学校1の美少女と同居することになった

だいふく

学校1の美少女との出会い

「如月さん、今日も可愛いなぁ〜」


まるでそこにアイドルでもいるかのような眼差しを向けながら、結人の親友である翔馬はそう言った。その眼差しの先にはクラスの友人との会話に花を咲かせている美少女、如月麗奈の姿があった。


「そうだな。」


そう呟きながら結人は今終わったばかりの数学の復習を進める。


「相変わらず、お前は興味なさげだな。」


そう言いながら翔馬は今もまだ彼女を視線で追っている。


「実際、興味がないからな。」


「えぇ…まじかよ。」


あんなに可愛くて、天使みたいなのに、と翔馬は言う。確かに、彼女は天使のような美貌に加え、成績優秀、スポーツ万能であるにも関わらず、謙虚でさらに温厚な性格で誰にでも平等に優しく接していることから1部の男子生徒からは天使と呼ばれていた。 実際、結人の目にも彼女は魅力的に映る。美しく、艶のあるロングの黒髪、少し幼さの残る顔立ちに、大きな瞳、長い睫毛、そんな人形のような美しさを持つ麗奈が魅力的に映らないわけがない。ただ、結人にとってはただの観賞用の美少女といった認識で、彼女に対して他の男子生徒のように恋愛感情があるわけではない。


「俺みたいな普通の生徒が関われる人じゃない。」


これまでも、これからも、彼女と関わることは一生ないだろう。

――そう思っていた。


とある日の帰り道、天気は生憎の雨で徒歩通学の結人は傘をさしながら自宅へと足を進めていた。そんな道中、結人は傘もささずにただ一人呆然としている麗奈を見つけた。学校から少し離れたところにある公園で彼女は微動だにせず、ただ雨に打たれていた。なぜ、そんなことをしているのかは分からないが、自分には関係のないことだと結人その場をあとにしようとした。しかし、その時に見えた自分が濡れることも気にせずにただ立ち尽くしているその姿は、どこか儚げで、今にも消えてしまいそうにも見えた。そんな様子の彼女を放っておくことはできず、気づけば結人は、彼女に近づいていて―


「こんな雨の中何してるんだ。」


そう、話しかけていた。


「久遠さん…」


急に話しかけられて少し驚いた様子で麗奈は結人のことを呼んだ。結人は自分が麗奈に認識されていることに驚いたが、その弱々しい声に、それどころではないとすぐに頭を切り替える。そして、バッグの中に入っていた予備の折りたたみ傘を取り出し、それを麗奈に放り投げた。


「ほら、傘。さして帰れよ。そのままじゃ風邪引くからな。」


なぜこんなところで一人呆然としていたのかは謎だが、それを詮索するほど野暮じゃない。傘は学校で返してもらえばいいか。そんな事を考えながら、帰るために足を早めようとした。しかし―


「ありがとうございます…久遠さん…でも、必要ありません。」


そう今にも泣き出しそうな顔で彼女はこう続けた。


「私の帰る家なんて…どこにも、ありませんから。」


その言葉に結人はただ呆然と立ち尽くしながら、


「――は?」


そう聞き返すしかなかった。


(帰る家が…ない?何を言っているんだ?)


そんな結人の混乱を察したのか麗奈はこう続けた。


「どうやら、私はいらない子らしいんです。」


自分の存在を全否定するような、そんな風に結人には見えた。


「なにを…言ってるんだ…?」


そんな信じられない言葉の数々に結人はただ呆然と聞いているしかなかった。


「私にも、何が起こっているのか…あまり、理解できていません…。」


彼女の弱々しい声が雨音にかき消されていく。そうして語っていくうちに少女の顔がどんどん暗くなっていく。


「ただ、私は、捨てられちゃったんです。」


「だから、私には…帰る家なんて、ないんです。」


まるで、この世のすべてを諦めたかのような、そんな表情で彼女はそう言った。


「これから、どう…するんだ…?」


ただの高校生が一度で聞くにはあまりにも情報量の多すぎる話の内容に、混乱しながらも、結人は尋ねた。

分かりません、と彼女は言う。


「どこか…行くあてがあるのか…?」


一縷の望みにかけ、そう尋ねる。すると彼女は、静かに首を横に振った。いったい、このあと彼女はどうするのだろうか。この雨の中でずっと一人で過ごすのだろうか?今にも凍えてしまいそうな、そんな夜の公園で?そんな事になったら、本当に彼女は死んでしまうかもしれない。なにより、今の彼女は平気でそれをやってしまうような危うさがあった。それだけは絶対に嫌だった。今までなんの関わりもないような赤の他人だが、そんな事になるのはなにより結人の良心が許さなかった。


(どうすれば彼女を助けられる?どうしたら…どうしたら…)


そう考えた結果、一つのアイデアが浮かんできた。


(…でも、いいのか?やめといたほうが…)


何度もそんな考えが頭をよぎる。だが、そんな迷えるほどの余裕は今はないと腹をくくる。


「…なら、俺の家に来るか…?」


そして、こう提案するのだった。


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