第9夜 【戦後80年を考える①】ポツダム宣言の口語訳

⭐︎令和7年4月10日(木) 雷雨あり⭐︎


 今回は、戦後80年企画の第1回。

 

 連合国が日本に対して突きつけた、降伏勧告である、「ポツダム宣言」の口語訳を作成してみた。

 

 周知の通り、日本は、ポツダム宣言を受諾したことで、敗戦国としての道のりを歩むことが決定づけられた。

 そのことから、ポツダム宣言を、戦後日本の原点の如く捉える人も少なくないと聞く。


 しかし、その割には、宣言の中身を読んだことのある人は、決して多くはないように感じられる。

 

 その理由の一つとして、一般的な史料集に載っている日本語訳が、文語体であることが挙げられるのではないだろうか。


 現在、一般的に用いられている訳文は、当時の外務省が翻訳したものである。

 当時の我が国では、公的資料は文語体で執筆することが一般的であったため、ポツダム宣言の訳文も文語体で作成された。


 戦後、とりわけ日本国憲法制定後は、公的私的問わず、文語体を用いることは、ほとんどなくなったため、現在の日本人の大半にとって、文語体は馴染みが薄いのである。


 そこで、今回。


 一応社会科の教員免許を持つ私、笹原九郎が、その乏しい知識をフルに活用して、外務省作成の「ポツダム宣言」日本語訳を、口語訳に変換してみた。


 あくまで素人の作ったものなので、正確性は保障できないが、先の大戦の一端を知り、考える上での参考としてご利用頂ければ幸いである。



***外務省公定訳***


千九百四十五年七月二十六日

米、英、支三国宣言

(千九百四十五年七月二十六日「ポツダム」ニ於テ)


一、吾等合衆国大統領、中華民国政府主席及「グレート・ブリテン」国総理大臣ハ吾等ノ数億ノ国民ヲ代表シ協議ノ上日本国ニ対シ今次ノ戦争ヲ終結スルノ機会ヲ与フルコトニ意見一致セリ


二、合衆国、英帝国及中華民国ノ巨大ナル陸、海、空軍ハ西方ヨリ自国ノ陸軍及空軍ニ依ル数倍ノ増強ヲ受ケ日本国ニ対シ最後的打撃ヲ加フルノ態勢ヲ整ヘタリ右軍事力ハ日本国カ抵抗ヲ終止スルニ至ル迄同国ニ対シ戦争ヲ遂行スルノ一切ノ連合国ノ決意ニ依リ支持セラレ且鼓舞セラレ居ルモノナリ


三、蹶起セル世界ノ自由ナル人民ノ力ニ対スル「ドイツ」国ノ無益且無意義ナル抵抗ノ結果ハ日本国国民ニ対スル先例ヲ極メテ明白ニ示スモノナリ現在日本国ニ対シ集結シツツアル力ハ抵抗スル「ナチス」ニ対シ適用セラレタル場合ニ於テ全「ドイツ」国人民ノ土地、産業及生活様式ヲ必然的ニ荒廃ニ帰セシメタル力ニ比シ測リ知レサル程更ニ強大ナルモノナリ吾等ノ決意ニ支持セラルル吾等ノ軍事力ノ最高度ノ使用ハ日本国軍隊ノ不可避且完全ナル壊滅ヲ意味スヘク又同様必然的ニ日本国本土ノ完全ナル破壊ヲ意味スヘシ


四、無分別ナル打算ニ依リ日本帝国ヲ滅亡ノ淵ニ陥レタル我儘ナル軍国主義的助言者ニ依リ日本国カ引続キ統御セラルヘキカ又ハ理性ノ経路ヲ日本国カ履ムヘキカヲ日本国カ決意スヘキ時期ハ到来セリ


五、吾等ノ条件ハ左ノ如シ

吾等ハ右条件ヨリ離脱スルコトナカルヘシ右ニ代ル条件存在セス吾等ハ遅延ヲ認ムルヲ得ス


六、吾等ハ無責任ナル軍国主義カ世界ヨリ駆逐セラルルニ至ル迄ハ平和、安全及正義ノ新秩序カ生シ得サルコトヲ主張スルモノナルヲ以テ日本国国民ヲ欺瞞シ之ヲシテ世界征服ノ挙ニ出ツルノ過誤ヲ犯サシメタル者ノ権力及勢力ハ永久ニ除去セラレサルヘカラス


七、右ノ如キ新秩序カ建設セラレ且日本国ノ戦争遂行能力カ破砕セラレタルコトノ確証アルニ至ルマテハ聯合国ノ指定スヘキ日本国領域内ノ諸地点ハ吾等ノ茲ニ指示スル基本的目的ノ達成ヲ確保スルタメ占領セラルヘシ


八、「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルヘク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ


九、日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルヘシ


十、吾等ハ日本人ヲ民族トシテ奴隷化セントシ又ハ国民トシテ滅亡セシメントスルノ意図ヲ有スルモノニ非サルモ吾等ノ俘虜ヲ虐待セル者ヲ含ム一切ノ戦争犯罪人ニ対シテハ厳重ナル処罰加ヘラルヘシ日本国政府ハ日本国国民ノ間ニ於ケル民主主義的傾向ノ復活強化ニ対スル一切ノ障礙ヲ除去スヘシ言論、宗教及思想ノ自由並ニ基本的人権ノ尊重ハ確立セラルヘシ


十一、日本国ハ其ノ経済ヲ支持シ且公正ナル実物賠償ノ取立ヲ可能ナラシムルカ如キ産業ヲ維持スルコトヲ許サルヘシ但シ日本国ヲシテ戦争ノ為再軍備ヲ為スコトヲ得シムルカ如キ産業ハ此ノ限ニ在ラス右目的ノ為原料ノ入手(其ノ支配トハ之ヲ区別ス)ヲ許可サルヘシ日本国ハ将来世界貿易関係ヘノ参加ヲ許サルヘシ


十二、前記諸目的カ達成セラレ且日本国国民ノ自由ニ表明セル意思ニ従ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府カ樹立セラルルニ於テハ聯合国ノ占領軍ハ直ニ日本国ヨリ撤収セラルヘシ


十三、吾等ハ日本国政府カ直ニ全日本国軍隊ノ無条件降伏ヲ宣言シ且右行動ニ於ケル同政府ノ誠意ニ付適当且充分ナル保障ヲ提供センコトヲ同政府ニ対シ要求ス右以外ノ日本国ノ選択ハ迅速且完全ナル壊滅アルノミトス



***口語訳***


1945年7月26日

米、英、中三国宣言

(1945年7月26日ポツダムにおいて)


一、我らアメリカ合衆国大統領、中華民国政府主席及び「グレート・ブリテン及び北アイルランド連合王国」総理大臣は、我らの数億の国民を代表し協議した結果、日本国に対し今次の戦争を終結する機会を与えるということで意見が一致した。


二、アメリカ合衆国、イギリス帝国及び中華民国ノ巨大な陸、海、空軍は西方より自国の陸軍及び空軍による数倍の増強を受け、日本国に対し最後の打撃を加える態勢を整えた。右軍事力は、日本国が抵抗を終止するまで同国に対し戦争を遂行するという、一切の連合国の決意により支持され且つ鼓舞されているものである。


三、蹶起した、世界の自由な人民の力に対する「ドイツ」国の無益且つ無意義な抵抗の結果は、日本国国民に対する先例を、極めて明白に示すものである。現在日本国に対し集結しつつある力は、抵抗する「ナチス」に対し適用された場合において、全「ドイツ」国人民の土地、産業及び生活様式を必然的に荒廃させた力に比べて、測リ知れぬ程更に強大なものである。我らの決意に支持された、吾等の軍事力の最高度の使用は、日本国軍隊の不可避且つ完全な壊滅を意味し、また、同様必然的に、日本国本土の完全な破壊を意味する。


四、無分別な打算により日本帝国を滅亡の淵に陥れたわがままな軍国主義的助言者により、日本国が引き続き統御されるべきか、または、理性の経路を日本国が歩むべきかを日本国が決意すべき時期は到来した。


五、我らの条件は左の通りである。

我らは、この条件より離脱することはない。右に代わる条件存在しない。我らは、遅延を認めない。


六、我らは、無責任な軍国主義が世界より駆逐されるまでは、平和、安全及び正義の新秩序が実現し得ないであろうことを主張するものである。よって、日本国国民を欺瞞し、世界征服に突き進むという過ちを犯させた者の権力及び勢力は、永久に除去されなければならない。


七、右に示した新秩序が建設され、且つ日本国の戦争遂行能力が破砕されたという確証が得られるまでは、連合国の指定する日本国領域内の諸地点は、我らがここに指示する基本的目的の達成を確保するため、連合国による占領を受けるものとする。


八、「カイロ」宣言の条項は履行されるべきであり、また、日本国の主権は本州、北海道、九州及ひ四国並びに我らの決定する諸小島に局限される。


九、日本国軍隊の将兵は、完全に武装を解除された後、各自の家庭に復帰し、平和的且つ生産的な生活を営む機会を与えられる。


十、我らは、日本人を民族として奴隷化しようとし、または、国民として滅亡させようとする意図を有しているわけではないが、我らの俘虜を虐待した者を含む一切の戦争犯罪人に対しては、厳重な処罰を加える必要があるとの認識である。日本国政府は、日本国国民の間における民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障壁を除去しなければならない。言論、宗教及び思想の自由並びに基本的人権の尊重は、確立されなければならない。


十一、日本国は、その経済を支え、且つ公正な実物賠償の取り立てを可能とすることに資する産業を維持することを許される。但し、日本国が戦争のために再軍備を為すことを可能にするような産業は、この限りではない。右に示した目的のため、原料の入手(支配、という意味ではない)を許可される。日本国は将来的に、世界貿易関係への参加を許される。


十二、前記の諸目的が達成され、且つ日本国国民の自由に表明する意思に従い、平和的傾向を有し且つ責任ある政府が樹立されれば、連合国の占領軍は、直ちに日本国より撤収される。


十三、我らは、日本国政府が直ちに全日本国軍隊の無条件降伏を宣言し、且つ右行動における同政府の誠意につき、適当且つ充分な保障を提供することを、同政府に対し要求する。右に示したもの以外の日本国の選択は、迅速且つ完全な壊滅を招くのみである。



***参加URL(外務省公定訳の出典)***


国立国会図書館「電子展示会『日本国憲法の誕生』」

https://www.ndl.go.jp/constitution/etc/j06.html

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