第14話 美雨さんは熱暴走の反省をしたい【R-15、文字数多め】

 ☆哀川美雨あいかわみうView☆


 勝手知ったる他人の浴室。

 小さなクリーム色の浴槽に浸かり。


「ふうぅ〜・・」


 アタシは息をついて、密度の高かった元日の・・・ついさっきの「〆の出来事」を思い返していた。


「何か・・色々ありすぎてキャパオーバーもいいとこよね・・」


 初詣で、二人の誓いを立てて。

 小桜さんと一悶着あって。

 一緒におせちを食べて。

 エクスポージャーな触れ合いをして。

 桐崎さんが、悪びれもせずに『乱入』して、それで・・・


「あの時は、ついアタシも煽っちゃったけど。

 高価なノーパソを破壊させちゃったのは・・・うん、流石に反省だわ・・・」


 あの後の事を、ちょっとまとめてみよう。

 ーーー…★

 ぶっ壊れたPCの液晶部は、後日「メーカーの回収サービス」に回すため、一緒に片付けた。


 結局、あのハンマーで壊したのは、「液晶ディスプレイ」の部分。

 キーボードとHDDは、叩かれてはいないけど、無傷ともいえない。

 HDDに残存したデータ(復元ツールも使用)については後日、専門の業者に頼んで、「予備の旧型パソコン」に、移し替えてもらう予定だとか。


 親しき中にも礼儀あり。

 イイトコを邪魔されて、プライバシーの侵害までされて。

 技術が善意であろうと・・結果を導くのは、使い手の心次第。


 破壊行為はスッキリしたけど。「お互い熱くなって、後の考えが甘かったね」「ゆにちゃんの冷静さを、少しは見習わなきゃね」と、苦笑しながらの反省会だった。


 桐崎さんとは後日、また別に話し合いを開く予定。

 音也くん、桐崎さん、桐崎のご両親(アパートの所有者で、暫定の遺産管理人)。

 場合によっては、アタシも出なくちゃね。


 だって、アタシたち二人の「未来」がかかってるんだもの。

 そりゃあ、若気の至りみたいな部分もあるけど、この想いは理屈じゃない。

 その上でアタシたちはもっと、シビアな現実に立ち向かう必要があるだろう。


 それでも! 音也くんには「夏恋の助けは借りない」という信念と。

「夏恋の留学を邪魔して、申し訳ない」の負い目もある。

 今すぐは無理でも、目的意識を持って変えていけばいい。

 アタシも・・・実母との確執、美晴ちゃんの問題などは、決して一朝一夕ではないから。


 でも、どんな問題と向き合うときも。

 喜びや悲しみを分け合うことも。

 ずっと、音也くんと二人がいい! ここは揺るがない。

 一番大事なものを見据えて、覚悟を決めて進む・・・その為の「神前の誓い」だったのだから。

 ーーー…★


「まだ、問題は山積みだけど。

 今は・・・うう。さっきまでの余韻で、中途半端に火照ってるんだから。」


 エクスポージャー計画。その場の勢いも借りて、色々としちゃったなあ。

 一応、予定通りの事は出来たし・・・音也くんの欲望が出来なかったのは、残念だったけど。


「初めて・・・触っちゃった。布1枚越しでも、ビクビクしてるの・・分かっちゃた・・」


 アタシは毒親たちの影響で「人を愛する自信がない」状態だったから、彼氏がいたこともなく、告白も断ってきた。

 正真正銘、彼が初めての男性ひと


「あんな太いのが・・は、入るのかな? でも、最後までは(まだ)しないから・・・」


 まずは段階を踏んで・・お互いのカラダに慣れていかないとね。

 音也くん、華奢に見えても、やっぱりアタシとは違ったもの。

 あの逞しい肌をもっと見て、もっと触れてみたい。


「おっきい砲身・・・彼も言っていたけど、色々な触れ方があるのよね。

 音也くんの望みなら、頑張って挑戦したいな・・アブ過ぎるのはヤだけど。」


 口は・・・ハードル高いなあ。もうちょっと慣れてからかな。

 手は、もう触れちゃったし。直に見るのは、まだだけど。

 足。音也くん、好きそうかも。「こっちから攻撃する!」って感じもするし。

 防御側じゃアタシが不利だし・・・うん、次は足の練習をしよっかな。


 「何か最近・・ばかり考えてる。ああもう、ムズムズするっ・・・」


 愛しい彼と、肌も露わに交じり合う・・そんな妄想が止まらなくて。

 気づけば私は湯船から上がり、最も敏感なを、自分から摘んで。


 「ーーーっ!! 音也くん・・・・♡ んん・・・・ッ・・ふっう・・・・!

 音也くん、好きぃ♡・・・お願い・・・・っ!!」


 曲短刀ククリの鞘を外し、お湯ではない専用オイルをすくい取り、磨く。

 聖剣エクスカリバーの鞘、その入口と内部にも、潤滑を染ませるように。

 いつか、それを迎え入れる事を想像して。声を殺して、ただただメンテに耽った。


 そこから私が上げた呻きの数々は、とても筆では書き表せない。

 小さな電流が、頭の中で弾ける。チカチカ明滅するのにも、慣れてきた感じ。

 それは、彼と初めて添い寝をしたあの日から、身についた感覚。


 もし、二人一緒だったら。一体、どこまで高く飛べるのかな・・・・

 ーーー…★


 ☆春木音也はるきおとやView☆


 所用で浴室の近くを通りかかった俺は、興奮と同時に、軽く後悔する事になった。


(こ、この声は・・もしかしなくてもアレだよな・・・!)


