第三話 戦 

「重い、何なんだ」明らかに体が重かった、反応に体がついていかない、わかっていても避けられない、なにかなにかが違う「今回は私情を抜きにして貴女を殺します」そう言った彼女の言葉がリフレインした、一瞬で距離を詰められる、最大出力で電撃を巡らせ傷を庇いつつ避ける、目線を合わせ起死回生の一手に出る、庇っていた傷を抑えていた左手を刀を握ることにシフトする、グッと握りつぶすくらいの強さで、メモリーに語りかける「もっと力を」バチッヂヂッバチッン電撃は龍の形を形成し「龍迅雷」一気に駆けた、届いた、ギリッギリッと相手を追い詰める、ジジッと刀のこすれ合う音と火花を散らす「ここまでとは」また赤黒いオーラを漏らす、「だが、ゔッ」力ではじき出され、あのときのように喘ぐ名月さんが見えた「龍様」オーラは引っ込み構えを直した、上を取り体制を立て直す、やはりまだ体が重い、しかもさっきよりも重いような気もする「よっしやってみるか」弱い電波を周囲にばら撒いた、まず名月さんが引っかかる、次に美咲希、白﨑ちゃん?と天秤のイメージが生成された「そこか」f-91教室の内部から天秤のイメージを感じ取り、電波を"紐"として電撃を流した「私に死角はないよ名月さん」「名前覚えていらしたとは」「卑怯な手を使ったことは、お詫び申し上げます、ですが」二刀流の構えだ「勝たねばならんのです」天秤のやつは右側の皿に重しを乗せた、その瞬間から私の体が重くなる「やっぱりか卑怯な」「これからフェアになりますよ」ドドドッ一気にガトリングを放った音が聞こえた後に重火器を連射する音が聞えた、対するは刀を突地に突き立て力を込め赤色のオーラで壁を形成した「弾幕はなかなかです」白い煙から声が聞える「ですが甘いですね」「防がれた」「美咲希ちゃんなんでッ」「貴女は後です、まずは蘭月さんから」「美咲希ちゃん逃げッ」重い体を何とか起こし異次元の速さに何とか追いつく「逃げるなんて出来ないよ」美咲希の声だ「一番の友達が戦っているのに、命かけてるのに」止めてくれ「私だけ見物なんて」逃げてくれ「出来るわけ無いじゃん」美咲希はガトリングを捨て、ワンアイスコープを下ろし、ロングレンジライフルを形成する「ロックしなきゃ玲奈もう少しだけ頑張って」また重くなった、ただの袈裟斬りでさえ致命傷になりかねない斬撃が溢れるように繰り出される、そんな中一瞬隙が生まれた、まるでどうぞ打ってくださいと好機を逃すかと電撃を巡らしそのまま切り抜く名月さんはバックし距離を取る、なら逆に詰めてと足を運ぶ、重心が狂いグラッと体がふらつく、そこへふらつく方向とは反対方向に飛び回し蹴りを撃ち込む「ガハッ」仰向けに倒れ込む形で落ち着いた「玲奈ちゃんあと少しでチャージが」「みっともないお姿ですね」「アハッ負けかな」「死を意味するのは知っていますね」「嫌負けてねぇな、この状態から勝てる手段私にはあるぜ」「ほざくな」声のトーンを一つ落した「利き手は」「右だけど」グサッと遠慮なく左肩に刀を突き立てた「ゔッあ゛ッい゛ッ」「問います、龍様に忠誠を誓いますか」「誰があんなに胡散臭い奴に」「胡散臭いですか」更に力を強め傷を深める「ゔッア゛ア゛ア゛ッ」「龍様は未来を見ています、時代を進めているのです、それには多少なりロスやリスクもあります、それを胡散臭いというのですか」「そんなの知らねぇよゔッ」「もう良いです、さようなら楽しかったです」バッンッ、空を切る火薬の音と弾が射出された「んっ」刀にをかけていた手をスマートに撃ち抜いた「グッゔッ」ギュツと力を込め止血した「少しの延命です、先に死にたいですか」(次重くなるタイミングは)刀で空を斬り衝撃波で銃を破壊し詰め寄る「おい」ふり返る「私と決着つけてからにしろ」二刀流を構える「私も全力だ」バチッヂヂッ再び電撃を纏わせる「当然」赤黒いオーラを滾らせ一気に決める構えに出る、痛みは感じなかったアドレナリンの出すぎだろうか、どちらにしても咲音さんにお小事を言われるだろう、もうやつさえ殺れれば「真・龍迅雷」「現の虚骸」拮抗している、その余波が美咲希の方まで来る「うわっ」二人のオーラがぶつかり合う「今だっ」また一段重くなる、重さの影響を受けたのは深月だった、今まで感じたことの無い重みズシンと体に来る「これまさか」逆に利用されたと感じた。

