第32話 ポーションサブスクリプション

 ここで今一度、ポーションという薬についておさらいしておこう。


 ポーションにいくつか等級があるのは既に知っていると思うが、その効果についてだ。



 ・粗悪なポーション……販売価格、銅貨十枚

 名前から役に立たないと思われがちだが、疲労回復効果を得ることができる。怪我の治療効果はほぼない。


 ・普通のポーション……販売価格、銀貨一枚

 疲労回復効果に加えて、打ち身や擦り傷といった軽傷を瞬く間に回復できる。


 ・上等なポーション……販売価格、銀貨五十枚

 普通のポーションの効果に加えて骨折、切り傷、裂傷といった医者の治療や入院が必要な重症まで瞬く間に直すことができる。


 ・最高級のポーション……販売価格、金貨十枚

 これまでのポーションの効果に加えて、致命傷となる大怪我や、部位欠損まで回復してくれる正に魔法の薬だ。



 一見すると万能薬ともいえるポーションだが、実はこの薬は外的要因の怪我を治す効果が主で、病気に対する効果は殆どない。

 病気にはまた別にポーションのような薬があるそうだが、今の俺に作る技術はないし、今回は必要ないので用意はしていない。



 全員に資料が行き渡ったのを確認した俺は、同じ資料へ目を落としながら説明を続ける。


「今回用意した主なプランは二つ、お得な価格で定期的にポーションを受け取れるものと、いざという時に備えてもらうものです」


 最初から複雑なプランを設定すると頭がパンクしてしまうと思うので、今回俺は可能な限り単純なプランを組んだ。


 暫定的に『お得なプランA』と『豪華なプランB』と名付けさせてもらって、中身は主にこんな感じだ。



 ・お得なプランA……月額価格、銀貨五枚

 デイリーで疲労回復効果のある粗悪なポーションを一本支給

 業務中の事故で怪我を負った場合、普通のポーションを月に三本まで無料支給、上等以上のポーションを、半額で購入できるように残りをこちらが負担する。

 追加サービスで一年以上の契約が続いた場合、いざという時に上等なポーションを一年につき一本、任意のタイミングで無料支給する。



 ・豪華なプランB……月額価格、金貨二枚

 デイリーで疲労回復効果のある粗悪なポーションを一本支給

 怪我をした場合、普通のポーションを上限なしで無料支給、月に四本まで他人に譲渡可能な上等なポーションを支給、そして最高級のポーションを金貨一枚で販売する。

 こちらのプランはミーヌ村限定の初回契約サービスで、契約時に最高級のポーションを一本、無料で支給する権利を譲渡。こちらは任意のタイミングで受け取ることができる。

 こちらも契約が一年以上続いた時に任意のタイミングで受け取れる上等なポーションを一本、無料で支給する。



 ・ポーションの提供は、粗悪に関しては毎日の定期便で配送、普通のポーションもある程度の本数は同時に持っていくので、必要に応じて申告してもらい本人に直接手渡しする。


 ・上等以上の等級のポーションに関しては、ミーヌ村に常駐している医者が必要と判断したら可及的速やかにクライスから支給する。


 ・これに関してはポーションに効果を維持する消費期限があるので迂闊に持ち出せないのと、万が一輸送中に瓶が割れてしまった時の責任問題を鑑みて、最速で提供できないことは了承してもらう。


 ・プランの変更は半年に一度行えるようにする。プランの変更を行うと、契約年数のカウントもリセットされる。


 ・契約の解除は任意で行うことができるが、一度解約すると一年間は再契約できない。


 ・最後に、情報の管理はギルド会員証で行い、不正や受け取り漏れがないように徹底する。


 ・全ての管理は俺の名の下、冒険者ギルドが責任をもって執り行う。



 鉱員の平均月収が金貨三枚弱とのことなので『豪華なプランB』はある程度の貯蓄がある者でないと入れなくなっている。


 だが、『お得なプランA』は、普段から疲労回復にと栄養ドリンク感覚で粗悪なポーションを飲んでいる者からすれば、追加で少し上乗せするだけで安心も買えるという価格設定になっている。


 この世界には保険サービスというものがないとのことなので、日常的に怪我をすることが多い人には安全を買うという意味でも、ポーションによる保険+サブスクリプションのサービスは、普段から怪我をすることが多い鉱員には刺さると思っている。


 まずはミーヌ村の鉱員たちを足掛かりに、ゆくゆくは冒険者たちの間にも広めていきたいと思っていた。


「できるだけ簡単に書いたつもりですが、わからないことがあれば遠慮なく申し出て下さい」

「では、遠慮なく質問させていただきます」


 俺が声をかけると、すかさずマイクさんが手を上げる。

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