 美雨さんの事は、今まで何度も泊めてきたけど。

 こんな声は聞いたこともない。

 しかも、俺の名前まで呼んでくれて・・・嬉しい。でも・・・


(ああもう、鎮まれ聖剣! さっきまでといい、生殺しもいいとこだあぁーーっ!!)


 いけないと分かっていても、数分だけ聞き耳を立ててしまう。

 くっ、我慢が効かない。俺も、同じようにすべきか迷うが・・・


(っ!! そろそろ風呂から上がりそうな気配。こっそり退くべし!)


 なんて、また逃げてしまうのだった。

 ・・・あと、どうしようこれ。

 ええい、仕方ない。トイレに行って、してくるか・・・はぁ。


 ーーその後。美雨さんと、寝る場所について相談をしたら。


「今日は色々ありすぎたし・・訓練はまた次でいいよね。

 別々に寝ようか。」

(うう、一回だけじゃ駄目だったか。でも我慢できずに、美雨さんに狼藉を働くよりはっ・・・)


「う・・うん。異論はないわ。でも、次は(添い寝)お願い、ね・・」

(あうう、さっきまでのソロ戦闘の余韻で、音也くんの顔を見れないよお・・・)


 なんて、お互いにドギマギしたまま・・自室と客間に分散したのだった。

 ーーー…★


「むにゃむにゃ・・・すぅ・・」


 ・・・で。何で俺達は、一緒に寝てるんだろうか。

 今日は色々と密度が濃かったせいか、俺は眠れなくて。

 美雨さんもどうやら、同じ気持ちだったらしくて。


『やっぱり、今日は音也くんと一緒がいいわ。弱い女でゴメンね・・・』


 なんて不安そうな顔でせがまれたら、とても断れない。

 彼女は、俺の匂いと肌触りを感じて、無事に寝付いたけど。


(これ・・どうしようマジで。)


 美雨さん、何も言わなかったけど。バレてたよな、多分。

 もう一回トイレに行くにせよ・・ガッチリしがみついてるし、引き剥がすのも気が引ける。

 そうして悶々としていると。


(ーーっ!! に、握られ・・美雨さん、もしかして起きてるっ!?)


「んむぅ。だって、さっきからガチガチが当たってたら・・流石に気になるでしょ?

 でも・・ちょうど良かったかも。

 さっきは桐崎さんに邪魔されたけど、の練習、したいなって。」


 うう、そんな掴んだままでを取られたら、断れないってば。

 薄暗く、ぼんやりした間接照明の中で。

 俺はそのまま観念して、美雨さんに委ねることにしたーー

 ーーー…★


 その後、電気をつけた部屋で。


「ふう・・・掃除は、これで全部っぽいね。地味に疲れた・・・」

「あうぅ・・・避けちゃってごめんなさい。顔面ブロックで止めれば良かったのかな。

 でも、あんなに勢いとか、飛距離があるとは思わなくて・・」


 モジモジ恥じらいながら、そんな事言わないで!

 ああもう、砲撃の後なのに、余計な想像しちゃうじゃん・・顔面ブロックの。

 でも美雨さんにブロックさせた事で「風呂の入り直し」をさせるのも、気が引けるんだよな。


 ああ、とうとう。なし崩し的に美雨さんの指で、砲撃訓練をしてもらった。

 興味深そうにあちこち見て、触れて、握って、嗅いで。

 弾薬庫を「ゴリッ」とされた時は、激痛で死にかけたけど・・・うん、まあ。

「解放された」って感じが、メッチャする。何せ、初めての事だったから。


「床とか、染みになったらゴメンね。くんくん・・まだ、匂いが残ってるみたい・・」


 や、止めてくれ! 流石に俺が赤面するって!

 消臭スプレーをかけて、お互いに片付け・手洗い・消灯からの・・・

 もっかい添い寝・・・っと。

 気がついたら、もう日付は変わり、元日も終わっていた。


「恥ずかしいよりかは、照れくさいかな。

 でも、何とか出来て良かったわ。

 

 これから、するべき事は多いし。

 もっと二人で、したい事もあるんだからね・・・

 叡智なのも、それ以外も。」


 俺も同じ気持ちだよ。

 とにかくここから、飛躍の年にしなくちゃな。


 「さっきは、いっぱい飛ばしたから・・あれよりも飛翔とばなきゃ・・ね。」


 美雨さん、それオヤジギャグだから!

 まあ、こんなにカオス過ぎる正月は初めてだけど・・・

 悪くなんてない。初めて、心から好きな相手と過ごした正月は。


「アタシ達、いつの間にか名前呼びになっちゃったね。

 それじゃ音也くん・・・改めて。

 今年もヨロシク、ね♡」


 俺も「美雨さん、こちらこそ」と答えて。

 布団の中で、手を重ね合う。

 そして、心地よい疲れとともに、暖かな微睡みの中へと。


 そんな今年の始まり。

 やがて三が日が過ぎ去り。

 冬休みの、最終日を迎えるーーー

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