第5話図書室での不貞行為
「センパーイ! おっきしてくださーい!」
わざと無視して目を瞑ったままでいると、スタスタと足音が徐々に近づいてくる。
「先輩♡ あそこはちゃんとおっきしてるんですね♡」
モゾモゾと下半身から聞こえる音に、俺は布団を剥ぐって日波を見つけ出す。
「おい日波、何やってやがる」
「ああもう、いい所だったのに」
俺の布団に潜り込んでいた日波が何かをおっ始めようとしたところで、間一髪で俺の手がズボンに伸びていた日波の腕を掴んだ。
センシティブなのはダメ! 絶対!
少なくとも今はまだダメだ。
ちなみに俺のあそこは断じて立ってはいない。
「どうです? やっぱり童貞の先輩には刺激が強かったですか?w」
「バカなこと言ってないでさっさと下いくぞ」
「……はーい、ちぇ」
眠い目を擦りながら俺たちは朝の支度を始める。
その間にも着替えを覗こうとする日波と一悶着あったのだが、俺は日波にくっつかれながら学校に登校した。
「先輩は今日も朝早くから勉強ですか」
「昨日はあんまり進めなかったからな」
昨日はあの後、四宮との話が弾みすぎてつい話し込んでしまい、あまり勉強が進まなかったからな。
昨日の遅れを取り戻すためにも、こいつを相手にしている時間は毛頭ない。
「むぅ〜、そんなに勉強ばっかやって。そんなんだから彼女の一人もできないんですよ」
「それとこれとは関係ないだろ」
それにお前も彼氏できたことないじゃん、とも言おうと思ったが、その場合は日波がキレ散らかすと思うので言葉にはしない。
「そんなんだと、一生童貞のまんまですよ」
「……」
こればっかりは聞き捨てならない。
俺が無言の圧をかけると怯えた日波が苦し紛れの言葉を紡ぐ。
「な、なんですか。ぼ、暴力は反対ですよ」
「それはお前、昔の約束を忘れたってことで解釈していいんだな?」
その言葉にハッとした様子の日波は頬を赤らめて、妙に密着度を上げてくる。
「そ、そうでしたね。(覚えててくれたんだ♡)」
たく、本当にこいつは……昔俺があんなに熱く語ったことを忘れているだなんて。
それは日波が俺のことを初めて童貞でいじった時のこと。
俺はその時、俺はちさみんを推し続けるから童貞のままでもいいという誓いを建てた。
ちなみにちさみんというのはアイドルVtuberのことで俺は今でもその子を押し続けている。
あの日の誓いを守る為、童貞のままなんて些細なことは気にしはしない!
「それじゃあ、今日は朝勉強したし、放課後は残らなくて大丈夫ですね!」
「いや、これは昨日進めなかった分をやっているだけで、今日の分は放課後残ってやるから今日も居残りだな」
えぇーとテンションが下がる日波の顔をモニュモニュとマッサージしながら、今日は勉強を進めていった。
そして授業も進み、放課後の時間。
俺はいつも通り図書室に入って勉強を始めた。
「これがこうで、あれがそれで……」
今日の宿題に集中していると不意に誰かの手で視界が塞がれる。
「だーれだ?」
「……四宮、会うたびにおふざけをするのはやめてくれ」
もう少し悩んでくれないと面白みに欠ける、と文句を言いながら俺の胸を可愛らしく殴ってくる。
「あっ! ちょっと待って、翔也君髪にホコリが……」
「えっ何処だ——」
そう言っている間にも四宮は背伸びをしながら俺の頭に触ってホコリを取ろうとしてくれる。
ありがたいんだけど、こうも密着されると少しドキッてするんだよな。
「あっほら、取れて——ってキャアァ!」
と思っていたら四宮は悲鳴を上げながら抱きついてきた。
「ちょを……」
そのまま俺たちは倒れ込むと、まるで四宮に押し倒されたような体勢なる。
「いっつつ、どうしたんだ? 四宮」
「く、蜘蛛がくっついてて」
どうやら蜘蛛にびっくりして俺に抱きついてしまったらしい。
しかしこれがあまり人気がない図書室だから良かったものの、もし誰かに見られていたら——
そう思って周りを見渡した時、窓の方に……日波が走っていく姿が見えた。
心なしか窓に水滴が付いているようだ。
まさか、あいつ……。
「ごめん、また後で——」
「えっ!? ちょ、ちょっと待って——」
俺はそのまま勉強道具をほったらかしにして彼女を追いかける。
まだそんなに遠くには行っていないはず、だとするとあいつがいるとしたら……うん、あそこだな。
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