第9話 光の行方

 ハルカとレイは、夜明けの廃墟を後にし、不自然な光の帯が浮かぶ方角へと向かっていた。朝の冷たい空気に包まれた荒野は静まり返り、足音だけが響いている。


「ハルカ、本当にあの光が行き先を示していると思うのか?」


 レイが前を歩きながら振り返った。


「確信はない。でも、あの光が何かを隠しているのは間違いないわ。」


 ハルカの声には迷いがあったが、その瞳には揺るぎない意志が宿っていた。彼女が手に持つ「プロジェクト・ニュードーン」の資料は、まだ解読しきれていない謎を多く抱えていた。


 ---


 二人は荒野を進み続け、昼過ぎには小さな集落の跡地にたどり着いた。人影のない静寂な場所だったが、建物の一部にはまだ電気が通じている様子があった。


「ここを拠点にしよう。少し休んでから資料を調べよう。」


 レイが周囲を警戒しながら言うと、ハルカは頷き、古びたカフェのような建物に足を踏み入れた。中には埃っぽい空気が漂っていたが、テーブルや椅子がそのまま残されていた。


「不思議ね。まるで時間が止まっているみたい。」


 ハルカが呟くと、レイは窓の外を見ながら言った。


「戦争が終わってから、こんな場所が増えたんだ。人が去った後、すべてが放置されたままなんだよ。」


 二人は机を片付け、資料を広げた。プロジェクト・ニュードーンの資料には、奇妙な数式や図形が並び、いくつかの場所が地図上に示されていた。


「この地点が次の手がかりになるかもしれない。」


 ハルカが地図を指差すと、レイは眉をひそめた。


「ここは…確か軍の施設があった場所だ。でも、今は廃墟のはずだ。」


「確かめてみる価値はあるわ。」


 ハルカが強い口調で言うと、レイは頷き、資料を片付けた。


 ---


 夕方になり、二人は再び歩き出した。集落を出る直前、カフェの隅に何かが光っているのをハルカが見つけた。


「ちょっと待って、何かある。」


 彼女が手に取ったのは、小さなペンダントだった。中央に青い石がはめ込まれ、不思議な模様が彫られている。


「それ、どこかで見たことがある。」


 レイが近づいて言った。


「この模様、ニュードーンのロゴに似ている気がする。」


「持っていこう。何かの手がかりになるかもしれない。」


 ペンダントをポケットにしまい、二人は再び光の帯を目指して歩き続けた。


 ---


 夜が更け、荒野の寒さが一層厳しくなる中、二人はようやく目指していた地点にたどり着いた。そこには、巨大なドーム状の建物がそびえ立っていた。ドームは薄い光を放ち、周囲には無数のセンサーが設置されている。


「こんな場所がまだ稼働しているなんて…」


 レイが驚きの声を上げた。


「ニュードーンの本拠地かもしれない。」


 ハルカは緊張した面持ちで言った。


 二人は慎重にセンサーの間を抜け、ドームの近くまで接近した。しかし、その瞬間、鋭い音とともに警報が鳴り響いた。


「侵入者を確認。排除する。」


 機械的な声が響き、無数のドローンが空中に現れた。


「走れ!」


 レイが叫び、二人は全力でその場を離れた。しかし、ドローンの追跡は容赦なく続き、ハルカの足元に一発の光弾が炸裂した。


「ハルカ!」


 レイが駆け寄り、ハルカを抱き起こした。彼女は足を負傷していたが、必死に立ち上がろうとする。


「まだ…逃げられる。」


 その言葉にレイは歯を食いしばり、彼女を支えながら走り続けた。追撃を振り切り、ようやく森の中に逃げ込むことができた。


 ---


 森の中で息を整えながら、二人はペンダントを再び手に取った。青い石が微かに光を放っている。


「これ…ただの装飾品じゃないかもしれない。」


 ハルカが呟くと、ペンダントから微かな音が聞こえた。レイが耳を傾けると、それは人の声のようだった。


「これは…通信装置だ。」


 レイが驚いて言った。


「でも、誰が私たちにこんなものを?」


 ハルカが不思議そうに聞くと、ペンダントの声が次第にはっきりしてきた。


「聞こえますか?私はニュードーンの内部者です。あなたたちに協力したい。」


 その言葉に、二人は目を見合わせた。希望と不安が交錯する中、ハルカとレイはペンダントの声に耳を傾けることを決めた。


「どうやら、次の展開が始まるみたいね。」


 ハルカの言葉に、レイも深く頷いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る