われたら死亡確定でしょ!


 しかもハチでっか!

 一匹の大きさが私よりでかいぞこれ!

 え、何? 新種? ここほんとに地球ですか?


 視界を埋め尽くすほどのハチの大群……SAN値直葬。もうパニックホラーですねこれ。



 ブブブブッ



 な、なんか一匹こっちに近づいて……ストップ! 私は食べても美味しくないぞ!


 急いで顔を引っ込めたのに、六角形の窓に脚をかけて今にも入り込もうとする巨大バチ。


 あかん、死んだかも。



 ……あれ? いつまでたっても襲ってこない? せっかく覚悟を決めたのに焦らしプレイとかやめてよね。


 ていうか、ハチさんあんた何差し出してるの? 黄色くて丸い、木の実みたいな……美味しそう。


 あれ、ナチュラルに食欲が復活してる……。ははーん、あれか? 昔の有名な童話みたいに、太らせてから食べようってか?



 ……いいでしょう。乗ってやろうじゃないの。


 だって……食べないとお腹減って今すぐ死んでしまいそうですもの。


 何も食べずに餓死するぐらいなら、何か美味しいもの食べてから死んだ方がマシだ!

美味しいかどうか分からないけどね。



 じゃ、覚悟を決めて……んん? この手、というか脚? 私の?


 なんか昆虫図鑑でよく見る……あれだ!カブトムシの幼虫がこんな感じの脚してたわ。


 うっそだろお前ぇ……

 確かに、転生モノとか好きだよ?無敵の主人公がバッタバッタと。爽快じゃん。


 でもさぁ、虫っすか?芋虫っすか?



 『魔物に転生したJKの人生やり直し冒険譚』ってことですかね、うへぇ。


 あ、でも、ハチなのはまだマシかな。強そうだし、結構カッコいいと思うんだよね。っていう話、友達にはできないよね。昆虫好きのJKなんて引かれるから。


 いや、好きというよりは苦手ではないだけで……って一緒か。



 こうなっちゃったのは仕方ないけど……あー、気が重い。

 芋虫になってどう暮らしていくのさ。

 頑張って成虫になったとして、きっと駆除されるんでしょ?

 産まれた瞬間、前途多難。

 せめて後悔しないように自由に生きてやるぞ。






 あ、ちなみに貰った木の実っぽいのは蜂蜜の塊でした。

 美味しかったです。

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