第7話 新たな試練と雨の中の約束
和真と貴恵は、再び暗い過去の影に引き寄せられつつあった。田舎町での穏やかな日々も束の間、和真の手に入れた情報が、彼らを再び危険な世界に導いていた。
ある晩、和真は貴恵と静かな時間を過ごしていたが、急に外が暗くなり、冷たい雨が降り始めた。窓の外では、どこか遠くの雷鳴が響き渡る。和真は、かすかな不安を抱えながらも、貴恵に伝えなければならないことがあると決意を固めた。
「貴恵、これからのことを話したい」
貴恵は、和真の顔を見つめながら頷いた。彼女の顔に浮かぶのは、もちろん不安だが、それ以上に信じて支えたいという決意だった。
「もう一度、あの世界に戻るべきだと思う」和真の声は低く、決意が込められていた。「張の組織はまだ完全に壊滅していない。彼の影響力は、まだどこかで広がっている。放っておけば、また誰かが犠牲になる」
貴恵は、しばらく黙って和真を見つめていた。雨の音が静かに部屋に響き、二人の間にしばしの沈黙が流れる。
「どうしても、また行かなければならないの?」貴恵は静かに問うた。彼女の目には涙が溜まっていたが、それは不安の涙ではなく、和真を愛し、彼の決意を理解しようとする涙だった。
和真は深く息をつき、貴恵の手を取る。「君を危険な目に合わせたくない。でも、もしこれを放っておけば、僕たちの未来に影を落とし続ける。だから、君を守るためにも、もう一度戦わなければならないんだ」
外の雨が激しさを増していった。二人はその音を聞きながら、互いの手を強く握りしめていた。雨は、どこか運命のように、彼らの決意を試すかのように降り続けていた。
「和真、私は…」貴恵は少し言葉を詰まらせながらも、目をしっかりと和真に向けた。「あなたを信じる。だから、私はあなたと一緒に戦う」
その言葉に、和真は驚きと感動を覚えた。彼女がどれほどの覚悟を決めているのか、深く理解したからこそ、和真の心は強くなる。貴恵と一緒になら、どんな危険も乗り越えられると思った。
二人は、雨音に包まれながら静かに抱きしめ合った。その瞬間、世界が止まったかのように感じられた。どんなに厳しい戦いが待っていようとも、二人でいれば、きっと乗り越えられる――その確信が、和真の心にしっかりと刻まれた。
そして、次の日。和真と貴恵は、過去の仲間たちと連絡を取り、新たな計画を立てるために動き出した。再び、あの暗黒の世界に足を踏み入れる覚悟を決めた二人。だが、今回はただ一人ではない。お互いを支え合いながら、共に戦うことを誓ったのだった。
そして、再び雨が降り始める。二人の運命を試すように、降りしきる雨の中で、和真と貴恵は手を取り合いながら歩き出した。
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