テレビ番組 後編

スタッフ:

それでは■■■さん。

こちら、お願いします。


霊能者■■■コハル:

はい──。


ナレーション:

写真に写っている草むらは25平米ほどしかなく、下に降りてみるとその狭さがよくわかる。霊は■■■へ『探して』と語りかけてきたというが、いったいここに何があるというのだろうか──


山中:

……何か視えましたか?


霊能者■■■コハル:

いえ……上から見ていた時も何も視えませんでしたが、下に降りてもやはり……何も視えません……。


山中:

あっ……。

じゃあ、もしかして、もう幽霊はいないんですかね?

そもそもあの写真っていつ撮られたものなんですかね?

もう成仏しちゃったとか?


霊能者■■■コハル:

視えはしませんが……やはり……小さな声が……。


山中:

ええっ!?


霊能者■■■コハル:

……『探して』と。聞こえてきます。


山中:

うわ、マジで!?

えっ、じゃあここにいるってことですか!?


霊能者■■■コハル:

はっきりと視える程には残っていないのかも知れませんが、霊体というか……残留思念のようなものが、わずかに留まっているのかと。


山中:

うわあ……あ、ちょっと怖くなってきた。


スタッフ:

じゃあ、山中さん。こちらを。


山中:

……なにこれ?


スタッフ:

金属探知機です。


山中:

いやさっきからチラチラ見えてたからさあ。

金属探知機なのは気づいてたけど。


スタッフ:

ここ、掘ったりするのはNGなんで。


山中:

あ、そういうこと。

え、でもさあ。

探知機が地中のものに反応した場合は?


スタッフ:

その場合は、これで。


山中:

──スコップ?


スタッフ:

ちょっとくらいなら掘って大丈夫です。


山中:

何その匙加減。


ナレーション:

それでは行ってみよう!


山中:

えー、でもここ広くないからさあ。

何か今日は早く帰れそうだなあ。


ナレーション:

水際から丁寧に探知機で探っていく。

果たして、何か見つかるのだろうか──


山中:

ゴミひとつ落ちてないよ、ここ。

あれ? ■■■さんは?


スタッフ:

ロケバスで待機していただいてます。


山中:

えー、そうなのー?

何か……言うだけ言って……もうちょっとヒント欲しいなあ。


ナレーション:

その時!


山中:

あっ! ちょ……ねえほら!

これ、何か反応してるよね!?


ナレーション:

山中の金属探知機が反応を示した!


山中:

あっ……ねえ……ほら、これ!

ほら、これ……指輪じゃない?

これのことなんじゃないの!?

ちょっと■■■さん呼んで!


ナレーション:

山中が草むらの中に見つけたのは小さな指輪。

内側に刻印などはなかったが、デザインは少し特徴的である。


スタッフ:

どうですか?


霊能者■■■コハル:

うーん……何も感じない、とは言いませんが……とても、とても微かに……何か、訴えかけてくるものを感じます。


山中:

これが、あの、幽霊が探してって言ってたものなんですか?


霊能者■■■コハル:

はっきりとは申し上げられませんが、これを山中さんが見つけられてから少し、この場の空気が変わったように思います。


山中:

はあ……で、どうするの?


スタッフ:

どうするの、とは?


山中:

いや、こーれ!

これ、どうするの?


スタッフ:

……とりあえず、落とし物なんで。

交番行きましょうか。


ナレーション:

我々は近隣の交番へと向かい、ことの経緯を説明したうえで、同じような指輪の遺失物届が出ていないかを調べていただいた。

しかし、はっきりと特徴が一致するものはなかった。

そこで我々は警察にご許可いただき、神社でお祓いを行った上で、遺失物として警察に届けることとした。


(お祓いに参加する山中、警察へ遺失物として指輪を提出する山中の姿が順に映される)


ナレーション:

果たして、これで【おばけがとびだすしんれいしゃしん】から幽霊が飛び出してくることはなくなったのだろうか……?

何か視えた、聞こえたという方。またはこの指輪(件の指輪が画面に大写しになる)に見覚えがあるという方は番組ホームページまで!


(終)

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