第3話 ホワイト騎士団への入団が決まりました
咳払いひとつ。
「王女様。どうして俺なんかを騎士団に?」
「あなたの剣術は素晴らしいものでした」
王女様は事務室をぐるっと見た。
今からこの職場について話すのだろうということは何となくわかる。
「このような、と言えば失礼かもしれませんがこんな場所で腐らせるのは勿体ないと思ったのです。ぜひとも国のため、王家のために尽くしてみませんか?もちろん待遇は保証します」
誘いはありがいんだが……。
正直断りてぇぇぇぇ。
いろいろと理由はある。
第一に天光騎士団なんて入ると責任がチョー重い。
当然の話だが王家の命を預かっているようなものだし、王家の剣とまで言われているような騎士団。
失敗は許されない。どんな高難易度の依頼だろうと仕事だろうと完璧に遂行する必要がある。
第二、おそらくサボれない。
給料はいいだろうけど、死ぬほど激務になることが予想される。
そんなこと俺の豆腐メンタルでは耐えられない。
(いつものように下水でサボりたい。俺は下級国民でいたいだけなんだぁぁぁあぁぁ!!!)
このままここにいればサボり放題。
なのに、王城なんて行ってしまえば俺の快適サボりライフが終わる。
(いやだ。行きたくない。死んでも行きたくない。頼む、この薄汚い仕事を死ぬまでやらせてくれ、な?な?頼むっ!それが俺の身の丈に合った生活だろ?)
俺はそう思いながら王女様に目を向けた。
すると、何を勘違いしたのだろう?
こんなことを言い出す。
「私の目はたしかです。ぜひとも天光騎士団へ来てください」
断りたい。
けど断れば反逆罪とか言われそうで難しい。
(俺からは断りづらい。そうだ。リーダーに頼もう)
リーダーに目を向ける。
リーダーも俺を見ていた。
頼む。
『こいつはダメなやつだ。とてもじゃないが天光騎士団なんかじゃ通用しない。辞めておいてください』
とか言ってくれぇぇぇぇぇぇ!!!!
ってか言うだろこいつ。
俺だけが天光騎士団に誘われたのを嫉妬して全力で邪魔してくるはずだ。お前はそういうやつだろ!
俺の期待の眼差し。
やがて、リーダーが俺の期待を受けて口を開く。
「王女様。こいつはダメなやつです」
キター!!!
そうだ。そのまま断ってくれ!
俺なんかには荷が重いってお前の口から説明してくれ!
「アルバさんはダメなのですか?王国内でもかなりの腕をお持ちだと思いますが、今の天光騎士団のメンバーを引き合いに出しても遅れは取らないかと」
「はい。ダメなやつです」
よし。
このまま流れそうだな。
よしよし、ナイス!クソ上司!たまには役に立つじゃねぇか!
このまま俺とこの職場で死ぬまで一緒だもんな!
頼むぜ!相棒!
「しかし」
リーダーは力強く王女を見つめていた。
ん?ひょっとして流れ変わりそうか?
まさか、そんなことないよねー?
「こいつはダメなやつです。しかし、よろしくお願いします」
リーダーがすっと頭を下げた。
(はぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁぁ?!!!!ここにきてまさかの裏切りだと?!!!)
「な、何言ってんだよ!リーダー!」
急いで掴みかかる。
「俺なんかが天光騎士団でやっていけるわけないじゃないか!」
「やっていけるかやっていけないかが重要なのではない」
「はぁ?」
「お前が天光騎士団に入団する。やってみることだ。それが大事なのだ」
「なにそれっぽいこと言ってんだよ!俺なんかがやれるわけないだろ?!俺だぞ?!」
「こんな機会二度とないんだぞ?アルバ」
「なくていいんだよ。俺にはここがお似合いだ!」
「行ってこい!アルバ!」
満面の笑み。
そっと俺の背中を押してくる。
(ここに俺の味方はいないのか……?敵しかいないですねぇ)
自然と俺の体は1歩王女様の前へ出る。
「アルバさん、あなたは天光騎士団に来たくないのですか?ひょっとして私の推薦を蹴るのですか?」
「うぐっ……」
「私はあなたのような凄腕の騎士に王家や国を守って欲しいと思っているのですが。あなたは私を守ってくれないのですか?」
「ぬっ……」
「その腕前。ぜひとも私のお傍でお使いください」
否定の言葉が吐けない。
王家の言葉なんて否定できるわけがない。
無理です!なんて言える勇気は俺には無い……。
俺にそんな勇気や度胸があれば、初めからこんなところで仕事なんてしてないだろう……。
(オワタ。もう諦めよう)
「わ、」
「わ?」
「わかりました……。このアルバ。お力になれるかは分かりませんが、騎士団の末席に加わりたいとそう思っています」
「ありがとうございます。その言葉を待っていました」
こうして。
この日を最後に俺の快適さぼりライフは終わりを告げるのだった。
それにしてもこれからは天光騎士団所属かー。
死ぬほど嫌だなー?!
どれだけの責任を負わされるのか。
考えただけで胃がいたいいたいなのだった。
(責任とか重くなるの嫌なんだけどなぁ)
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