第4話 ダンジョン攻略の豹変領主

 2本の塔のうちの1本の塔。

 無限ダンジョンから挑戦してみる事になった。

 黒鉄色のダンジョンの入り口に到着したガルフとゼーニャとアーザーはそれぞれで頷き合ってから。


 台座にゆっくりと振れた。

 台座は光色に輝いており。

 どことなく、仄かで怪しい光をしていた。

 

 ピカリと輝くと。3人はどこぞへとテレポートさせられていた。

 出てきた先は広大な世界。


「これはたまげたなー」

「ガルフ様、冒険心が燃えていますね」

「こりゃー沢山の国を支配した僕でも驚きを隠せないよ」


 どこまでも果てしなく続く緑色の草原。

 どこまでも果てしなく伸びている山岳地帯。

 どこまでも果てしなく茂っている森地帯。

 どこまでも果てしなく続いている海地帯。

 そこは何もない自然地帯だった。

 どこまでもどこまでも続いているから無限ダンジョンという名前なのかもしれない。


 現実の世界では考えられないモンスターの大軍。

 大きさはまばらだが、マンモスのようなモンスター。

 大きさだけで言えば城くらいの大きさ。


 空には見たこともない星々が輝いており。

 惑星だって群青色の白色だったり。

 見たこともない色合いを瞳に写してくれている。


 空にはドラゴンが無数に飛翔している。

 獲物を狩るかの如く、低空飛行して首長の獣と戦っていたり。


 巨大すぎる木が一本だけ空に向かって伸びており。 

 雲を突き破り、それは遥かな宙の惑星と繋がっていたりする。


「ここをどう攻略しろと?」


「もしかしたら、攻略とか無いのかな」


【いや、攻略方法はある。無限ダンジョンには覇王と呼ばれる存在がいて、それを討伐する事で、攻略されると言われている。覇王の配下には龍王、虎王、朱雀王、玄武王がいるとされているが】


 神声がタンタンとした口調で教えてくれる。


「覇王と龍王、虎王、朱雀王、玄武王を倒せば良いらしい」


 ゼーニャとアーザーが頷いてくれるが。


「それって、今の俺達では不可能かもしれない」


【なぜなら、神に匹敵するくらいの強さだからだ】


「神に匹敵するくらいの力らしい」


「そりゃー上等じゃねーか」


「いえ、上等ではありませんアーザーよ」


 ゼーニャがぴしゃりと言うのだが。


「じゃあ、モンスターでも狩りますか」


「ガルフ様の言う通りですわ」


「ふん」


 だが、強情にアーザーは吐き捨てたが。

 彼はガルフの本当の恐ろしさを知らなかった。



 ガルフが腰から剣を引き抜く。

 眉間に皺が寄り始める。

 アーザー王は何事かとそれを見ていた。


 ゆったりと歩くガルフ。

 アーザーの脳裏には今までのなよっとしているガルフの姿は無く。


 ガルフに向かって、ゴブリンのようなモンスターが群れてくる。

 ガルフは人薙ぎに何食わぬ顔で両断していた。

 そのまま歩くスピードを落とさない。

 ゴブリンが棍棒を構えて、次から次へと殺到する。


 ガルフはただ、散歩するかのようにすれ違うだけで、両断を繰り返し。

 気づけば、50体のゴブリンの死体が転がっている。


 アーザーは何が起きているか理解出来なかった。

 確かに、ガルフは主でもある。

 主が桁外れに強い事は嬉しい。

 だが、あれはなんだ? 歩いているだけで、見えない斬撃を繰り出している。


 次にやって来たのは、ミノタウロス。

 それも10頭だ。

 あんな化け物ならいくらガルフでも無理だろう。


「ひゃっはああああああああああああ」


 突然のガルフの叫び声。

 大地、いや、空気そのものが震えた。

 振動がミノタウロスに怯えを生み出している。

 ガルフは跳躍していた。

 

 ミノタウロスの頭に取りつくと、目を串刺しにし、そのまま、頭蓋を割った。

 ミノタウロスが1頭絶命すると。ぐらりと倒れていくミノタウロスの背中からジャンプして、次のミノタウロスを殺していく。


 もはや、化物。

 処理しているのではない、楽しんでいる。


「うらうらうらうらあああああああああ」


 ガルフの絶叫。

 もはや大地ではなく、生命を脅かす程の声。


 気づけば、10頭のミノタウロスは死体となって転がっている。

 どしりどしりと、1頭ずつ時間差で大地に死体が転がっていく。


 血しぶき1つ浴びる事なく、ガルフは埃を払うかのようにしてぽんぽんと体を叩き。


「さすがはガルフ様!」


「ちょっとがんばりすぎちゃったね」


「いや、あれ可笑しいだろ」


「え、なんで? アーザーさんの方がものすごいでしょ」


「いや、確かに、僕は巨人クラスを平気で殺せる。だけどガルフ様は楽しんでらっしゃる。倒すのをいや、殺すのを」


「だって、楽しいでしょ?」


 アーザーは今確信した。

 この方は世界を統一なされるほどの器だと言う事を。

 いくらアーザーが伝説の人間王だとしても、生命を奪う事を楽しいと思った事はない。

 むしろ奪われる可能性から恐怖を抱くものだ。


 アーザーはうやうやしく片膝をついて、ガルフの手を取ると。


「このアーザー、あなた様をこの世界の覇者にして差し上げましょう」


「そんなかたっ苦しい事を言わず。ただ俺が殺しまくるのを手伝って欲しい。俺はとても頭が悪いからね、皆にバカにされちゃうんだけど、こうやって殺す時がとても楽しいよ」


 ああ、ああああ、ああああああ、これが狂ってると言う奴なのか。

 アーザーはあまり感じた事のない感動を覚えてしまっていた。


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