第二章 悪意のない殺人




ーごめんなさい……パパ、ママ。ー


ー許して……。いい子になるから。ー




今日も、アパートの隣から聞こえる子供の泣き声で目が覚めた。

最初は、叱られてるだけかと気にしなかったけれど、どうも、そうではないらしい。

一日中、怒鳴る声、殴られるような音。

壁にぶつかる激しい音。


これは、間違いなく、虐待だ。


まぁ、例え虐待であったとしても、それが何だと言うのだろう?

隣の子供が泣こうが喚こうが怪我しようが、僕には関係ない事で、全く興味がない事なのだから。

それでも、夜中でも泣き喚く声が響けば、僕だって、苛立ちを感じる。

だって、睡眠妨害だもの。


内藤さんの事件から、警察だの聞き込みなどで忙しくなって、会社は、一時、営業停止。

従業員には、思いがけない休日になったわけだ。

毎日、仕事で疲れたと言っていた結城さんの力になれたかな?

今頃、のんびり寝てるのかも。

誰かの役に立てるなんて、こんなに嬉しい事はない。

誰かの幸せは、僕の幸せなのだから。

内藤さんも、ほんとは要らない人間ではなかったのかもしれないね。

内藤さんが死んで喜んでる人もいるだろうから。

良かったじゃない、内藤さん。

だけど、もう死んでしまったから、どうする事も出来ないけれど。

君を悲しみから救えた事は、良い事だよね。




だって僕は……優しい人間だもの。

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