第34話 これ!? もはや闘技場で戦う話では

ガルフは剣を抜き打ちざま、地面を一閃した。

斬撃が爆発のように広がり、闘技場の地面が激しく裂けた。


「ふん、アーザーよ、お前の力を見せてみろ」

「御意でございます、ガルフ様」


アーザーの手元に伝説の剣エクスガリバーが煌めくように出現した。

しかし、その剣のスキルは「人間を殺すほどに弱まる」という特殊効果がある。

つまりアーザーはガルフを殺すつもりが全くないのだ。


「ふ、舐められたものだな」


ガルフは縦に剣を振り下ろす。


「ブン」という風切り音と共にアーザーが斬撃を華麗に避けるが、背後の闘技場は真っ二つに割れてしまった。

幸い観客は難を逃れたが、動揺が広がる。


「ガルフ様は我らを殺すつもりでは……」

「容赦がない、逃げろおおお!」


観客席から悲鳴が上がり、次々に人々が退散していった。

だが、ただ一人。眼鏡をかけた女性だけは、動じず戦いを見つめている。

ガルフは感覚的に察した。


「スキル:王の資格、発動」


辺りの空気が何かに支配されるように変化し始める。

だがそれと同時に、ガルフの斬撃がことごとく避けられ始めた。

闘技場は次々に破壊されていく。


「ガルフ様、この王の資格は『相手に勝つ資格がなければ、僕に相手の情報を与え続ける』というスキルです」

「そうか、ならば勝つ資格を得ればいいのだな」

「ですが、今のガルフ様では……」

「ならば、強くなればいい」

「まさか、あなたは」

「そうだ。強化酒を薄めてジュースにして飲んだのだ!」

「そうか……ならば、負けるかもしれませんね」


ガルフはアーザーに肉薄し、一瞬のうちに懐へと入り込む。

そして剣が右手から左手へと瞬間移動し、空を切り裂くように振り下ろされた。

その斬撃はアーザーの肩をざっくりと両断し、アーザーは後ろに吹き飛んだ。

周囲の建物が連鎖的に破壊されていく。


「勝者、ガルフ様!」


審判は命がけの判定を下した。

ガルフは剣を鞘に納めて呟く。


「ああ、やっちまったよー」


走ってアーザーのもとへ向かう。


★???


彼女は眼鏡をかけていた。

俗に言うマジックアイテム、リフレクトミラーである。

これを装備している限り、どんな魔法や呪いも無効化できる。

たとえ、ハルガド・フォボメットの死神の契約の力であっても例外ではない。

最初、彼女はガルフ・ライクド国王が何かの呪いで強くなっているのではないかと思い、それをリフレクトミラーで解除し最弱にできると考えていた。

だが、それは無理だと判断した。

なぜならガルフ国王の強さは呪いではなく、純粋な努力の結晶だったからだ。

彼が子供のころから積み重ねてきた鍛錬は膨大で、想像を絶するものだった。


「一体彼の何がそこまでさせるのか」

「もっと情報を集めないと」

「あんな化け物相手に我が帝王は勝てる見込みがない」


彼女は深く思案した。


「ハルガドの話では、弱点は女にある可能性が高い。3人の妃候補を調べてみるか」


彼女が妃候補の情報を知っていたのは、ハルガドからそれらしき情報を掴んでいたからだ。


「ゼーニャ、ナタリー、ジーラ……どれもとんでもない力の持ち主ね」


立ち去ろうとした彼女は、ふと振り返る。


「アーザー、大丈夫? ごめんね」


そこには、先ほどとは違う、心優しい青年の姿があった。


「一体彼は、なぜ武器を握ると人格が豹変するのだろうか?」

「だが、それは問題ではない」


彼女は独り言のようにつぶやいた。


「このメレルガラストは、帝王を世界一最強の男にしてみせるのだから」


マントを翻し、彼女は瞬間移動で姿を消した。


【スキル:トレジャーハント】


ダンジョンに隠された秘宝を必ず見つけ出す能力。

トレジャーハンター、メレルガラストは、ギビンデルク帝国の帝王を……




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