クッキーリレー

玄瀬れい

第1話(著:音羽鈴心)

「……できた」



やっと……やっと、完成したこのクッキー。味見をしてみたけど……なんとか、うまくいったなあ。


料理が全くできない私が、クッキーを作り始めて三ヶ月で、納得の行く出来に。本当に、大変だった……。毎日、家帰ってから作ってたからねえ……。



「朱里(あかり)、今日忙しくて……外食でも大丈夫ー?」



「うん、大丈夫だよ! あ、私、クッキー作ってみたの!」



「クッキー?」



胡散臭げにこちらを見る母。まあ、それもそうか。だって、私は料理が全くできないのだから。



「とりあえず食べてみてっ」



催促すると、少し悩んで、でも、やっと食べようとしたその時ーーー。



「朱里ー、準備できた? 行こっ」



……やってきたお姉ちゃんの言葉で、お母さんの手が止まった。確か、外食先の近くにお姉ちゃんが行きたいお店があるとか言ってたから、待ちきれなくて催促したのかな?


……でも、ごめん!



「ちょっとだけ待って〜! クッキー作ったからさ……お姉ちゃんにも、食べてみてほしい」



「ええ? 朱里って料理できたっけ……?」



「できないよ」



ここは即答。事実そうだし。


でも、お姉ちゃんが経営している喫茶店で、私のクッキーを売ってほしくて、一生懸命試行錯誤を重ねて、作ったの。


お姉ちゃんに……ずっと、昔から、憧れてたんだよ。



「……わかった」



いい匂いに連れられたのか、はたまた私の想いが通じたのか、それからはすぐに口に運んだ二人。



「……っ、え。美味しい」



そう零したのは、料理上手なお姉ちゃん。



「ね。普通に売れるんじゃない?」



……え!? 本当に……?!



「うん……ねえ、朱里。


私のお店で、朱里のクッキーを売りたい」



……ぇ。そんなの……、



「……いい、の?」



「うん、もちろん」




───こうして、私、宮地 朱里(みやち あかり)は、



憧れの、お姉ちゃんのお店『喫茶 ルミエール』で、



クッキーを売り始めることになりましたっ!




【クッキー作ろうとしたら世界中で人気になりました。】

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