第43話 リサイクルスタート
舞台はマール領地のダンジョンを抜け、テレポゾーンを経て辿り着く、地下深くの亀裂の下。
そこに広がる地下帝国のダンジョンから脱出した人々が集結していた。総勢十万人。
「これだけの人数が生き残ったのは、ある種の奇跡ですね、ガルフ様」
リンデンバルク執事長が呟く。
ガルフは腰に帯びた剣を抜かず、ただ静かに頷いた。
「そろそろゼーニャが目覚める頃か」
世界魔王ヤマガルドの暴走により、多くの領民と建物が消え、リサイクルされてガチャ券になっていた。
現在、アイテムボックスには三千枚のガチャ券が収納されている。
「ゼーニャ!」
傷だらけの彼女がゆっくりと目を開けた。
背中の剣は致命傷を負わせたが、賢者ナタリーと聖女ジーラの献身的な治療で一命を取り留めていた。
「申し訳ありません、ガルフ様……」
「いいんだ、それより林檎を食べるか?」
ガルフが林檎を差し出すと、ゼーニャは力強く丸かじりした。
彼もまた同じようにかじりつく。
「また一からか?」
「かもしれない。朽ちかけたライクド領地の復興よりも酷い。何もない、あるのはガチャ券と領民、そして永続的にモンスターが狩れるダンジョンだけだ」
「何もかも破壊されてしまったのですね」
「そうだな」
「ですが、世界魔王ヤマガルドを倒す方法がきっとあるはずです」
「そうだといいがな……ヤマガルドは本当はこんなこと望んでいなかった気がするんだ」
「魔王の原理ですね」
「そうだ。ヤマガルドは俺が領地を発展させることも魔王の理と同じだと言っていた」
「なるほど、確かに似ているかもしれませんね」
「そうだ、ガチャ券があるじゃないか」
「でも何が出るか分からないんだろ?」
「らしくないな。お前の運は群を抜いている」
「ギーヴだって戻ってきたじゃないか。神の墓場、アダムイヴが蘇らせてくれたんだ」
「それはわかってたみたいだな」
「アダムイヴの名前はね、主の大事な人を蘇らせる神様だから」
「まぁ、死体だけどな」
「仕方ないさ」
「じゃあ、ガチャ券回してくる」
「私も見せてください」
「いいけど、傷は大丈夫か?」
「痛いのは痛いが、肩を貸してくれよ」
ゼーニャがガルフの肩に寄りかかり、二人はゆっくり歩き出す。
向かうは広大な広場。
無数のテントが立ち並び、十万人の民が暮らしている。
8大魔王たちは領民の救出と移動で疲れ果て、テントで休息中。
ナタリーとジーラは傷病者の治療に当たっている。
「ナタリーとジーラには申し訳ない……ゼーニャの治療に続き、皆の治療まで……」
「そんなことありません」
三千枚のガチャ券。
一気に使う時が来た。
【申告:ガチャ券三千枚同時破棄可能。実行しますか?】
「やってくれ、神声」
【承知】
アイテムボックスから三千枚の券が舞い上がり、同時に破られる。
すると上空に三千の箱が現れた。
全ては視認しきれないが、内容は頭に直接伝わってくる。
【D=保存食1日分×2800】
【C=武器×100】
【B=建物×90】
【A=再現の書×1】
【S=異世界橋×9】
保存食は助かるが、Dが大量に出たのは少し肩透かし。
Cの武器は戦力化できる領民に配布。
Bの建物は自動で亀裂の地下に設置された。
まるで元から決まっていたかのように。
「この再現の書は……」
【告知:元の領地を大地の亀裂にて再現可能】
感動のあまり声が震えた。
「すぐ頼む」
【御意】
空気が震え、次の瞬間。
亀裂の地下空間に、かつてのガルフ王国の建物が完全再現された。
騒然とする中、領民が歓声を上げる。
「ガルフ様ー!」
「ガルフ様のおかげで!」
「この領地を!」
続いて異世界橋9本。
【告知:異世界橋1本につき1つの異世界へ繋がる】
「凄い!」
【告知:世界魔王ヤマガルドは大地の亀裂に侵入不可】
「なぜ?」
【世界とは地上以上を指し、地下は含まれない。地下は地獄世界、死神ジニアの領域】
「ここが安全だということか」
【その通り。力を蓄え、ヤマガルド討伐を推奨。世界そのものをリサイクルガチャにするべし】
「よくわからないが……」
【やがてわかる。異世界交易が可能になる】
「神声と話してるのね?」
ゼーニャが微笑む。
「ああ、9つの異世界と交易ができる」
「素敵ね」
「でも9つは多すぎな気もするし、ここが地獄世界だからヤマガルドは来ないらしい」
「なら安心だ」
眠そうなゼーニャが答えた。
「リンデンバルク、8大魔王を集めてくれ」
「承知」
影から執事が現れ、即座に動き出した。
8大魔王が集まると、ガルフは告げた。
「今から9つの世界に橋を架ける。1人1世界を担当し、相手世界の世界王と対話し交易を始める」
「俺も1つ担当する。9人で行こう。この大地の亀裂は安全になりつつある。安心して旅立て」
ガルフの朗々たる声に、皆が頷く。
ミヤモト、アキレスドン、パトロシア、アーザー、クウゴロウ、ババス、ロイガルド、ウィンダム――
亀裂の大地に8本の橋が出現し、岩壁に向かって伸びる。
岩壁にはオーロラのような光が現れ、そこから異世界へ入るという。
「食料は十分だが限りがある。準備が整い次第出発だ」
全員が頷いた。
ガルフは旅立とうと振り返り、
「リンデンバルク、ゼーニャたちを頼む」
「承知しました」
「ガルフ様、私も行きます」
「無理にでもついてくるなら来て良い」
「はい!」
「リンデンバルク、ナタリーとジーラも」
「承知いたしました」
領地のことは執事長に任せ、他の異世界は8大魔王に任せて、ガルフは旅立つ。
時間はない。
建物があろうと、ダンジョンがあろうと、食料は限られているのだから。
「俺様を忘れていないか?」
ギーヴが勇者の剣を担いで現れた。
「じゃあ、行くか」
ガルフ、ギーヴ、ゼーニャ。
三人は【爆滅の異世界】へと渡った。
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