第4話 推しと面接

がおかしい……。


「えーと……その何で先輩そんなキャラなんですか?」


「どうにかしてください、周馬さん!」


「もう少しだけ撫でさせて、お願い、ね!」


那海が信じられない行動をしているので、最初に周馬は頭を打ったような気持ちになる。


いつものクールな姿は可愛い物には弱いのかと思うと、可愛い一面を見れて嬉しさが込み上げて、見ていたいのだが花恋が困っているので助けることにした。


助ける前に、既に周馬の後ろに隠れて震えているので那海が少しヨダレを垂らしながら近ずいて来る。


「那海さん、花恋さんが怖がってるから辞めてあげた方がいいと思う」


「は!そうだわね、仕事しなくちゃ」


「そうですよ」


周馬がそう言うと、那海はダンボールを外に捨てに行く。

安心したのか、花恋はくっ付けてた体を周馬から離れてペコペコ頭を下げてくる。


子供っぽい彼女が平謝りを何回もしているところを見ると、違和感と言うか大人っぽく見え、笑ってしまいそうだ。


守ったんだ、これで少しは信用してもらえるだろうか、信用して貰えたらな嬉しいのだが。


周馬が考え込んでいたら、目の前から花恋が消えていて周りを見たら品出しをしていた。


(俺も変な事考える前に、仕事しなきゃな)


久しぶりの仕事だ、切り替えてしっかりと仕事をしようと思う。

一旦、周馬はレジに入って接客をすることにした。


早速客が来て、カゴを乗せてきたので見てみると最初の客が奈々だったので目を擦って、視界がぼやけながら視界が戻っていくのだが、そこに居たのは奈々に違いない。


「その反応は酷くない?」


「いや…久しぶりの客が奈々さんだとは思わなくて」


「もぉ〜そう言うとこだね、周馬くんは」


「そう言うとことは?」


「乙女の秘密です!」


何でそんなに拗ねているのか分からずに、カゴに入っている商品のバーコードを読み込む。


周馬は苦笑いしながら、「合計で2500円です、袋は入りますか?」と言うと奈々は「いる!」と強い声で返してくる。


袋に詰め終え、奈々に渡すと周馬の手から奪うように取り、ぷんぷんしながらコンビニを出ていく。


肩を少し落としながらため息をつくと、品出しをしている花恋がこちらを見ていたのだが、すぐに目を逸らして品出しほやって方を見る。


(何だ?何であんなに焦ってるんだ?)


夏終わりな今なんだが、このコンビニ内はとてもクーラーが効いていて暑くないのでそこまで汗をかくことは無い。

それに、花恋は今品出しをしているところはアイスクリームの所だ。


しかし、花恋の顔には汗が滲み出ており、周馬の顔を見ないように完全に顔を手で防御している。

後で聞いてみることにして、まず目の前にいる客のことを優先にした─────────。



「花恋さん、何か俺変なことしたか?」


品出しをしている花恋の肩を、触るとビクッとさせて周馬から離れていく。


(はぁ、これは面倒なことになったな)


那海に何とかしてもらうことも出来るのだが、あの人の事だまたデレデレして話にもならない。

それに、今那海はレジをしているので申し訳ないので、自分で解決する。


周馬が話そうとさっきのように近づいたのだが、距離を少しずつ離れていく。


正直な所、同い年の流行など分かるわけも無いので近づき方が周馬にとって詰みなのだ。


「少しでもいいから話を聞いてくれ!」


「……なんですか?」


「お、ようやく喋ってくれた」


「私をなんだと思ってるのですわ?」


?周馬は少し以外な語尾で、驚きながら話を続けることにした。


「さっき俺の顔を見て焦ってたけどどうしたんだ?」


「貴方じゃない…ですわ」


意外な回答だったのだが、自分じゃないのなら誰かと考えると、もしかして奈々に何かあるのだろうか。


奈々に何かあるとなるのなら、リアルかVTuberの方の美希の方なのか、どちらかしかない。


見た目の偏見で申し訳ないのだが、この美少女は多分リアルの方の南と友達になりたくて緊張している方だと思うのだが、この「ですわ」口調がどうしても聞いたことがあるような気がするのだ。

声質も近いので、その可能性も少なくは無い───。


「もしかして…俺が喋っていた女の子か?」


「そうですわ…」


「何か気になることでもあるのか?」


「それは貴方に言えないのですが…やはり世界は狭いですわね」


周馬自身も言えない事が沢山あるので、そこまでは聞かないのだが、何故か聞いてはいけないような感じなような気がする。


まぁとりあえず、そんなことを気にしている場合では無いのであと残り1時間バイトをしようと思う。



バイトも終え、コンビニでご飯を買って自分のマンションに帰ることにした。

2…ここまで来たんだ、しっかりと最後まで受けて合格しようと思う。


歩きながら頭でシュミレーションしていると、後ろから前みたいに何かつけられているような気がする。


(今度はなんだよ…これ多分奈々では無いな、誰だ?)


