02_08_『縛りプレイ』って言葉はエッチだと思います 上
***
【Side:レベッカ】
レベッカ=オルドデンドは、ギリっと奥歯を
かつてないほどの悔しさが、彼女の心を暗く濁した。
「おのれ、エレン=フィオネッタ。よくも、よくも、騎士の娘レベッカ=オルドデンドに向かって、『ちっちゃくて可愛い』だなどと……」
自分の
また同様に『可愛い』も、容姿の幼さを
「何が『つい』ですの! こうなったら、目にもの見せてあげるのですわ!」
レベッカは、たまたま見つけた用務員の倉庫に、たまたま空け放たれていた扉から入り込み、たまたま大量に置かれていたある物を拾って、再び走り出した。
「覚悟していただきますの、エレン=フィオネッタ!」
***
レベッカちゃんと別れた私は、ひとりで学園内を散策していました。
予定では、あと1時間後くらいに学園寮にて、寮生活を送るうえでの規則などを説明してくださると聞いています。
それまでに、学園の中を見回れるだけ見ておきたいのです。
「メイドたる者、主人の安全を常に考えておくのも大事なお仕事です」
もちろん、学園のセキュリティはしっかりしていますし、これを疑うつもりもありません。
でも、こういうのは自分の目で見ておくことが大切なのです。
いざってときに何もできないようなメイドは、お嬢様に仕える価値がありません。
「あ、まさにこういう森なんて、誰かが隠れるのにぴったりです」
歩いていると、木々がたくさん生えた場所を見つけました。
エリエステス学園の広い広い敷地の中には、森があったり小川が流れていたり、とっても緑が溢れているのです。
「ちょっと入ってみましょうか」
私は森に踏み入りました。
大きな木々の枝葉から注ぐ
自然との調和が考えられているのは、やっぱりいいことです。
ですが、木々が雑多に生えているせいで、ちょっと死角が多いようです。
万が一、お嬢様を狙う不届き者が隠れ潜んでいたりしたら、大変なことになってしまいます。
「遠くからでも見やすくなるよう、少し枝を落としてもいいかもしれませんね。後で学園側に確認を取ってみましょうか」
あ、今の私、すっごくお仕事できる感じじゃありませんでした?
「うんうん、メイドたる者。こうでなくっちゃいけません。いついかなるときでも油断せず、注意警戒を――」
カチッ!
「――かち?」
音は下から。
私の足、何かを踏んじゃったみたいです。
「えっと、これって――」
覗き込もうとした瞬間でした。
地面からロープが勢いよく飛び出してきて、私めがけて迫ってきました。
「ひゃあっ!?」
驚き
(罠!? なんで!? どうして学園の中に仕掛けてあるんですか!?)
あまりにびっくりしたせいか、私の思考はぐるぐる加速し、周囲の景色はスローモーション。
見れば、木の枝がいくつも不自然にしなっていて、そこに何本ものロープが結び付けられています。
ロープの先は地面に埋めて隠してあって、起動スイッチの仕掛けを踏ませることで、連鎖的に飛び出してくる仕組みだったみたいです。
(なんて
こう見えて、私は公爵家ご息女の側付きメイド。
だからこう見えて、実は身体能力が高いうえ、護身の
「これしきのトラップ、当たらなければどうということはありませんっ!」
さあ、見せてあげましょう。
私の華麗な回避性能とやらを。
私は機敏な足
「ひゃああ!?」
「ひいっ!?」
また避けて、
「きゃうん!?」
また躱して、
「ぴぃ!?」
……掛け声が情けないのは、ご
「って、一体何本あるんですかぁ!?」
まるで無尽蔵かと思うくらい、ロープは何本も何本も、
こんなの、いくらなんでも避けきれません。
「これじゃ、いつかは引っかかってしまいま……あっ!?」
それは、私には予期し得ない動き方でした。
高速で飛び交うロープ同士が、空中で複雑に引っかかり、不規則な軌道を描いたのです。
「こ、こんなのムリですうっ!」
避けきれず、1本のロープが私のお腹に巻き付きました。
それが、運の尽き。
私の動きが止まったのをいいことに、他のロープも次から次に、手に巻きついて、足に
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