低賃金でブラックな底辺衛兵のおっさん俺、知らずに王女様を助けてしまいSSSランク超絶ホワイト騎士団にぶち込まれる~俺はブラック職場にいたいだけなんだが、なぜかホワイト騎士団で立場が盤石になってしまう

にこん

第1話 ある日少女を助ける

「武器の手入れヨシっ!」

「「「よし」」」


そんな言葉で衛兵である俺の一日は始まる。


異世界アルカディアにあるガレムディア王国の隅っこで俺は息をしてる。

俺には前世があった。

普通の日本人だった。

前世ではきつくてきたなくて危険な、いわゆる3kの仕事をやってた。

プルーカラーってやつ。

何の因果か分からないけど異世界に転生しても似たようなブルーカラーの仕事をやってた。

それが衛兵。


衛兵は汚いしきついし危険な仕事だ。

街の治安を守るために働くから盗賊団の相手したり、モンスターの群れから街を守ったりすることも当然あるわけ。

中には死亡事故なんかもあったり後遺症の残る怪我を負ったりするやつもいる。


誰もやりたがらない仕事ほどなぜか賃金が低い。これは異世界でも同じ。

おかげさまで俺の月給9万ゼニー。

これは1ヶ月なんとか呼吸をする権利が買えるくらいの金額。


たまに思う。

(俺、働くために生きてるのかなー)


「おいっ!アルバ!」


鋭い声が飛んできた。

リーダーの声だった。


「今仕事以外のことを考えたな?!」


「いえ、考えてませんよ。もちろん仕事のしか考えてません(にっこり)」


「そうか?!なら今俺が何を喋ったのか言ってみろ」


「ヨシですよね?」


「ヴァッカモン!そのあとに何を言ったかだ」


(なんか言ってたのか?)


知らんけど。

衛兵ってのは毎日同じ作業の繰り返し。

正直こいつの話なんて聞いてない。聞かなくても仕事ができるから。


いつも今日の晩飯どうしよーかなーとか色々考えてる。

それでも話を聞いてほしけりゃ賃金上げろ。分かったな?


「だいたいなぁ、アルバ。お前はこの仕事が市民の安全をだなぁ」


始まった。

いつものお説教タイム。

ノーセンキュー。ノータイムで拒絶。俺は聞かない。


はいはいと頷きながらのらりくらりと躱す。


「それからな、今朝王城から王女様が消えていたようなのだ。我々の業務にはなんの関係もないと思うが、気に止めておけ」


(はいはい)


今のセリフも右から左に流した。

もちろん、覚える必要がないからである。


こんな言葉一から10まで覚えてたら脳のメモリがいくらあっても足りないってもんだ。

だってそうだろ?


王女様と俺みたいなモブ衛兵のなにが関係あるんだって話だし。

王女様がひとりふたり消えたところで俺の人生にはなんの影響もない。


気にするだけ無駄。


「よし、では各自巡回に迎え」


「「「はい」」」


このあと俺たちは点検表と無線をもって事務所を後にする。

周りの奴らはぞろぞろと出ていく。


(さて俺も行くか)


外に出ようとしたその時。


「アルバ」

「まだなんかあるんですか?」

「最近たるんどるぞ。なんだ?その爆発頭は、寝癖くらい直してこい」

「イカスでしょ?」


なんて軽口を言ってから俺は本命の言葉を返した。


「ご安心を。髪型がたるんでようと仕事にはいっさい影響はありませんのでー」


「だがなぁ、我々は市民の〔うんたらかんたら〕」


そこでリーダーは思い出したように話題を変えた。


「ところでアルバ。そろそろCルートくらいの巡回行ってみないか?」


俺たちの仕事は規定の巡回ルートを歩くだけのもの。

そのルートだが一応EからAの難易度がある。

俺は今Dランクを担当している。


要はより難しいところに行けということだが、誰が好き好んで難しいとこ行くよ。給料変わらんし。


「うっす。本日もDルートの巡回いってきまーす」


強引に話を切り上げて事務所の扉を開ける。

そして、外へ出ていく。


「シャバの空気はうめぇなー」


そんなことを呟きながら道を歩いてると……前から3匹のガキ共が走ってきた。


「うわっ!臭っ!ドブみたいな匂いする!」

「衛兵なんてなりたくねーwwwww」


俺の横を通り過ぎていくガキ3匹。1匹は何も言ってこなかったけど。


まぁ、周りからの衛兵のイメージなんてこんなもん。

ガキにすら舐められる仕事。


(ったく、誰のおかげでお前ら安心して生活出来てると思ってんだよ)