奈々とはまた違った雰囲気を醸し出していて、ソワソワするので走って逃げるようにマンションに入っていく。

自分の部屋番号を早く押して、エレベーターの自分の階をポチポチ連打して押す。


エレベーターの到着する音が鳴り、自分の部屋の鍵を財布から即座に出して、部屋の中に素早く入ることにした。


「はぁ、はぁ、何だよまじで」


周馬は、息を切らしながら振り返ると顔に柔らかいものが当たる。


「あん♡、周馬のえっち♡」


「あのなぁーー、なんでお前がいるんだよ!!!」


「そんな事言わないの♡」


そう言いながら、奈々が俺の顔を胸に埋めるように抱きしめるので周馬は顔を赤らめて怒るので奈々が微笑む。

何処から入ったんだ?鍵は閉まってるはずなんだが。


しかし、現在奈々の胸しか頭が追いつけないので、まずこの状態を何とかしなければいけない。


女性の胸は母親しか経験がないし、その上で推しにやられるとなると内心めちゃくちゃ嬉しいのだが、今はそれどころじゃないのだ。


「息できない、少し離れてくれ」


奈々は周馬の言葉を聞き、顔を離した。


「ごめんね、苦しかった?」


「それは否定しないが、一言言ってからにしてくれ」


「今日は遊びでやっただけだから、今後はやらないよ?もしかしてやって欲しいのかなぁ〜?」


周馬をからかうような顔で見る。


「そんな訳あるか!」


バイトで疲れていた周馬だが、さっきのストーカーみたいな事をされた後なので少し怒ってしまった。


もう胸のことはいいんだが、それより何で奈々が部屋の中にいるのかが意味がわからないし、その説明の方が今1番聞きたい。


居間に座らせて、質問することにした。


「まず聞きたいことがあるんだが、なんで俺の部屋に入ってるんだ?」


「私がコンビニにから帰ってきたら、少しドアが空いてたから鍵閉め忘れてるのかなと思って…」


「そこまではいいんだが…何で奈々さん、俺のパソコン触ってるんだよ」


奈々は、目を泳がせた後に舌を出して方目を閉じながら「ついやっちゃった」と言う。

少し間が空いた後に、周馬が奈々の頭にチョップする。


話は何となくわかったので、自分の部屋を守ってくれてたまではいいのだが、自分自身のパソコンを無言で喋るのは想定外だった。

強盗に入られていないから、そこは奈々に感謝をしようと思う。


「でも奈々さんありがとうね、家にいてくれて」


周馬は頭を抱えながら、微笑む。


「大丈夫だよ、パソコン触らせてもらったし!」


「はぁ、それしてなかったら完璧なんだけどな…」


まぁこの件はここまでにしておこう、今はとりあえず第2審査の事を考えることにしよう。


周馬はゲーミングチェアに座ってオンライン通話できるようにDoomの準備をしていると、玄関からガチャと音が聞こえた。


その音とともに、ポケットに入れていたスマホにメールが届く。


(何だろう…奈々からメールが来てるな)