「痛てて」と体をさすりながら起き上がる、目に映るのは天と地を分かすかのような勢いで競っている二人と傍観する白﨑さんともう一人、怪しげな仮面を付けた人が天秤片手に傍観していた所々焦げ付いているまるで過剰に電力を供給したコンセントみたいに、チャージをしていて気づかなかったがこの人が戦闘に関与していることは間違いない、おそらく玲奈は電気属性相手には電気で焦げた跡がある仕留めきれなかったのか、距離はわりかし近いが仕方がない反動を気にせずエネルギー弾を発射したドシュと重めの音と共に天秤の人の半身を消し飛ばしたそのリアリティのあるグロテスクな断面に深い恐怖感を抱いたそれは動かなかった横倒れのままピクリとも「えっと大丈夫ですかあのー」返事はない、そもそもこれは人なのかどうかすら分からないきっと仮想の敵なのだろうと結論付けそれから離れる「んっ軽い」深月の斬影は三日月を描き彼女を斬った、ドサッと肉の落ちる音がする、恐らくは防御姿勢も取れなかったのだろう「終わりですね」「どぉぉぉり゛ゃゃゃゃゃー」今までに感じたことのない電撃の力を肌身で感じる、火事場の馬鹿力というやつだろうか「ならば私も」

「撃ったんだ」動かなくなった天秤を見て白﨑さんが言った「いや敵でしょなら私悪いことはしてないし」「まぁ死んでは無いけどね、ペンを抜けば火傷で済むよあれなら」「死なないんだ」「いや体へのダメージが軽減されるってだけで死なないわけではないよ、例えば首飛んだら普通に死ぬ」白﨑さんは首を指でなぞり親指を下に向けた「あれって人間なの」「そうよしかも知っている人」「誰?」顔に付いていた仮面を剥ぎ取りペン状に戻す「岸宮先生」一瞬で分かった、ムクッと先生が起き上がろうとした気付けば吹き飛んだ半身は何故か元通りになっており指先に軽い火傷のようなものが見えるだけでその他に損傷は無い「なにが起きてるの」

 赤黒いオーラが迫るそれを切り裂くように山吹色のインパクトが名月さんめがけて放たれる「ゔッアッッ無駄です」オーラの勢いが増す「まだだッまだまだ」「いえ、無駄だァァァァァァァァァァァ」徐々に山吹色のオーラが小さくなり赤黒いオーラがそれを飲み込むその残滓を残しながら佇む名月深月と地をえぐり壁にめり込む蘭月玲奈だ「決したなア゛ッ」全身を切り刻まれ引きちぎられ串刺しにされるようなイメージが脳内を駆け巡り、体が耐えきれず強制シャットダウンしてしまった。「潮時ですね」その髪を靡かせ岸宮先生の前でパチンと指を鳴らすと彼女の体がグラリと空気の抜けたように崩れ彼女に担がれた、ヒュッと跳ぶように名月さんの下に駆け寄り「それでは失礼します」再びパチンと指を鳴らした、次の瞬間には3人は消えていた、私はあっけに取られても動けなかった「あっ玲奈ちゃん」衝撃の跡に踏み込みめり込んだその身を引き出し揺さぶってみた、返答は無い、死んでしまったのかと焦った「まぁ死んでは無いけどね、メモリー抜けば瀕死で済むよあれなら」白崎の言葉が蘇った優しく彼女のメモリーに手を掛ける、パタパタと折りたたまれ下のペン状に戻った「んっ美咲希、生きてる、アイツは」「良かった生きてた、アイツは消えちゃった、こう指パッチンして」特に外傷は無く至って元気そうだ「立てる」「うん」土を払い起き上がった「負けちゃった」

