第39話 別荘
街外れの高台。目の前に広がるのは、俺が理想と効率を追求して建てた別荘だ。
朝の光が建物の白い壁を照らし、庭園に植えられた木々の緑が鮮やかに輝いている。これまでの努力の結晶と言っても過言ではない。
「レオン、コーヒーはいかがですか?」
隣に立つソフィアの声に、俺は軽く頷いた。彼女が注ぐコーヒーの香りが、心地よく漂う。
「ありがとう、ソフィア」
かつて冒険者パーティーから追放され、誰からも理解されなかった俺が、今やこうして安定した生活を手に入れている。
そのことに感慨深い思いでいる。
俺の「価値転換」能力は、もはや主たる収入源ではない。最大の成果は、能力に依存しない収益モデルを確立したことだ。投資先の事業は安定し、毎月一定の収入が入ってくる。まさにFIRE達成の証明だった。
幼少期、父の商売の失敗を目の当たりにした時には想像もできなかった未来。感情ではなく、冷静な計算と戦略的思考が、今の俺を作り上げたのだ。
「何を考えているのですか?」
ソフィアが訊ねる。
「ただ、今までの人生を振り返っていた」
彼女は微笑んだ。幼なじみであり、今は最も信頼できるパートナー。彼女の存在なしには、ここまで来られなかっただろう。
別荘の建設にも、彼女の助言は大きかった。
「レオン、単なる贅沢ではなく、未来への投資として考えましょう」と。その通りだ。
この別荘は、資産運用の一環。将来的な賃貸可能性、土地の価値上昇を見越した戦略的な選択。感情に流されず、常に冷静に判断する。それが俺のスタイルだ。
庭には果樹も植えた。リンゴの木、プラムの木。これらも将来的には収益源になり得る。何一つ無駄にしない。
「ソフィア、両親に会いに行かないか」
突然の言葉に、彼女は驚いたように瞬きをした。
恥ずかしそうに、俺は続けた。
「両親も、今の俺の姿を見て安心するだろう」
「ええ、ご両親はレオンのことを自慢の息子と思うでしょうね」
幼少期の没落から這い上がり、今や安定した生活を手に入れた。両親も喜んでくれるだろう。
コーヒーを啜りながら、俺は窓の外を眺める。街は平和で、商売は順調。魔獣との戦いで得た評判も、今では大きな資産となっている。
「次は何を企むのですか?」
ソフィアが笑いながら訊ねる。
「魔法研究所からの依頼を検討してみようかな」
「相変わらず、新しいチャンスを逃さない方ですね」
彼女の言葉に、俺は満足げに微笑んだ。
効率的に生きる。常に次の一手を考える。それが俺というものだ。
夢は、計画と努力によって実現する。俺はそれを身をもって証明してみせた。
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