Aineを開いてみると、奈々が『Doomに入るからパスワード教えて!』とメールが来たので、適当に設定したパスワード『14106』を教えた。


送った瞬間に『サンキュー』と美希スタンプが送られてきたのと同時に、Doomに入ってくる。


「声聞こえる?」


「聞こえてるぞ、何で入ってきたんだ?」


「前の練習の本番前のラスト練習をするために入ってきたよ、だから私を面接官だと思って話してね!」


最後までしっかりやってくれる、自分の推しの姿はとても輝いているように見えた。

こう言う所があるので、今日あったパソコンの件などが全て許せるような気持ちになる。


今日の6時から話し合いがあるので、それまでは練習できるので、あと3時間練習しようと思う。


「前やった事が、どれぐらい出来ているかまずテストするね☆」


「了解」


奈々がその言葉を聞いた後に、顔つきが真剣になる。


「まず、第1審査合格おめでとうございます」


「ありがとうございます」


「それならまず、私たちの事務所を選んだ理由を聞いてもよろしいでしょうか?」


選んだ理由は、『美希が推しなので入りました』と言いたいのだが、それをやってしまうと理由が簡単すぎて印象に残らないと前に奈々に怒られた。

なので周馬は自分の特技、自慢できることを話すことにしようと思う。


「この事務所では、サポートがとても充実しており自分のゲームスキルを上げること、コミニュケーション能力が上がると思いましてこの事務所を選びました」


「そうなんですね、貴方の送っていただいた動画を拝見させていたのですか、動画編集もイラスト等も素晴らしかったですよ」


「ありがとうございます」



あれから、色々な質問を対応して最後までやりきる事ができたので、Doom越しからパチパチと拍手の音が聞こえてくる。


「85点ぐらいだよ!良いねこの調子なら合格行けると思うよ!」


「それなら良かったぁ」


「でも、安心しきっちゃいけないよ?しっかりとやりきってね!じゃあと5分後本番だから頑張って、じゃ!」


そう一言言った後に、奈々がDoomから退室した。

周馬は遅れないように合格通知に書かれていたDoomの『2342』を打ち込んで入る。


少し早かったのか、誰も入っていなかったので少し安心したが冷たい汗を感じた。


画面もオフとミュートにして、服をしっかりとした清潔感のある服を着る。

服を着終えて、ゲーミングチェアに座ると丁度、男性1人と女性1人が入ってきたので深呼吸して時間が来るのを待つ。


ふとスマホを見ると、通知に『頑張ってね』と奈々から送られてきてるので落ち着きを取り戻した。


(ここ合格するぞ、美希と配信するんだろ)


相手が側の男性が、ミュートを外して話し始める。


「これから面接を始めますので、ミュートをオンにしてください」


「はじめまして、山田周馬と申します」


「丁寧なあいさつありがとうございます、どうもはじめまして今回面接担当をさせていただきます、山本律と申します」


面接が始まった…何だか緊張すると言うより、今の感情は自信に満ち溢れてる。


もう1人の30歳ぐらいの女性が見たことあるような顔をしているので、気につつ話をしようと思う。


「今回質問したいことが3つありまして、それを質問していただければ第2面接を終わります」


「分かりました」


「1つ目の質問は、なぜこのんですか?そのきっかけを教えて貰えると嬉しいです」


これは、さっきに練習したばっかの質問が来たので周馬は、安心しつつ真剣に話す。


「この事務所では、サポートがとても充実しており自分のゲームスキルを上げること、コミニュケーション能力が上がると思いましてこの事務所を選びました、きっかけとしてはVTuberと言う仕事を見ていて、救われた経験があったので次は私が色々な人に楽しんでもらえたいからです」


1つ目の質問から、練習した通りに言うことが出来たのでとりあえず安定した返しをできて、周馬は安心する。

次の質問が来るので、応答できるように身構えて待つ。


「そうなんですね、次に2つ目の質問で自分が炎上したらどうしますか?」


驚きを隠せない、なんだその質問は…『炎上したらどうする?』そんなこと質問されると思うわけが無い。


奈々と練習していた時は、結構真面目な練習をしていたのだがその質問は頭を殴られたような衝撃を感じる。


どうしようもないと思った周馬は、咄嗟にその質問に答えてしまった。


「私は炎上したら、何を言われてもリスナーに謝ります」


「お、そうなんですね…それなら最後の質問です」



「ありがとうございました、これで今回の質問を終わりますが最後に合格したら、サポートしてくれる方を紹介します」


「あ、はい!」


「はじめまして、南愛菜みなみあいなと申します、周馬さんのサポートをやらさせていただきます」


南愛菜?なんだか聞いたことある苗字なので周馬は、考えていたら思い出した。


(もしかして…!奈々のお母様!?)


さっきかは見た事があると思ったのは、やはり間違っていなかったようだ、この髪色とこの目の色、声質も少し似ている。

奈々の大人っぽくした感じ何だが、これはこれでまた良い。


「あとはイラストレーターなんですけど、合格した時に決めてもらいますので、その時にまた言います」


「了解しました」


「今回の第2審査を終わります、また1種間後に連絡が行くので待っててください、お疲れ様です」


「時間を割いていただきありがとうございました」


周馬が最後の挨拶をした時に、Doomから2人ともに抜ける。



一件落着し、疲れでソファーで寝てしまったらしいので起き上がろうとして身体を起こそうとすると、筋肉痛で節々がとてつもなく痛い。


身体はとても痛いのだが、学校に遅刻するのはとてもまずいので起きることにした。


(あれから……寝てしまったのか、昨日は色々とカオスすぎて頭が追いつかなかったからな)


那海がロリ好き、ですわ口調の美少女、奈々の母が俺のサポート役……こんなのカオスを極めている。


周馬自身でもなんで昨日、あそこまで普通に入れたのが疑問でならない。


この調子で夏休み以降も面倒なことに巻き込まれるのは、周馬としても勘弁だし、精神的にも心配だ。


「めんどくさいけど学校に行くか」


机に袋で置いてあったパンを1枚取りチーズを1枚上に乗せ、トースターに入れてパンを焼き、それと同時に制服に着替えようと思う。


ボタンを留めていると、机の上に置いてあったスマホに通知が来たのでスマホを確認するとメール先は…MIFAだった。


(何だ?なんの連絡何だろ?)