 「ただいま龍」ベッドから溢れ出る先生方の蔓延った部屋にワープしてしまった、今まさに雪乃先生の驚くほど白い体を貪っていた「おかえり」「咲音は?」「下に居るよ」「この子運びたいんだけど」「良いよ丁度制覇したし」パチッと指を鳴らし大方の先生方は消えた、自宅に送られたのだろう、四天王はその場で放置され翌朝のご奉仕に使われるのだろう、岸宮先生はそのまま放置し名月を彼女の自室に運んだ、LINEを付け電話を繋ぐ「望月、名月の部屋に来て」「いつおかえりになられていたのですか」「さっき白崎と一緒に飛んできた」「はぁいまお伺いします」間もなく望月が入室した「名月さんまた無理をしたのですか」返事はない「Fightメモリーの力に耐えきれなかったみたいだな、自然治癒を待つ他ないよ」そう言うとドアの方へ向かっていった「どちらへ」「友人に会いにね」「お供します」つい反射で口走ってしまった「望月は名月を見ておけ良いな」「龍君今週末はデートですよ」「約束する」ガチャと戸を閉め玄関に向かっていった。

 「よう待たせたな」「いやいつも通りだろ」「そうかね」彼西島皇治レストランの一角で待機してくれていた「誰も居ない貸切か」「いやここ紹介制のレストランでね」「そんなコネどこから」「どこでも良いだろ」席に座ると一枚のカードが置いてあった「会員証ね、今度彼女サンと来なよ喜ぶと思うよ」「うん…」深月の復帰祝いにでもどうかと思う、彼女達も喜ぶだろう「ここは何がオススメなんだ」「ここは一つのコース料理しか無い、もうすぐ来るぞ」「強気だな」「まぁその間今後の話でもしてようぜ」「西島はこの世界がどうなっていくと思う」「こんな業と夢が混ざって腐った世界はとっとと捨てるに限る」サッと窓から見える夜景に目を移した「まるで世界が他にある見たいな口振りだな」「なくてもいいさ、だけど他の世界があるなら見てみたい」「私はこの世界が好きだ好き過ぎる」何やら彼が異物を見るような目で見てきた「だからこそ支配したい政治も人民の暮らしも全てを」「お前がやってくれんなら安心だ」ゴッンと足に何か当たった「サンクスでも雑だなもっとこう秘書に運ばせるとか」「秘書は諸々の事情で居ない」「彼女兼秘書だろ」「良いだろ何も不自然ではない」「まぁそうか」彼はデバイスをいくらか操作した「ほら送金しといたぞ確認お願い」「確かに4億6000万俺の口座にあるな」この口座は秘密口座で並大抵の技術では足跡は付かないように細工されている、引き出すときが少し面倒くさいが法人口座を作ってクレジットを漏れ出て取られるよりかはマシな構造である「おっ今回はバリエーション豊富だな」「ここで開けるな」「良いだろこのレストランに防犯カメラは無いし従業員には守秘義務が課され口外することは許されない」「なんでそんなことを」「俺がオーナーだからかな」チラチラと【FLAG】メモリーを見せてニヤけた、バラしたらどうなるか想像したくもない「全く君じゃなかったら粛清対象だぞ」「あざっす龍サン」フウーッと一息つき「調子の良い奴だ」「そのおかげでAECも存続できているし」「たかが部活だろ、なぜそこまで固執する」「龍サンが根回ししてくれたからあの部活があるんすよ」「所詮規模は校内だやろうと思えば出来ただろうに」「こいつが必要なんすよ」「ワケがわからん」「都市伝説だよ、自分を自分じゃなくさせる記憶があるって」「マジで言ってんのか」「嘘だよ、なーんか赤いなんかこうフワフワが龍サンから伸びててなんかあるなって」「内容もフワフワしてやがる」「ともかく龍サンはこれを蔓延させたい、そして俺は活動を大きくしていきたい、win.winじゃないっすか」「またワケがわからん」「そっすか、ウチって県内でも結構なマンモス校じゃないっすか」「肯定」「無闇矢鱈に渡しても効果は薄いな」「肯定」「あれってどうやって選別してんの」「私の好き好み、それ以外の例は秘書の考えでやった」「ロッカーの件か」「ロッカー?何だそれは」「貴方は選ばれました、って紙が置かれててメモリーが置いてあるって、俺はそれで貰った」「どうしてそれを知っている、大々的に公表したつもりはない」「いや、これだけは本当スッよ」途端冷や汗が出てきた、秘書の裁量で渡しているのかと思ったがよく考えてみれば彼女が他人と話すなど考えづらい、それは一番身近にいる私がよく知っている、深月が関わっているのかいやそれも考えづらい、理由はこうだ、彼と受け取った方法が私と全く同じなことだ彼がメモリーを使用し始めたのはこの世界の1年生3学期のとき

