五代目戦隊の戦い 11
出撃から五分程度で、バーニンマシンは高度一〇〇キロメートルに到達。そこでバン・バーニヤンが基地から巨大な移動ゲートを形成する。五体のバーニンマシンがすかさずゲートの中へと突入。一分も経たぬ間に、地球の外へと放出される。
『宇宙だ』
侑夏――バーニングリーンが呟くのが聞こえる。
無音と闇。それが、私の宇宙に対する第一印象だ。しかし、闇の中には、光点のようないくつもの星々があり、背後には、母星たる地球の、青く美しい姿がある。宇宙に行けば、人間一人の存在など果てしなく広い世界を漂う木の葉のようなものだと思わざるを得ない。だが、今は感慨にふけっている暇はない。バーニンマシン――マシンアルラウネのオートバランサーを確認。姿勢に問題なし。続けて索敵開始。月軌道――骨のように白い星の間近に、敵の影を発見する。
『……いた』
バーニングリーンの緊張した声が通信機から聞こえる。
それは、白く、巨大な怪物だった。
筋肉質の人型の肉体でありながら、生物というよりは何らかの人為的な産物めいた雰囲気がある。とんがった頭に、巨大な一つ目。左胸のあたりには、何か球体のようなものがはめ込まれている。
『ホムンクルス……。前のと似ているが、異様だな』
『作戦通りにいこう。この距離なら合体して迎え撃てる』
『了解。皆、準備はいい?』
バーニンレッドの言葉に、私は頷いた。敵――ホムンクルスの姿をじっと視界に捉えたまま。その白い身体が、少し動いたように見えた。巨大な目が、私たちを見た気がした。
「――やばい! 全員回避!」
ホムンクルスの目から禍々しい光線が放たれたのは、私が叫んだのと同じタイミングだった。五体のバーニンマシンは散開。
緊急回避する。が、光線は長く、マシンフェニックス、マシンエアリエル、マシンウンディーネを追いかける。三体ともだが、エアリエルの動きが特に不安定だ。無理もない。宇宙戦の訓練などしていないからだ。
『駄目、振り切れない!』
「アルラウネ、エンジン全開!」
花の妖精のような形状のアルラウネが急加速、エアリエルを照準に捉える。
「バリア展開!」
アルラウネの花弁のような射出口から種のようなポッドミサイルが発射され、エアリエルと光線の間ですぐさま炸裂する。バーニンがバラの形に展開され、障壁となってホムンクルスの光線を弾き飛ばす。
「侑夏!」
『大丈夫!』
エアリエルが体勢を立て直す。その瞬間、白く巨大なホムンクルスが、泳ぐように両腕を大きくかいた。途端に、猛スピードで巨体が接近する。
『こいつ!』
マシンフェニックスが赤い翼を羽ばたかせ、バーニンを推進剤にしてジェット噴射でホムンクルスへと接近。炎の羽根をまき散らしながら回転突撃。ホムンクルスの脇を掠めるも大きなダメージにはならない。ホムンクルスの一つ目が妖しく輝く。
「灯火君!」
バリアポッドを射出しながら、アルラウネを急加速。間に合わない。発射されたホムンクルスの光線がバリアポッドを展開前に破壊し、マシンフェニックスの翼を
「逃がさないよ」
ポッドミサイルを三連続で発射。三つのポッドがホムンクルスを取り囲むと同時に展開。稲妻のようなバーニンの包囲網を形成する。
――説明した通り、ホムンクルスの内部に存在するネガティブエネルギーは途方もない量だ。地球に侵入させないのはもちろんの事、宇宙空間で撃滅する際にもネガティブエネルギーの発散を防がなければならない。
作戦会議でのバン・バーニヤンの言葉を思い出す。
――五体のバーニンマシンを合体させ、フルパワーのバーニンを浴びせてネガティブエネルギーを消し飛ばす。まずは、何としても爆新合体するんだ。五体合体した形態でなければ五人のバーニンの相乗効果は生まれない。
「今のうちに、爆新合体を――!」
背筋に、嫌なものを感じた。コクピットの中にまで迫る異様な気配を。
ホムンクルスの身体から幻影のようなものが見えた。岩石のようなシルエット。それから、怨嗟のように宇宙に木霊する声。
『ロォック……ロォック……』
「っ!?」
歪んだ弦楽器のような底知れぬ音とともに、黒い檻が像をぶれさせながら召喚される。間違いない。ロック・ロック・プリィズンの檻。という事は、あのホムンクルス――!
「中にいるのはプリィズンだ!」
叫びながら、私は素早くアルラウネを方向転換、弧を描くような軌道で檻の側面へと加速させる。ロック・ロック・プリィズンの檻に対して回避は逆効果だ。迎え撃ち、無力化する。
――接近警報がコクピットに響く。
「何っ!?」
ホムンクルスの巨体が間近に迫っていた。急加速。ネガティブエネルギーが宇宙空間に発散している。ホムンクルスが、その姿を変形させていた。両足を格納し、エンジンノズルのような形に。そこから大量のネガティブエネルギーを噴出させ、瞬間的に加速している。
『みさとさん!』
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