開いてみると、第2審査合格の報告だったのだが何かの間違いだと思い目を擦りながら見る。


間違いじゃないみたいだが、確か律が言ってたのは1週間後と言われた。


まぁ合格に変わりがない、朝からこんな嬉しいことがあるのなら今日もいい日になりそうだ。


時間を見ると、遅刻ギリギリの時間帯だったのでトースターからパンを取りだして、走って玄関から出る。


これが多分よく青春物語で見る『遅刻遅刻〜!』と言うヒロインのセリフを言うべきなのだが、隣がヒロイン級の可愛さで推し、周馬はそんなことを考えてる自分に嫌悪を感じながら自分の部屋ドアに鍵を閉めて学校に行くことにした。


「もしかして周馬くん、私の事を狙ってるのかな?」


「狙う訳ないだろ、偶然だ」


「素直じゃないからモテないんだよ?」


清々しい顔で奈々に向かって、周馬が「それで俺はいいんだ別に」と言う。


奈々を置いて、周馬は走ってその場を後にする───


学校に着いたのだが、奈々が授業中でも背中にちょっかいをかけてくるので、少しは我慢していたのだが3時間目の社会の時間に流石に頭に来たので後ろを振り返って話す。


授業も集中出来ないし、テスト前ということもあるのでやめて欲しい。


「奈々さんやめて欲しいんだが」


「昨日、あの後連絡くれなかった罰ね」


「テスト期間だから、流石にやめて欲しいかも」


それでもやめてくれなかったので「はぁ」と言いながら前を向く─────────。


昼休み、いつものベンチに向かったら先客がいたので屋上に行くことにした。


屋上はいつも人が多いのだが行ってみると、今日は何故か静かで誰もいないのでご飯を食べたあと少し寝ようと思う。


1年の時に、1度来た以来ここは人気だったので来るタイミングがなかった。


久しぶりの屋上なんだが、ここまで居心地がいい場所なんてそこまで無いので、もうひとつの休憩場所としてたまに使おう。


(飯も美味いし、このいい感じの暖かさは眠ってしまう……)


周馬は、ウトウトしながらご飯を食べているのだが何か嫌な予感を感じる。


「周馬くーーーーーん!!」


「うわぁぁぁぁ!急に耳元で名前を叫ぶな!鼓膜が壊れるかと思った」


「あはあは、今日も反応いいね!」


「まじで奈々さんは心臓に悪い…」


可愛いのだがこう言う所だけ嫌なんだよな、複雑な気持ちになるのでやめて欲しい。


次やらなければ許したいのだが、それを何回も繰り返しているのでそこまで行くと、もう言っても意味が無いのだと理解した。


とにかく多分いつも通りに、なにか気になることがあるので今日もいじりに来たのだろう。


予想はつく、どんな感じだったのかと成功したのかを聞きたいのだ。


そんなこと聞かれても、もう合格したのでそれを言って直ぐに終わらせることにする。


「それはそうとして、周馬くん第2審査どうだった?」


「えーと、何だが1週間後合格届け出すって言ってたんだけど、今日来て合格って言われた」


「…え?それ本当?」


「あーうん、これ見てよ」


スマホのメールから奈々に見せると、呆然とその合格通知を見ていた。


多分奈々もこんなに早く連絡が来ることに驚きを隠せないのだろうと周馬が考える。


「私、先輩にもこう言う話したんだけど…1週間前に通知が来た人、周馬くん君が初めてかも」


「え?まじで?」


「合格には変わりないから、次の第3審査に集中して頑張ってね!」


遅くも早くも合格は合格だ、次の第3審査に向けて頑張ろうと思う。


奈々は「私教室に戻るね!女友達にご飯一緒に食べよって言われてるから」と言いながら教室に戻っていく。


(奈々って友達いたっけ?)


まだ昼休みの時間が残っている。

屋上で、周馬は再度合格通知を見ながら寝転ぶ──────

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