第25話 ハルガドまたもや逃亡

「あ、え、やば」


 ガルフは仲間たちが次元の裂け目から現れるのを見て、すっと目を細めた。


「じゃ、ハルガド。死んでみようか」

「ま、まってくれええええええええ!」


 先ほどまで「死神ジニア」などと名乗っていたハルガドの顔が、まるで生気を失ったように青ざめていく。フードが風でめくれ、下から現れたのは腐敗に染まった異形の顔だった。


「てめぇら、見たかこの姿! 本来なら、これを見るだけで死ぬはずなんだ、あれ、なんで……?」

「うーん、ああ、俺たち世界樹の酒飲んだわ」


 ガルフがにこやかに言い放つ。


「そ、それだあああああああああっ! くそっ、世界樹の加護……なんでそんなものをお前らが!」

「ま、運が良かったってことにしとこうか」


 ミヤモトが刀の柄を軽く叩きながら言うと、ハルガドは舌打ちし、暗黒の影に身を溶かした。


「ちっ、逃げられたか……」


 ガルフは剣を抜く前だった。口元に笑みを浮かべながら、少しだけ悔しそうに頭をかいた。


「ま、いいや。また出てくるだろ、あいつ。じゃ、帰るかー」


 ミヤモトが「次元斬り」を発動し、一行は再び元の領地へと戻った。


★オークション再開。そして、尋問の刻


 民衆が再び集まり、にぎやかなオークションが始まるその裏で――

 ライクド領の領主館の地下では、冷えた空気の中、尋問が行われていた。

 縄で縛られた8人の領主たちが、顔を青ざめさせて地面に膝をついていた。


「さて。死神ジニアは……どうしたんだったかな?」


 ガルフの問いに、ライス領主が悔しげに叫ぶ。


「貴様、ジニアを逃したのか!」

「逃げられちゃったよ。あいつ、しぶといねえ」

「なっ……!」

「それよりさ、君たちの方が問題なんだよね」


 ガルフは、まるで旧友に話しかけるかのように柔らかい口調だった。だが、その眼は笑っていない。


「命だけは……頼む! 家族が……」

「家族ねぇ……そっちが俺の仲間ぶっ殺そうとしたこと、忘れたの?」

「た、頼む!」

「じゃ、とりあえず剣持つわ」


 タカオ宰相が差し出した剣を受け取り、ガルフは一度構えてから、肩にトンと当てた。


「うーん、やっぱダメだな。殺す」

「や、やめてくれえええええ!」


 その瞬間、ライス卿の首が宙を舞った。


「ひっ……ぎゃああああああ!」

「ディスドン、バラガス、テイマド、バフム、フィグル、マール、デストニア……順番に行こうか」


 一瞬のうちに、ガルフの剣が光を放ち、残りの7人の首が床に落ちていった。

 すべては一瞬だった。血の匂いが部屋を満たしていく中、ガルフはまるで風呂上がりのようにさっぱりした顔で剣を鞘に収めた。


「……さてと」


 振り返ると、全員が立ち尽くしている。

 タカオ宰相も、パトロシアも、ミヤモトも、ただ黙ってその光景を見ていた。


「これで、全部の領地、俺のもんだな」

「が、ガルフ様……あなた、まさか、はじめから……」

「父上がやり残したこと。俺がやる。それだけさ」


 ガルフは軽く笑って、肩をすくめる。


「人を殺すの、止まらなくなりそうで怖いけどさ。ま、今は祭りしようぜ」

「は、はいっ!」


 タカオ宰相は背筋を伸ばし、姿勢を正す。


「100億金貨も稼いだんだ、今日は――騒ごうぜ!」


 ガルフの叫びに、民衆の歓声が空に響いた。







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