とかボヤきながら俺はマンホールの方に向かってった。

マンホールの下は下水道に繋がってる。


生活して出した汚水とか汚物とかまぁ、いろんなものが集まる場所。

そして、それらを餌にするモンスターとかが発生するわけ。


俺の主な仕事は下水道で発生したモンスターの駆除になる。


「さて、始めますか」


マンホールの蓋を開けて飛び降りる。


下までだいたい50メートルくらいある。


昇降用のハシゴはあるけど使わない。

使ってたら仕事が終わらんから。


下水道に着地。


いつものように巡回を始めた。


「異常なし」

「異常なし」

「異常あるけど、なし」


点検表にチェックを入れながら巡回していく。


今やってるのは午前中の巡回。午後にも巡回があるから、異常があっても俺は対処しない。

午後の奴が対処するはずだから。

仕事なんてそんなもんでいいよ。俺がやらなくても他の誰かがやるから。


必死に頑張っても低賃金の給料変わらないし。


「全部異常なしにしたから時間余ったな。ちょっと休憩するか」


下水道の脇に座り込んだ。

ててて、となにかが走る足音がする。

俺の横にネズミがいた。


「いよーっ!アルバ!」


「よっす」


「今日もサボりか?」


「ばか、休憩中と言え。休憩も立派な仕事だ」


「それはそうとだな。アルバ。向こうで人間の女の子を見かけたけど、お前ら衛兵以外の人間ってここに入れるんだなー」


「いや、俺ら以外入れないけど」


答えてから気付く。


(あっ、やべぇかも)


物事にはやべぇ度というものが存在する。

例えばさっき俺がさらっと異常なし認定したやつはぶっちゃけどうでもいい物事だから異常なしにしたのだが、人関が関わる問題になるとそうはいかない。

やべぇ度が爆上がり。

流石に対応しないといけなくなる。


(仕事しないといけないかもな)


だが、念のために聞いておこう。

まだサボれ……(げふんげふん)休憩できる可能性もある。

それが俺の巡回ルート外に女の子がいる場合である。

その場合は何があっても俺の責任ではなくなる。


「その子がいたのどのあたり?」


「この道を数分まーっすぐいったところだ」


数分……となると、俺の巡回ルートから離れた場所では無い。

ということは


「はぁ(クソデカため息)案内してくれるか?俺の管轄だ」


「こっちだ」


ててて、と走っていくネズミ。


(面倒なことにはなりませんように)


神に祈りながらネズミについて走っていった。


ネズミに案内された先では女の子が座り込んでいた。


「迷いましたわ」


なんてことを俯いて呟いてたけど、俺が来たことに気付き顔を上げる。


「あなたは?」


「衛兵だ。こんなところでなにしてる?」


「迷ってしまいましてね」


「今から巡回を終えて帰るところだ。一緒に来い」


「いやですわ(つーん)」


「はぁ?こんな汚いところに居座りたいのか?」


「そうではありませんけど」


「どうでもいいがここは危険だ。ここにいられちゃ俺が困るんだよ」


その時だった。


俺の無線が音を鳴らす。


『警告!警告!下水道にてデスアリゲーターの発生を確認!討伐難易度Aランクの危険モンスターにつき、職員は即撤退せよっ!』


『了解』

『はい』


無線から職員の声が聞こえた、その時


「ゴァァァアァァァァァアァァ!!!!!」


俺たちの視線の先からバカでかいワニが下水に乗って流れてきていた。


「ったく、次から次に仕事が湧いて出てくるな。仕事が無限に湧き出る温泉かってーの」


「どうするんですの?」


「見りゃ分かるだろ。戦うんだよ」


「戦う?!討伐難易度Aって聞こえましたけど?!それにあなた寝癖もすごくてたるんでるように見えて頼りなさそうですけど?!」


ザバサバと音を鳴らしながら迫り来るデスアリゲーター。

もう俺たちの距離は30メートルくらいまで迫っていた。


「目をつぶっときな嬢ちゃん」


「え?」


「グロ中尉だ」


俺は剣を引き抜いた。

そして、そのまま一閃。


「……」


断末魔を上げる余裕すら与えなかった。

デスアリゲーターは真っ二つに別れてその場に倒れた。


「す、すごい……」


女の子はそう呟いていた。


「髪がたるんでいても、我が剣はたるまず」


なんてな。

ガラでもないけど。


「かっこいいですぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」


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2024年12月28日 21:15

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