私が始めてメモリーを使用したのはあの世界の1年生2学期のときだ、望月と深月がメモリーに始めて触ったのはそれよりも後だ、他に配布しているやつが居ると考えた方が納得できる、あの日見た光に手を伸ばし包まれる徐々にぼやけていき、あの今にも殴りたくなるようなニヤけた顔面に変わっていった「ロッカーの件は報告を受けていない、彼女に限って無いと信じたいが万が一もある」「どーでも良いだろ出どころなんか」「良くはない」「なにそんな焦ってんの、だいじだって俺と龍サンが手を組めば無敵ですって」謎は増えるばかりだ、出どころなんかどうでもいいと言ってはいるが、この金のだったてどこから出たかも分からないがどうせろくでもないところからだろう、このレストランだってそうだ「AECは大きくなりすぎているような気もするが、何やら黒い噂も聞いたが」「俺のカリスマで何とかしてるよ、黒い噂はあくまで噂根も葉もない」煙に巻かれたか「メモリーの外部流失について心当たりは」「無い」「そうか、後日立ち入り調査を行うことを了承してくれるか」「いやウチは秘密が多いから、ワケアリなのよ」...「そんな睨むなって、分かった分かった後で来いよ秘書サンも連れて」「単騎で行く」「そ?別にいいけど」「あの有名な不良集団が更生したとの話を聞いたが本当か」これ以上相手のペースに巻き込まれるのは不味いと話を切り替える「えぇホントですよ、これも話そうと思ってだんですけどね、ウチの部員の方がやってくれたんですよ、いやー正義って良いね」「賛同する」口だけのイキった奴が大嫌いだ教室の雰囲気も壊れてしまう「あざっす、なんでその資金の方少しだけでも色付けといて下さい」「確実に勝てる試合をしておいてか」「やったのはウチですし」「使い捨ての構成員の下会員を差し向けただけだろ」「そこを何とか」「検討する」「前向きにお願いします」「お待たせしました、前菜のズッキーニとアスパラガスのバーニャカウダです」

 「コレって何なの」手に持っていたペンを玲奈に差し向けた「分からない、でももう使わないほうが良い」「うん、そうだね」いつも通りの帰り道をお馴染みのメンツで歩くだけなのに、なぜだか家に帰っている気がせず明後日の方向に進んでいるような気もする「あれって岸宮先生だったよね」「そうなの」「うん、私それ知らなくて」「殺したの」共感を得ようとしているような気がして何だか気持ち悪くなったがどうしても聞きたくなった「いや、生きてたよ、よろよろ歩いてた」「そうなの」内心は落ち込んでいた、人が生きていて落ち込って何なんだよ、そんな矛盾に反応するかのごとく、眼の前に見しれたシルエットが写った「白﨑さん」「貴女たち二人は選ばれたのよ、頑張りなさい」「えっ何、何なの」「多くは語らないわ」二人の間を引き裂きながら、間を歩き振り返る頃には消えていた


この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。

この物語は強姦、同意なき性交を助長するものではありません。

あくまで作品内の刺激の一つです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る