第14話 脇役、王女を拐う




 王都へやってきた。


 いや、やってきたというより、王城まで討ち入りにやってきたと言った方が正しいだろう。



「お邪魔するわよー!!」


「ク、クリティアーナ騎士団長!? 行方不明と聞いてましたが、ご無事で――」


「ふん!!」


「はぇぶっ!?」



 クリティアーナが駆け寄ってきた兵士を拳で殴り飛ばし、気絶させてしまった。



「流石は王城、警備がしっかりしてるわね」


「いや、今の兵士の人、普通に心配してくれてなかったか?」


「細かいことは気にしないの、エンドー君。ほら、アリエルちゃんも行きましょう!!」



 俺とアリエルはクリティアーナの後に続いて王城の中を歩いた。

 冷静に考えてみると、一般的に悪人と言われる魔術師が堂々と国の重要な建物に侵入しているって凄い状況だ。


 兵士たちがわらわらと出てくる。



「て、敵襲――ッ!!!!」


「クリティアーナ騎士団長がご乱心だ!!」


「ぞ、増援を呼べ!! 我々ではクリティアーナ様を止められん!!」


「増援など無意味だ!! 相手はあの『戦神』だぞ!!」


「む、無理だ!! 逃げろ!!」



 クリティアーナがよほど恐ろしいのか、兵士たちは膝をがくがくと震わせていた。


 兵士たちの恐怖など欠片も気にせず、クリティアーナはズンズンと国王のいるであろう大広間へと向かう。


 大広間の前で足を止め、クリティアーナは勢いよく扉を蹴破った。



「邪魔するわよ、陛下!!」


「な、何事じゃ!?」



 大広間では会議が行われていたのだろう。


 国の大臣と思わしき中年の男が集まっており、一番奥にある豪華な椅子に腰かけている初老の男性が声を荒らげた。



「ク、クリティアーナではないか!! 魔術師に拐われたと聞いたが、無事だったのか!?」



 いつの間にか俺がクリティアーナを拐ったことになっている件。


 いやまあ、間違いではないだろうけどさ。


 それはさておき、クリティアーナが国王らしき初老の男性の胸ぐらを掴み、殴りかかろうとする。



「そんなことより陛下!! 一発殴らせてください!!」


「ま、待て、いきなり何をする!?」


「アリエルちゃんから聞きました。光魔法に目覚めたからと両親が死んで間もない子を無理やり王命で呼びつけた挙げ句、学院に入れた後は放置したと!!」


「!?」



 そこで国王はクリティアーナの後ろにいる俺やアリエルに気付いたのだろう。


 特に俺を見て激昂した。



「き、貴様、例の魔術師か!! クリティアーナを捕えて邪法で洗脳でもしたかのか!!」


「どうしよう、撃とうかな」


「国王殺したら、冗談抜きでこの国に一生追われますよ?」


「いざとなったら他国へ逃げれば解決だ」


「……そうですね」



 というわけで俺はリボルバー式拳銃を錬成し、国王の額にゴリッと押し当てる。



「ひぃ!?」


「ところでクリティアーナ。王城に討ち入りはいいが、ここからどうするつもりだ?」


「決まってるじゃない。まずは謝罪させるのよ。それから……それから、えっと……」



 クリティアーナが言葉を詰まらせる。


 何となく察してはいたが、やっぱり細かいことは考えていなかったか。



「じゃ、まずは謝罪だな。俺の女――アリエルに謝ってもらおうか。お前の息子が暗部を使って命を狙ってきたことも含めてな」



 俺がそう言うと、国王は目に見えて動揺する。


 まさか国王のくせに王太子の動向を把握していないのだろうか。


 と、その時だった。


 大広間の入り口の方から氷魔法で生成したであろう氷の塊が真っ直ぐ飛来する。


 俺とクリティアーナは国王を突き飛ばし、魔法を咄嗟に回避した。

 その後、入り口の方に視線を向けると見覚えのある人物がいるではないか。



「お父様から離れなさい、賊!!」


「お、おお!! アンゼリカ!!」



 銀色の髪をツインテールにした美少女だった。


 『輝く星空の下で』をプレイしたことがある人なら誰でも知っている。


 彼女の名前はアンゼリカ。


 攻略対象である王太子、ロランドの腹違いの妹に当たる人物だ。

 重度のブラコンでロランドを一人の男性として好いており、いわゆるツンデレ。


 王太子を攻略する際にアリエルと対立する、いわば悪役令嬢ポジションのキャラだ。


 胸はアリエルやクリティアーナと比べると控えめだが、一般的には大きい方と言っていいサイズ感をしている。


 光魔法ほどではないが、珍しい氷魔法の使い手でもある。

 氷魔法は範囲攻撃が多く、攻守に優れる魔法が多くて厄介だ。


 正直、相手にはしたくない。


 どうやってアンゼリカを制圧しようか考えていた、その時。



「ちょうどよかったわ!! エンドー君、アンゼリカ様を拐いましょう!!」


「……は? え? なんで?」


「アンゼリカ様は一番話が通じる人よ!! ほら!! 早くダンジョンに続く扉出して!!」


「え、あ、わ、分かった」



 ちょっと情報の処理が追いつかず、俺は言われるがまま『どこでもカギ』でダンジョンへと続く扉を出現させた。


 その隙にアンゼリカを首トンで気絶させ、背負い上げるクリティアーナ。

 こうして俺たちは一国の王女を拐ってしまうのであった。









―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「拙者、ブラコン美少女が快楽堕ちして大好きなお兄ちゃん以外の男に懐く展開大好き侍」


エ「え?」



「最初の兵士気の毒すぎる」「クリティアーナ手慣れてて笑う」「寝取られ展開はNG」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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