第24話 「裏設定として輝夜さんが胸に注目してうおでっかって顔をしたのも原因としてあります」

 最低でも最寄りの駅……や、高校まで行きますからそこから一緒に! との言葉は「お友達の家に行くというのは行く方も道中が楽しいんだよ」との小鞠さんの言葉で取り消しされかけ「過程までも楽しいが本当の友達」と輝夜さんにも続けられたことで雲散霧消を果たした。


「ね、ねえ、彼方ちゃん……お出迎えするのに私服ってのはありえないんじゃないかな? 制服着たほうが良いんじゃない?」

「お姉ちゃん、自宅で制服っていうのはプレイの範疇だって、輝夜さんから借りたコミックに書いてあった」

「輝夜さんは彼方ちゃんにどんな漫画を貸しているんですかね!?」


 フリルの付いたブラウスに軽い素材を使ったストレートパンツとお休みの女子高生よりちょっと外出着しているけど、これからおわするは天下一品の美少女二人――制服での応対の方が良いんじゃないかと小心者の私はしどろもどろ。


 彼方ちゃんのカジュアルな白いシャツとハイウエストのカーゴパンツも都会を練り歩くに相応しい……や、お母さんに全任せにしてしまった手前「今の恰好が気に入らない!」とかそんなことはまったくなく、器量の悪い私をよくぞここまで着せ立てたものだと拍手喝采したいのは確か。


「遥、あなたは家にやって来た友達に対して一番失礼なことがなんなのか分かっていないわね」

「お、お母さん!」


 元タレント――それも美少女を売りにしていたのも手伝って、40近い年齢になってもなお多くの男性女性の視線を集めているのは、娘においても鼻が高い。


 まあその、二人で外出するのは年齢的にちょっと気恥ずかしい部分があるのと、私の方が年上じゃねって言われるのが怖くてなかなかなされてませんが……彼方ちゃんと一緒に歩いていると「姉妹!」との風評も聞かれるみたいだよ。

 シルクのブラウスにイージーパンツの出で立ちは、少なくとも普段の美魔女の噂も立てられるカジュアルさとは異なり、なんとなくお出かけ感漂う。


「それはね、相手に気を使わせること。二度と来たくないと思われてしまっては本末転倒よ。お父さんはキチンと外出させたわ」

「朝からお出かけしたのはゴルフ仲間との遠征じゃなくてお母さんの指令だったんだね! 後日ちゃんと謝っておきます!」


 女系家族なのとこのマイホームを建てるときにだいたいお母さんが金銭面で負担をしたのも手伝って、あまり発言権がないけれどもキッチリ毎月生活費を入れてくれるありがたいお父さんです――父の日には姉妹揃ってプレゼント等感謝の気持ちを送るけど「お前達は僕をATM扱いしなくていいなあ、知り合いが……」と絶妙にお通夜の雰囲気になったけども、まあそれはそれとして。


 ただでさえ普段から女率の高い我が家において青葉ヶ丘高校の二大美少女がやって来れば、少ない異性はさぞかし肩身は狭かろうし、何か間違って恋愛模様へと発展し家庭崩壊したらえらいことです。


 夫婦関係は極めて良好だと娘は察しているけども、美少女(私除く)に慣れているお父さんでも輝夜さんと小鞠さんは目に留まること間違いなし。


「あ、お姉ちゃん。近くまで来てるみたいだよ、ほら、リビングに入った入った」

「ええ!? ドアを開けたら三顧の礼が友人にする態度でしょ? その後に桃園の誓いでテストへの決意表明をして」

「三顧の礼だとこっちが敬われる側になっちゃうじゃない……」


 お母さんが冷静にツッコミを入れてくれたけども、彼方ちゃんの言うとおりドアの前でいかにも待ってましたとの態度を取れば相手は恐縮してしまうと。

 リビングには土曜の朝にやっている番組が放送されていて、見ても内容がまったく頭の中に入りやしません――暑がっていやしないか。第一声が「帰ろう?」だったりしないか……。


 来客者様向けのお布団などはキッチリ私が万全の調子を整えているけど……「私、実は竹の中でしか眠れないのよ」と輝夜さんに言われたらどうしよう――ゆめゆめ考えてみると、竹の中に入ってた人間って明らかに一般的な赤ちゃんよりも小さいんじゃないかな……だって500ミリのコカコーラ缶に赤ん坊が入ってるってことでしょ? すごいなかぐや姫、ヒートサーベルより驚異のジオンのメカニックだよ……や、グフのヒートロッドに比べればかぐや姫の方が劣るかな?


「あ、いらっしゃった!」


 インターホンと一緒に出て来た言葉が微妙に敬語じみていたので、玄関までの移動中に「普段通り普段通り」と口ずさみ、ドアを開くと基本的に制服(コスプレ姿は見たことがある)でしかお互いに出会わない二人の休日コーデを下から上まで眺めてしまった。


「輝夜さん下穿いてますか!?」

「え!? 何か間違ったかしら!?」

「だから隠すのはお尻だけにしろって言ったのに……」


 ビッグシルエットのシャツに黒のブーツに黒の靴下とモデルさんのような美しさを保ちつつ、スタイリッシュさもかね揃えたなんというか「美!」って感じなんだけども、シャツが太ももを隠しきっているので、ショーパンを穿いているのは推測できても「輝夜さんならパンツ(下着)でもスタイリッシュかも」と思……あ、これはさっきの彼方ちゃんの会話が尾を引いてるね。


「小鞠さんはファンシーなカーディガンが非常に乙女チックと申しますか、キャベツ畑から生まれたプリンセスの二つ名に恥じないと思う」

「また変なあだ名増えてる……」


 輝夜さんのファッションに関してちょっとお笑い要素を含んでしまったので、青葉ヶ丘高校の皆様のセンスをオチに使ってしまった。

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