第11話 うきうき武器選び
コロネにアクセサリーを作ってもらっている間、手持ち無沙汰な時間を過ごすのもなんなので、外に繰り出して武器をそろえることにした。
今日ギルドですれ違った冒険者たちも思い思いの装備で着飾っていた。いよいよ自分もその仲間入りができるとなるとテンションが上がってくる。
そして、武器屋までの道中はいつものことながら女神様とのおしゃべりタイム。
「また貴方はああやって人をからかって、行く先々で被害者を増やさないでください」
「そんな人を通り魔みたいに。おれだって後々のことを考えてますよ」
「行き当たりばったりにしか見えてません」
「そう見せておいて実は緻密な計画が裏に隠れている、行き当たりはったりです。騙されましたね女神様」
「はっ倒しますよ」
女神様、物騒です。
「魔法を使えると嘯いている眼鏡の少年ってな〜んだ?」
「いきなりなぞなぞみたいに言わないでください。嫌な予感だけはします」
「正解はハッタリーポッタリーです」
「後半なんか水滴落としました?雨漏りしてますけど」
「ばあちゃんのポッタリーポッタリー焼き」
「見るからにタレに浸かりすぎてそうですね」
パッケージのやわらかく微笑むおばあちゃんの額には稲妻の形をした傷が。呪いの子と言われ続け、御年82歳。
「そんなわけでやっと武器買えますよ、女神様」
「一流の鍛冶師にアクセサリーだけ頼んで武器頼まないのはなんなんですか」
「いっぺんに頼みすぎるのも迷惑かなと。優先順位がありますから」
「その気遣いの数パーセントを私にも分けてほしいです」
いつ何時もおしゃべりに付き合わされている女神様の嘆きが漏れる。
女神様には申し訳ないが、今は高揚感が勝っていた。武器を手に入れるというのはそれだけビッグイベントなのだ。
「これで冒険者の仲間入り、いつでも臨戦態勢になっちゃうわけです」
「貴方は武器持つ前から戦ってました、素手で」
「防具をつければ魔物の攻撃も何のその、いちいちビクビク怯えなくて済みますね」
「貴方は防具着る前から自ら当たりに行ってました、生身で」
「ここから冒険が始まります」
「はい、楽しみですね」
こちらのテンションになんだかんだで波長を合わせてくれる女神様。こういうところが本当に優しい。
そうこうしているうちに見えてきた武器屋に目標を定め、足を踏み入れる。
入口の重い扉を押し開けるとすぐに武器屋特有の金属の匂いが迎えてくれる。店内には所狭しと多種多様な武器が並んでいて目移りしてしまいそうだ。
「一口に武器と言っても、めちゃくちゃ種類があるんですね」
「剣に、斧に、鞭に、杖。槍や弓もありますね」
「涙に、愛嬌に、嘘」
「そんな女の武器みたいなのは陳列されてません」
「こういうのは自分に合うものを選ぶのが大事ですから。下手なの買ってから後悔するより聞きましょう」
武器選びの初心者は大人しく専門家に聞いておくのが一番だ。
品出しをする武器屋の店員に声をかける。武器でも手前どりとかの概念はあるのだろうか、錆びちゃうかもだし。
「すみません、はじめての武器を買いたいのですが何がいいのか皆目見当つかず」
「はじめての武器悩みますよねー。ジョブによって武器への適性が異なるのでそれを参考にされるのもいいかもしれませんよ。例えば剣士なら剣といったように。適性に合った武器を装備すると能力が上昇したりと冒険が楽になること間違いなしです」
「適正な適性の武器を選べよとそういうことですか。それはいい判断基準になりそうですね」
自分にぴったりの武器を選ぶだなんて、なんだか無性にわくわくしてきた。
「えーとお客様のジョブは、失礼して。……あー、平民なので適性武器はありませんね」
「ん……?」
「どれつけても一緒です。選び放題ですね、いらっしゃいませー」
告げられたのはなんともドライな結論だった。グッバイ判断基準。
店員も気まずさに耐えられなかったのか、敵前逃亡とばかりにすたすた去っていってしまう。
「今道標を失ったグレーテルの気分です」
「小石にしておきなさいとあれほど」
「グレーテルとブルーギルって兄弟ですかね」
「そんな生臭い相方でしたっけ。灰テルと青ギルに確かに縁は感じますが」
「色を冠すると戦隊モノ感があってかっこよさ増しますよね、ブラックタイガーとか」
「それはヒーローというか、虎の威を借る海老ですね」
「ホッコクアカエビ羨んでましたよ」
「あっちは甘エビとして子どもたちに人気を馳せていますから」
「女神様、今日は武器を決めにきたんですよ」
「本題から逸れたのは貴方です」
女神様の冷静なツッコミが耳に刺さる。槍かと思った。
改めて店内に並ぶ武器たちに向き直る。こういうのは自分の目で見て決めることに意味があるのだ。
「エビのように曲がったこのブーメランにしましょうか」
「エビ引きずるんですか。曲線がたとえ海老に類似していたところで全く強そうな感じはしませんけど」
「海老反りって言いながら海老とは逆の方向に反らせるのなかなかに騙し討ちで好きです」
「海老反りは実質シャチホコの状態ですからね」
「海の老人、長寿を願う縁起物とされる海老を食すことでその海老の残りの生涯を奪いとってしまうノスタルジーを感じざるを得ないです」
「武器屋でどんな感傷に浸っているんですか。ほらまた寄り道する前に選びますよ」
呆れまじりの声で優しくツッコミを入れられた。なんだかんだ言っても女神様の軌道修正に支えられている。
悩みながらも店内を見回していると、至極スタンダードな武器が目に入る。
「剣ですかね、冒険といえば剣、主人公といえば剣、そんな有無を言わさぬ、他を寄せつけぬ説得力があります」
「そんなに剣好きなら最初のスキル剣にしておけば良かったでしょう」
「まあまあその選択をしていたらこんなおしゃべりもできなかったわけですから」
「武器選びに付き合わされる女神の図もなかったでしょうね、複雑な思いです。まあ剣ならリーチはありますし、攻撃力も申し分ないかと」
「もしくはタルコンガでしょうか」
「貴方は波乱を一つは持ってこないと気が済まないんですか。ここ武器屋で合ってますよね、リサイクルショップじゃないですよね?」
「豊富な品揃えですね」
「そもそも、それは武器なんですか」
「叩いてビートで攻撃するのではないかと」
「太鼓叩いてるその手で敵を叩きにいきなさい」
「そこは音楽にしかない魅力が、ね?」
「同意を求めないでください」
その後も様々な武器を手に取ってみては、女神様にツッコミを受けて却下されるといった流れを繰り返し、結局比較的安価の初心者向けと思われる剣を購入することにした。
よく分からない段階で初めから高いものに手を出して後悔したくないという小心者な買い物だった。
戦闘で試していく中で追々ブラッシュアップしていけばいいだろうという答えを先送りにした形である。
新品の剣を腰に携える。ちょっとは冒険者っぽく見えているんじゃなかろうか。
しかしこの剣が後にあんなことになるとは、このときはまだ思いもしなかった。
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