鏡越しの私と君
藍無
第1話 飛び降りる
私は、地上を見下ろした。
夜なのに街が明るい。
疲れちゃったな。全てが。
白いワンピースがふわふわと風にあおられてゆらぐ。
私は、かぶっていた帽子をぬいで屋上の冷たい床の上においた。
そして、はいていた少しおしゃれな赤いサンダルをぬいで、帽子の隣に置く。
そしてはだしになった私は、冷たい屋上の床の上を歩いて、一番端まで歩いていく。
街を行き交う楽しそうな人々、疲れたような表情をした人、様々な人が今日も街を歩いている。
私はそれを見て、にっこりと笑うと___飛び降りた。
音が、消えた。
スローモーションのように映像が動く。
ふわっ、とワンピースの裾が風で舞い上がる。
ここから、飛び降りて死ぬことが、私ができる、この社会への唯一の抵抗だ。
そう思いながら、私は目を閉じた。
そこで、私の意識は途絶えるはずだった。
そう、はずだったのだ。
次の瞬間、変な物体が視界の横から現れた。
そして、私を屋上へと持ち上げた。
私は気が付いたら、飛び降りる前の屋上の上に座っていた。
ほろり、と涙がこぼれおちる。
あのまま、おちなくてよかった。
怖かった。
なぜだかわからないけど、死ななかったことに安心した。
私の視界の横から来たあのへんな物体は何だったんだろうか?
そう思って、私はなぜだか空を見上げてしまった。
夜空には、星が輝いていた。
どんな日でも、空は綺麗だ。
なぜか体から力が抜けてしまった私はしばらくその場から動くことができなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます